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9話──狩猟──

―――狩猟祭。

それは新人類の貴族にとって、嗜むべき行事の一つである。
獲物であるワークヒュマンを殺してしまうことから繁盛に行うことは出来ないが、なんらかの功績をあげた場合、もしくは新たにピアー階級に昇格した者が現れると女王藤乃宮遥が許可を出して行われることがある。
一種の儀式めいたものである。
この狩猟の際、10人の生贄が森に放たれ、それをコモナーが追い立てたのち、ピアーがそれを狩って自らの存在と力を女王と周囲に示す。楽しみよりも威信を重視した行事。
コモナークラスにとっては憧れの行事であり、いつか自分もピアーに昇格し狩猟を行いたいと思っている特別な行事なのだ。

今回、狩猟を行うのは新たにコモナーよりピアーに昇格したサザウンド・アトス。23才。
実に3年ぶりのコモナークラスよりの昇格である。

彼は苺山の周辺に広がる広大な森の前に立ち、狩猟の前の高揚感に包まれていた。

(いよいよ、これで俺も貴族だ。……長かったな)

苺山学園を優秀な成績で卒業し、その性欲の強さと戦闘力で伸し上がったアトス。
外国人のような名前をしているが、別に彼は外国人ではない。一際プライドの高い彼は平民のような名前が気に入らず、ボーンよりコモナーに昇格した際、自分の名前を外国風に変えたのだ。
それゆえ、彼の出身地は日本である。
もっとも彼は年齢からも分かる通り、タイプαがばらまかれた30年前からこの島にいたのではない。
彼は、タイプαの副作用により死者が続出した穴埋めのために新たにこの島に連れてこられた通称『外様』と呼ばれる存在だ。
最初は、この島に連れてこられた自分の不運さを呪ったが、タイプαを飲まされてからはそんなことは考えなくなった。むしろ成り上がってやろうと決意したくらいなのだ。かなり野心が強い。

「アトス様、狩りの準備が整いました。どうぞ開始位置へ」
「うむ」

自分の前で膝をついたコモナーの兵士を満足げに見ると、アトスは赤いサーコートと黒いマントを靡かせ開始位置へと歩き出す。

いずれは、貴族の最上位『四候』と呼ばれる存在を目指して。





「いよいよだな。クレア、リアラ準備はいいな」
「はい幸太さま」
「にゃー」

狩猟が行われる森の中。
俺たちは息を殺して、森の中に身を隠していた。
この狩猟は、毎回行われる場所が同じだという情報を、新人類の街で召使いをしているワークヒューマンから入手し、先回りしてここにやってきたのだ。

「リアラ、ワークヒューマンたちが逃げて来たら頼むぞ」
「わかってるにゃ」

ネコミミをピン!と立てて、リアラはいかなる音も見逃さないとしている。
聴覚に優れたネコミミ族のリアラが、森に逃げて来た奴隷たちの位置をいち早く把握し、逃げる方向を誘導しようとする作戦なのだ。
まさにネコミミ族のリアラがいてこその作戦である。

顔を布で隠し、武器をそれぞれ手に持って、その時を待ち続ける。
森は、ほどほどに光を取り込んでいながら、比較的綺麗に整備されている。
事前に手入れがされているのだろう。小枝など服に引っ掛かりそうな草木はない。狩猟の為の森だと言っていい。
ここで何人もの奴隷が殺されてるとは気分が悪いが、今日は、ここが奴らにとって墓場になるのだ。
そう考えると俺の気分も少し晴れてくる。


「きたにゃ!」
「そうか、方向は?」
リアラがネコミミをピクピクさせながら「こっちにやって来ている」と俺たちに伝える。

「よし、ならここを通りすぎさせた後、追ってくる奴をここで待ち伏せするぞ。油断するなよ。どいつがピアークラスなのか、まだ分からないんだからな」

コクリと頷くふたり。
その表情はすでに戦闘モードに入ってる。

そうして暫く待っていると、土を踏む複数の足音と、ツギハギだらけの服を着た若い男女の姿が視界に入ってきた。

「みなさん、こっちです!」

クレアが木の陰から姿を現して、奴隷たちを誘導する。
彼らは走りながら俺たちの姿を見てホッとしたようだ。少し走るスピードを緩める。

「すまない。あとは頼んだぞ」

俺たちの横を通り過ぎる10人の奴隷たちが、言葉を残してそのまままっすぐ走り去る。
ある程度俺たちと離れたら、そのまま離れすぎないように隠れていることを事前に連絡してある。
離れすぎて俺たちの目が届かなくなったほうが、危険だからだ。

「にゃー、敵も入ってきたよ」

リアラの視線の先に顔を向けると、遠くの方から棒みたいなもので木をカンカン!叩きながら大声で「にげろ!にげろ!」と喚いている人の声が聞こえてくる。
あれで追い立ててるつもりなのだろう。
まったくふざけた連中だ。

俺は風剣『エア・リレミレント』を握り直すと、他の木に散らばるよう2人に指示を出し、敵を待ち伏せる。


そして待つこと約5分。
ついに追い立て役と見られる2人の新人類が落ち葉を踏みしめ、こちらにやってきた。

「……ったくどこに逃げやがったクソどもは。さっさと殺されろってんだ」
「ああ、まったくだ。なんで俺たちが奴隷の仕事のような真似をさせられるんだ。早く帰ってセックスしたいぜ」

好き勝手にぶつくさ言いながら進行方向の木を棒で叩く敵。

俺は目を細めて、その様子を冷静に見守る。
奴らはまだこちらに気づいていない。距離にして約10メートルほど離れている。
あと数メートルこちらに来れば、俺たちの攻撃範囲だ。

俺はリアラに目配せすると、肉食獣が獲物に飛びかかるように膝をゆっくり曲げた。
そして何も気づかず、無防備にこちらに近づいてきたところで襲い掛かった。

シュッ!!

