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24 疑惑

大会は終わった。
プールサイドに残った俺たち男子は、全員がフェラチオで濃さを競い、奈々と仲山はなかなか女子更衣室から出てこなかった。
時間ぎりぎりになって出てきた仲山と奈々は、やけにすっきりした顔をしており、俺が仲山を睨みつけると、仲山は下を向いて俺とは離れた逆側のプールサイドに1人でポツンと立った。
そして続けて更衣室から出てきた夏美は、すぐさま学年主任に耳打ちすると、学年主任は頷いて俺たちを集め、開会式のように横一列に整列させて立たせた。

「これより閉会式を始めます。3位まで順位を発表しますので、呼ばれた順に前に出てきてください。まずは優勝、牛坂雄二!」
「ウシッ!!」

牛坂が元気に前にでる。最近元気なかったので、こんな姿を見るのは久しぶりだ。
順位的には特に波乱はない。

「2位、秋川慎矢」
「はい」

本日一言も喋ってなかった秋川が初めて声を出した。

「3位 仲山楓太」
「は、はい」

俺の方を一切見ずに少し挙動不審に一歩前に出た。
こいつは後で絶対に殴る。

「貴方たちには、それぞれ1位から学園より女の子を3人、2人、そして1人と与えます。まだ誰も手をつけてない子なので、好きにしてください。なお転校生の仮所有期間は明日から1日となります」

学年主任が3位までの男子の顔を見回し、それぞれの目を確かめると、夏美が仲山をガードして男子更衣室へ連れて行く。
チッ、俺の考えが読まれていたか。

賞品がアイテムじゃなかったことにホッと胸を撫で下ろしながら、俺は学年主任が解散の宣言を出すのをイライラしながら待つのだった。





俺は、大会が終わったあと、放課後に桜だけを呼び出し、普段使われていない東館の3階まで連れて行って、そこの教室で詰問していた。

「桜……。どうして奈々を大会に出した」

真剣な表情。答えようによっては、ただではすまない雰囲気だ。

「……仕方がないわ。あの大会は2組の女子には何も得しない大会よ。
  あなたの為に身体を張れたのは、出場した5人だけということよ。」
「どういう意味だよ。それ……」
「わからない? 例えば他のクラスの男子に、あなたがクラスの女の子を提供しないといけないとしましょう。
 そしたらあなたは誰を提供する? 奈々や参謀役の私、そして偵察役の親しい茜や渚は出さないで、他の子を提供するでしょう?」

言葉に詰まる。
それが事実だったからだ。

「でも前に、牛坂を嵌めたときは女の子が力を貸してくれたじゃないか!」
「あれは、その子たちが自然妊娠したいマゾの子だったからよ。フェラチオで妊娠するならその子たちも立候補してくれたかもしれないけど、それは無理でしょう。
  本当にあなたが追い詰められた時、親しい奈々を守って、他の女の子に犠牲になるように頼む? そんなことをしたら、あなたはもう、このクラスの女子の信頼を失うでしょうね。
誰だって切り捨てられる、進んで犠牲になんてなりたい子はいないわ。」
「くっ!」

唇を噛む。言い返せない。
俺の頭が桜の言葉が正しいと認識している。
奈々が出場したのは仕方がなかったと言っている。

俺は、俺は……。

やり場のない怒りが身体を駆けまわり、放出先を探して右往左往する。
俺は、負け惜しみを言うように桜に言った。

「俺ならもっと上手くやった。奈々を俺の担当にするように指示しなかったのはおまえのミスだ」
「………」

俺は踵を返すと、桜に当たってしまいそうな自分が嫌になり、2組の教室に戻っていった。
残された桜は何も言い返さず、黙ったままだった。


残された桜は、3階から見渡せる綺麗な青空を眺めがら考えていた。
実は奈々には、小さな声で勇太の担当をするように言い含めていたのだ。
しかし結果はあの通り。奈々は仲山の担当となり、茜が勇太の担当となった。奈々とはあの後、あんなこともあり、その事に触れずにいるが、特に泣いたり落ち込んだりする深いショックは受けていないようだった。
勇太はそれを知ってるぶん余計悔しいのだろう。まるで奈々が仲山とセックスしても平気そうだったから。

