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7──計算違い──

6月5日 月曜日


きっかけは些細な事だった。
部活中、後片付けをしていて足を挫いた男の子を保健室に連れて行ったこと。

それから彼とはよく話すようになった。
始めは軽い挨拶と、足の怪我具合の話。
次は、部活の休憩中に日常会話と。

楽しそうに話す彼からは、女子バドミントン部と男子バスケ部を仲直りさせたいということや
次の試合に必ず勝ちたいという話などを聞いた。

彼と話していて楽しい自分がいる。

少しずつ彼との関係が深くなっていく。

彼の存在が私の中で大きくなっていく。


気がつけば、話すようになって1週間しか経ってないのに
目が合うと軽く手を振ったりする関係になっていた。







最近、遥ちゃんの様子がおかしくなった。
いやおかしいって言うのだろうか?
どこがおかしいの?って言われたら上手く答えられない。
教室で話していても、帰り道で話していても、どこか違和感が拭えないのだ。
他愛もない話、冗談、何もかもがいつもと一緒なのに…。

僕は不安になる。
嵐が来るような。何かに追いかけられるような。
どうしようもない不安。


今日も遥ちゃんと一緒に学校から帰る。

だけど今日に限って、なぜか遥ちゃんの視線が気になる。
まるで僕を、誰かと比べてるような、値踏みしてるような、
今までになかった視線。

居心地の悪さが場を支配し、耐えきれなくなった僕は、唐突に、遥ちゃんのスカートを「えい!」と捲る。
この空気を変えようと、遥ちゃんが怒って僕に教育的指導するように。

だけど、いつもなら来る教育的指導という暴力は来なかった。

手を振り上げたものの笑いながら僕に注意すると、
そのままゆっくりとおろす。


ああ・・・なんとなくわかった。


僕と遥ちゃんの関係は変わったのだ。


いったい何が原因で変わったのかは、さっぱり分からないけど、
きっと何かが起こる。そんな予感を感じさせられた。







遥と話すようになって1週間ほどたった。
始めは少しぎこちなかった会話だったが、今ではいい感じになっている。
この調子で仲良くなっていけば、意外に告白も上手くいくかもしれない。

俺は授業中、ペンをノートに走らせながら思う。

もう計画なんて進めなくていい。
これ以上リスクを背負って計画を進めても、俺にはなんの得にもならない。
あとで桐沢を呼び出し、計画を抜けると言おう。











放課後 映画研究部 部室


「計画を抜けたいと言うのですか?」
「ああ…」

放課後、俺は桐沢を呼び出し、ひとけのない映画研究部で向き合った。

桐沢は椅子に座り、足を組むと「なぜですの?」と問いかける。

「別に、これ以上計画を進めなくても、自分の力でなんとかなりそうなんでな…」

いつもの不気味な笑みを浮かべ、淡々と俺の声に耳を傾けていた桐沢は、話が長くなると思ったのか、席を立ち
コーヒーを入れると「どうぞ」と言って、長机前に座る俺の前にコトンと置いた。

「……ありがとう」

正直こいつの性格からいって、「計画を抜けたい」なんて言えば激怒すると思ったが、
今のところ、なんの反応も示さずひょうし抜けする。

いや…本当は激怒しているのを隠しているのかもしれない。
こいつはポーカーフェイスが上手いから。

目の前に置かれたコーヒーに口をつけながら、俺は桐沢の出方を窺う。




「それで……許されると思ってますの?」

コーヒーを飲みながら暫くの沈黙の後、やっと言葉を発した桐沢。
声は穏やかだが、どこかしら強い怒りを感じ、俺の全身の毛を逆立たせる。

異様な空気が部屋を支配し
壁にかけられた時計の秒針を刻む音がやけに大きく響く。

やはり怒っていたか。

と、緊張する。
と、同時に思い出す。

こいつは目的の為なら手段を選ばない性格。

絶対に敵にはまわしたくない女。

なぜこんな簡単なことも忘れていたのか?

お互い納得できるような解決法を提案すれば良かったではないか。
こんな一方的に切り捨てるように言えば、桐沢は何をするか分からない。

ゴクリッ…

自分の唾を飲み込む音がやけにクリアに聞こえる。

言うなれば処刑台にあがる死刑囚。
言うなれば判決を待つ被告人。
みんな今の俺と同じ気持ちだったのだろうか。


「あ、いやっ、それは…」

桐沢の迫力に押され口ごもる。何か言葉を続けなければいけないのに
肝心の言葉が出てこない。そんな状況。

「………」

いつまでも言葉を口にしない俺に業を煮やしたのだろう。
桐沢は、コーヒーカップを片手に口を開く。

「あなたと藤乃宮さんの痴態はビデオに撮ってますのよ?
もし本気で抜けるなんて言いましたら、すぐに校内にばら撒きますわ。そしたらどうなるか分かりますわよね?」

「あっ……」

またしても大きなミス。
取り返しのつかない失点。

なぜ、こんなことに気付かなかった。
なぜ、こんなリスクがあることを思いつかなかった。

ビデオで撮られたら俺も同罪。
いつもの俺なら、計画に乗る前に気付いたはずではないか。
どうしてこんなことに考えが及ばなかったのか。

うなだれるように肩を落とした俺は、長机の下で拳をぶるぶる震わせる。

こいつのことだ。
すでに何本もデータをコピーしてるだろう。
ここで力づくで桐沢に襲いかかってデータを消去するように脅しても意味はあるまい。

終わりだ。。。

俺はこの悪魔に弱みを握られたのだ。







そして苦悩する俺は気付かなかった。

目を細めてこちらの様子を見ていた桐沢が

「ほんとにおバカさんになってますのね…」

と、同情するように、ポツリと言った言葉を。






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  1. 2012/08/09(木) 20:00:20|
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