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苺山学園物語2の続きです。
8月5日 苺山植物研究所 午前9時3分 所長室 村山麗子
「何?タイプαの数が合わないだと?」
「はい。何回確認しても合いません……」
ある研究所のオフィスルームの一角で、
20代後半のいかにもキャリアウーマンといった風の白衣を着た女性が、報告に来た白衣の男を睨みつけると、キーボードを叩く手を止めた。
その女性の名は、村山麗子。
苺山島に存在する数少ない天目財閥の研究所の一つ、苺山植物研究所の所長を任せられている若きエリートである。
「それで何粒消えた?」
「1ダース分です……」
消え入りそうな声でボソボソと喋る白衣の男に、熱いコーヒーの入った紙コップが投げつけられた。
なんてことだ。
あれがばら撒かれたら大惨事になるだろう。
いや、あれの価値が他に漏れる方がもっとまずい。世界中の医薬品メーカーが、この島に押し寄せることは間違いない。
私はイライラした気持ちを抑え、すぐさまこの役立たずに指令を出す。
「すぐに島から出る船を全て止めろ! それからこの研究所に出入りした連中を一人残らず徹底的に調べるんだ!」
「は、はい!」
怒鳴りつけられた白衣の男が、青い顔で部屋から飛び出していくのを見ながら、私はこれから起きるかもしれない大惨事に頭を悩ませるのだった。
8月6日 所長室 午後20時58分 村山麗子
「所長。1週間前に、受付嬢のバイトが一人やめております。この女が怪しいかと……」
「ほぅ…そいつの資料を見せてみろ」
白衣の男が差し出した資料を、私はひったくるようにして奪い取った。
(桐沢真由美、学園の2年生か……)
手元の資料を眺めながら、デスクの上で指をトントンと鳴らす。
写真に写るこの桐沢という少女の顔を見ていると、なぜだか胸騒ぎが止まらない。
これはいったいどういうことだろうか。
(ふっ…らしくない。勘というやつか)
オフィンス机に資料を投げ出すと、タバコに火をつける。
そういえば…と、数日前に読んだこの島で発行される新聞の記事を思い出す。
<苺山学園の男子生徒死亡、過労死か?>
この島で人が死ぬことは珍しく、一時期、島の至る所で話題になっていた。
私はまったく興味がなかったのだが、今考えると怪しいことこの上ない。
(桐沢が犯人だとすると、どうやってタイプαを持ち出せたのだ?)
こいつはただのバイトの受付嬢、セキュリティの厳しい区画には移動できないはず。
厳重に保管されているタイプαを持ち出せるはずもない。
裏切り者がこの研究所にいる?
いやここにいる研究者の身元はしつこいほど調査したはず。
ではいったいどうやって?
タバコを灰皿にねじり込んで火を消すと、デスク椅子をクルリとまわし、窓に映る自分の顔を見た。
この桐沢という少女が犯人だと判断するのは早計だが……。
まぁいい、この少女をもっと調査すれば何かが分かるだろう。たまには勘と言うやつを信じてみるとすることにしよう。
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- 2012/09/17(月) 15:14:26|
- 小説
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