だが、桜は言葉にしないが、さらなる可能性を考えていた。
それは、本当に抽選で2組の女子が選ばれたのか?という疑惑である。
考えてみてほしい。この学園の目的は教師が言うなら強い男の精子である。そしてその強い男を作りたいなら、より強い性欲を持つ男たちを集めて戦わせればいいのではないのか。
学園は国が運営しているし、全国の男から選抜して連れてくることも簡単だろう。

なのに、性欲が弱く、短小ちんぽの勇太がこのゲームの参加者に選ばれた──。

これは明らかに違和感がある。
大会で他の男子の性欲を見ていたが、確かに他の男子は精液の量も多いし、濃さも段違いだ。
そう、勇太だけが異質なのだ。

桜は唇に指を当て白い雲を見つめた。

どうやら2組の女子が選ばれたことと、勇太が異質なのは、何か理由がありそうね。
まさかと思うけど、1年目が出来レースだとしたら、勇太に勝ち目はないわ。









1位 1年1組仲山楓太 90ポイント アイテム なし
2位 1年5組秋川慎矢 76ポイント アイテム 隠された情報
3位 1年3組牛坂雄二 72ポイント アイテム なし
4位 1年4組海森 縁  59ポイント アイテム 上書き薬
5位 1年2組芝山勇太 52ポイント アイテム 校外チケット


大会後に職員室前に張り出された最新のポイントはこうなった。しかし情勢は大きくかわっている。
俺と仲山は敵対状態になり、同盟は事実上の破棄となった。
もはや俺は他の男連中が信用できず、疑心暗鬼の状態だ。同盟を組んで戦った方がいいとは頭ではわかっているのだが、
一見無害そうに見えた仲山が、あんなことをしてしまった為、誰も信用できなくなってしまったのだ。特に仲山なんかとは絶対に口も聞きたくない。
海森とは同盟を結んでるが音信不通の状態だ。集まって話し合いもない。海森も何も言わないから同盟は形だけのものだ。

俺はあの大会以降、奈々により一層構うようになったが、奈々はいつもと変わらずあの大会の事などなかったようだ。
ただ、どこか距離を感じている。もう俺が話しかけなければ、向こうから近づいてこない気がする。現に確実に会話は減っている。
俺は、それでももがくように奈々に根気よく話しかけ続ける。
やっぱり俺は奈々が好きなのだ。ずっと傍にいた奈々を離したくないのだ。
いつか前のように仲良くなれると信じているのだ。

そうして俺は大会が終わってから1週間、そうして過ごした。



──そしてある日のこと。

「そろそろ返事を聞かせていただけないでしょうか?」

お昼休み。食事を終え、トイレに行こうと廊下で待ち受けていたのは秋川のクラスの肉便器玲奈だった。
確か以前、2日後に返事をすると俺は言ったのだが、色々あってすっかり忘れていた。
もう一か月くらい経ってるのに返事を聞きに来るのが遅すぎだろ。

「ああ、すまん。ちょっと色々あって返事をするのが遅れてた。それで同盟を結ぶ件だったな」

俺は相変わらずのレイプ目の玲奈にいう。
返事は断ることに決めていたのだが、状況が大きく変わってしまったので判断に困る。
同盟を結んだとしても俺は積極的に友好を結ぶつもりはない。他の男なんて信用できない。
とはいえ、このまま返事をしていいのか俺は考える。

秋川と同盟を結ぶのは桜は乗り気ではなかった。
ポイントを奪う対象者が牛坂だけになってしまうことにリスクを感じていたし、秋川の女性軽視の性格を嫌っていたからだ。
──しかし、もし俺がここで断ったらどうなる?
仮に断った後、秋川がどういう行動に出るか想像する。
あいつは俺が誰と同盟を結んでるか知っている。そして大会中に俺が仲山を殴って仲が悪くなったことも知っているはずだ。
もし俺が断ったら秋川は仲山と同盟を結ぶんじゃないのか?
そして俺を恐れている仲山と一緒に俺を潰しに来る可能性がある。
それはまずい。

