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2──桐沢真由美と春山啓介──

5月16日 晴れ 12時29分 映画研究部 部室 桐沢真由美


「オオ…ジュリエット…愛してる」
「ワ、ワタシモヨ。ロミオ…」

バンッ!!

あまりの棒読みっぷりに、ワタクシは長机に台本を叩きつけ、パイプ椅子から立ちあがった。

「もぅいいわっ! 本読みは少し休憩とします。撮影班、機材のチェックをしておきなさい!」

憤怒の表情を浮かべるワタクシに怯え、クモの子を散らすように機材に散って行ったワタクシの手足(部員)たち。

どいつもこいつも役立たずばかり、ホントにつかえない。

感情を乗せず、ロボットのように台本を読んだ手足たちに怒りがこみあげる。


……まぁいいですわ。

手足たちが、ロボットのように与えられた命令を実行する事しか出来ないのは、分かっていたはずではありませんの。



怒りを鎮め、ワタクシは再びパイプ椅子にふんぞりかえると、遥を引きいれた後のことに思いを馳せる。

遥を主演にしてどんな映画を撮ろうかしら。
やっぱりここは無難に恋愛ものかしら。

ふと遥の隣にいたあの冴えない男を思い出す。
なんの取り柄もない男、あの幸太とかいう男と遥の恋愛もの・・・


……いいえ、だめね。あの男には華がないわ。あれじゃあワタクシの望むモノが撮れそうにない。

それに恋愛ものは何本撮っても失敗ばかりだったじゃないの。
今度失敗したら立ち直れそうにないですわ。

ふぅ・・・いったいどうすればいいのかしら。


ワタクシは、手足たちがせわしなく機材の手入れをするのを眺めながらため息をついた。




5月16日 午後4時20分 放課後の体育館


一日の授業が終わり、校内では部活や帰宅する生徒でごったかえすなか、
体育館では二つの部活が蒸し暑い中、活動していた。

男子バスケ部と女子バドミントン部である。

「ったくあちぃな」
「ああ…」
「なぁ、なんでこんな暑い中、窓を閉め切ってバスケやらなきゃいけねぇんだよ」
「バドミントンの羽根が風で動くからダメなんだとさ」
「そうなのか?…くそぉバドミントン部の奴らムカつくぜ」

バスケ部員たちが、不満そうにそんな会話を交わしているのを、ある男子生徒がシュート練習しながら聞いていた。

その男の名は春山啓介、2年6組に所属するバスケ部員である。
身長178cmのイケメンにしてバスケ部のエース。
女子からの人気は絶大で、毎月のように告白されているという噂だ。
当然のことながら男子からは不人気ではあるが、まぁこれは古来よりイケメンに課せられた宿命なので仕方がないといえば仕方がないだろう。


(確かに窓は開けれないのは辛いが、羽根が悪いだけであってバドミントン部の連中の責任じゃないだろう)

会話を聞いていた啓介はそう思いながら
体育館の半分に区切るように、真ん中に張られた緑のネットの向こう側を見た。




試合が近いのだろう。慣れる為なのかアンダースコートを履いてバドミントンの練習をする女子部員たち。

飛び散る汗と、ムンムンと漂うメスの匂い。

コートを動くたびに弾けるように揺れる乳房。

アンスコからのぞく挑発的な白い太もも。

コートの中でバドミントンラケットを対戦相手に向かって構え、こちらに見せつけるようにアンスコを履いたお尻を突き出す女の子。


これだけで健康な男子は前かがみになってしまいそうだが、男子バスケ部員に限ってはそうではなかった。
というのも、体育館の使用を巡って女子バドミントン部と男子バスケ部がケンカになり、冷戦状態となっているからだ。

くだらない。

春山啓介は思う。
女子バドミントン部員は美少女だらけだ。
さっさと仲直りすれば、もしかしたら可愛い彼女が出来るかもしれないではないか。

手の中のバスケットボールを転がしながら、女子バドミントン部で、ひときわ輝いている美少女に視線を送る。

藤乃宮遥と呼ばれる美しい少女。

スマッシュが決まって、飛び上がって喜ぶ彼女。

白いバドミントンウェアの布地ごしでも分かるロケット型の乳房。
撫で廻したくなるようなぷるんとした桃のようなお尻。
男を狂わす見事なプロポーション。

いい女だ。

やはり俺の彼女になるのは、遥以外いない。


必ず手に入れてやる。



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  1. 2012/08/03(金) 20:18:49|
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