俺は大きく息を吸うと、玲奈に言った。

「同盟は無理だが、お互いの所有物に手を出さない不戦を結ばないか?」
「……不戦、ですか?」

玲奈が怪訝な顔をする。
レイプ目のままだが。

「ああ、そうだ。俺は秋川に協力するのは無理だが、とりあえずはおまえたちとは敵対したくない。だから不戦だ。」
「……それは、お互いの行動を邪魔しない、敵対行動を取らないってことでいいんですよね?」
「そうだな。互いに干渉はしないし敵対はしない。それだけだ。」

玲奈は黙って俺の真意を探るように俺の顔を見つめなおすと、

「分かりました。その提案で私たちも了承しました。今後この関係が続くといいですね」

と言って、去って行った。


(……今思えば、このタイミングを狙っていたのかもな。)
俺は玲奈の背中を見つめて、今更ながらに思った。
恐らく、秋川は俺が同盟を蹴るのを前提にしていたのだろうと思う。だから俺が仲山と仲が悪くなったこの時点で、この話を再び持ってきた。
なるほど。よくできた話だ。返事を聞きたかったのだが、出来るだけ自分たちが有利になる時を待っていたというわけだ。

俺は玲奈の背中が見えなくなるまで、その姿を見送るのだった。







放課後。午後4時半。
その頃、桜は密かに海森と接触し、話し合いを続けていた。
勇太は会いたくない風だったが、海森とも同盟が終わりになれば『上書き薬』を使われる恐れがあるし、勇太はますますピンチになる。
桜は最悪の事態を避けるべく、巧みにバランスを取って動いていたのだ。

「やれやれ、それにしても仲山くんもとんでもない事をしてくれたものだよ。おかげでこちらも仲山くんは信用できなくなってしまった。仲山くんから謝罪は?」
「……ないわ。向こうの事情は知らないけど、気の強い子が彼についていたから、謝らないでしょうね。」

西館2階にある、海森の本拠地。1年4組で話し合うふたり。
他には誰もいない。ある程度の距離をとって、立ったまま話し合っている。
海森のクラスにくる桜も大胆だが、一分の隙も見せない海森もさすがだ。

「それにしてもキミは相変わらず美しい。どうだろう。僕のモノにならないか?」
「冗談はやめてほしいわね。私はそんな話をしたくてここに来たんじゃないわ。今後の仲山への対処について話をしにきたのよ」

桜の冷たいしっぺ返しに海森は肩を竦める。
もっとも本心は違う。海森は、桜を打ち負かしたくて仕方がないのだ。

「仲山くんについては、僕がそれとなく接触することにするよ。彼が何を考えているか探らないといけないからね。今、彼が敵にまわると面倒だし」
「ええ、それについてはお願いするわ。私から接触して舐められる訳にはいかないしね。」

仲山の対処について決定すると、海森は改めて桜を見つめた。

「ところで牛坂の調子はどうなんだい。上手くいってるのかい?」
「……隠してても仕方ないわね。正直言うともう一つね。罠にかからなくなったので上手くいってないわ」
「そうかい。それは大変そうだね」

海森は窓際の席に座ると、眼鏡をクイっとあげる。

「今、君の所有者、芝山勇太はピンチだ。このゲームが始まって以来ずっと最下位。最新ポイント結果では牛坂を落とすどころか引き離されている始末だ。
君はこれにどう対処するつもりなんだい? まさかこのまま罠にかかるのをずっと待つというわけではあるまい。」
「………」

桜は答えない。

「……答えられないかい。いや、答えなどないのだろう? 牛坂を落とすことを決めたのに、牛坂が罠にかからなければどうしようもない。
このままじゃ、他にターゲットを移すしかない。しかし、単細胞の牛坂でも罠にかからないのに、他の男子が罠にかかるかな?」
「……何がいいたいの?」

桜が表情を変えずに言う。

「さっきの話の続きだよ。僕のモノになりたまえ。それが君の唯一助かる道だ。
君だって気づいているのだろう。このゲームに置ける芝山くんへの理不尽さが」
「………」
「そう、あのフェラチオゲームは開始時点で公平ではなかった。
きみも気づいたはずだ。ゲーム中、審査員が芝山のポイントを減らすといったり、今後の進級ゲームに影響があるだろうに2組の女の子たちにセックスを強制しようとしたこと。
彼の性器や精液の量を見ればわかる。あれは故意にやったこと。2組の女子が選ばれたのは抽選じゃなく意図的だったのさ。
つまりは出来レース。この1年目の大会は、参加者にゲームを慣らせるための出来レースの可能性が高い。芝山くんは1年目で脱落させるために入学させられた可哀想な被害者さ。」

海森は口の端を吊り上げ、笑顔を浮かべた。

「僕はね。君のような頭がいい奴が好きなんだ。だから降伏しなよ。そして僕の元にくるんだ。
彼に勝ち目はない。君が望むなら僕は『上書き薬』を使って君を犯そう。そうすれば君は2組という泥船から脱出できる。大会で牛坂に奉仕するような屈辱を受けないでよくなる。悪くない話だろう?」

ヒューと開いた窓から一陣の風が入り、桜の長い黒髪を撫でる。

「お断りするわ」
「……なに?」

聞き間違えか?と海森は目を細めた。

「断ると言ったのよ。私にとってはこれくらいどうとでもないわ」
「……理解できないね。君はマゾなのかい? これから芝山くんと2組の女子たちにはさらに過酷な試練が待ち受けているはずだ。それでも残りたいとでもいうのかい?」
「ええ、これくらい逆転できなくては、私があの男の参謀になった意味がないもの。私は勇太を必ず進級させてみせるわ。どんな手を使ってでもね」
「………っっ」

ギリリと歯ぎしりした海森。一瞬だが、海森は、桜の凛とした決意と、姿に見惚れてしまったのだ。

「そうか、ならやってみるがいい。君が蜘蛛の巣であがくさまを十分楽しませてもらおう。」









「芝山は本当に不戦ならいいと言ったのか?」
「はい。間違いありません」

5組に帰った玲奈は、勇太との取引について秋川に詳しく報告をしていた。

「そうか……。まさか不戦でもいいから組んでもいいと言うとは思わなかったな。俺が幼馴染の瀬戸宮を抱いたことに気付いていないのか」

大会で仲山が勇太にぶん殴られたりしていたのを思い出す。
あれが演技でないとしたら、絶対に自分とは不戦とはいえ、結ばないだろう。

「はい。彼からは特に怒りの感情など負の感情が見えませんでした。純粋に考えた結論だと思われます」
「なら、奴は相当追い詰められているのか」

秋川は思考するように、最新のポイント結果を思い出した。
これはチャンスなのかもしれない。

「……玲奈。2組の女はすでに見極めたか?」
「はい。ご主人様。言いつけどおり、すでに誰が処女か見極めました。最低でも15人が手つかずの処女です。」

玲奈が足しげく勇太のいる2組に通っていた最大の目的は交渉の為ではない。
真の目的は、肉便器ソムリエ1級の資格を持つ玲奈の眼力と嗅覚で、2組にいる少女たちのうち、誰が処女であるかを見極めるのが目的だったのだ。
あの低いポイント。恐らくまだ手つかずのクラスメイトがかなりいるのではないか?と秋川は疑っていたのだ。

「くくく、そうか。なら俺もそろそろ動かないとな。さらにポイントを増やすチャンスだ。」
「………」

不戦条約はいいのか?とは聞かない。
主人だってそれは分かってる。分かっててそう言ってるのだ。
ならば玲奈は黙ってそれに従うだけである。

「玲奈、芝山のクラスの女子を狩るぞ。いいな」
「はい。秋川さま」

勇太にさらなるピンチが迫っていた。














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  1. 2013/06/15(土) 10:27:01|
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ntr属性なのに超純愛ゲーをやって自己嫌悪になった男。リハビリのために小説を書いてます。
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