鋭い風切り音を立てて俺が風剣を振るう。
風剣はカマイタチを発生させ、一人目の喉をスパッ!と切り裂いた。

「おい?」

いきなり隣を歩いていた仲間が声を立てずにぶったおれたのを見て、男が怪訝な表情を浮かべて立ち止まる。
だが次の瞬間、その男も飛び出してきたリアラの槍に胸を突き刺されて、口から血を吐いて仰向けに倒れた。

「まずは2人……」

俺はズルズルと殺したふたりの新人類の足を掴み、そのまま茂みに運んで隠す。
そして風剣を軽く振るってつむじ風を発生させると、血のついた地面を落ち葉で隠した。

「幸太さま、ここで待ち伏せを続けますか?」
「ああ、そう思ってるが、他に何かいい考えがあるか?」
「はい。敵が追い立てているということは、どこかの方向へ獲物を追い詰めようとしているに違いありません。
ですので、我々はその方向を特定し、そこに近づく新人類たちの背後を襲うべきではないでしょうか」

「ふむ……」

大きなサイドポニーを揺らし、近づいてきたクレアに向き直りながら俺は考える。

ここにいても来るのは追い立て役ばかりかもしれない。
それを倒してばかりだと一向に狩りは中止にならないだろう。
クレアの言う通り、ある方向に獲物を追い詰めているのだとしたら、いずれ追い立て役も他の新人類たちと合流するに違いない。
もし、その時に追い立て役の人数が減っていたりしたら、新人類を警戒させてしまうだろう。

「わかった、クレアの言うとおりにしよう。リアラ、敵の人数が大勢で固まって移動しているグループはあるか?」
「にゃあ。ずいぶん向こうに1グループだけあるにゃ」

「そうか。なら、ここに近づいてくる新人類はいるか?」
「…それはいないにゃ」

リアラが耳をせわしなく動かしながら答える。

「なら場所を移動する。リアラ、念のために追い立て役の動きに注意を払っておいてくれ」
「了解にゃ!」

俺たちは、リアラの先導のもと高速で移動を開始し、大勢で移動しているグループの背後にまわりこむようにして近づく。
そして100メートルほどの距離まで近づいたところで、一端立ち止り、様子を窺った。

「クレア見えるか?」
「はい。幸太さま。20人ほどの新人類が森の奥へ移動しています」

クレアが薄暗い森の奥を見つめながら言う。
このメンバーの中では、クレアが一番目がいい。
それはクレアが弓を得意とすることからも窺い知ることが出来る。
彼女は、幼少の頃から弓の天才と持て囃され、弓を引くことに関しては並ぶものなしと謳われてきた。
事実100メートル先の的なら、障害物に遮られないかぎり、ほぼ100%で命中させることが出来る。

「その中で貴族らしきものはいるか? たぶんクレアのいた世界と同じような恰好をしてる奴がいると思うんだが」

「……います。黒いマントをした男がひとり……いえ…、赤いマントをした少女も合わさればふたりいます」

「ふたりか……」

俺は顎に手を当て考え込む。
どちらを先にヤルか……。

この先の事を考えれば、どちらも弓で始末しておいたほうがいいのだが、
俺たちは一度、貴族の前に姿を現して戦わなくてはならない。
なぜなら、俺たちの身体能力を相手に見せつけないといけないからだ。
そうしないと新人類は、奇襲してきたのがワークヒューマンだと勘違いし、狩りが中止になったとしても獲物になったワークヒューマンを狙い続けるだろう。

そうなればまずいし、避けなくてはならない。
だから俺たちはピアークラスと互角の戦いを演じて、奴らに認識させないといけないのだ。
襲ってきたのはワークヒューマンではない、と。

俺は少し目を瞑って考えたのち、男の方から殺すことに決めた。
女の方から殺せとクレアに言うのが抵抗あったせいかもしれない。

クレアは俺の決断に頷くと、ゆっくりと魔弓『エル・ブレイカー』の弦を引いた。
矢は、エル・ブレイカーから溢れ出す魔力で作ったものだ。
まさに魔弓と呼ばれるだけの恐ろしい性能だろう。弓が破壊されない限り無限に矢が生み出せるということなのだから。

ギリギリギリギリギリ……。

弓がしなり、鏃をクレアは男の背に向ける。
俺の合図を待っているようだ。チラリと俺に視線をやった。

「クレア、やれ」
「……はい」

青白い矢が煌々と光を放ち、黒いマントを羽織った男の背中に、ものすごいスピードで飛んでいく。
仮にこれが目の前で飛んできたとしても躱すことは無理だろう。それほどの威力とスピードがある。
かつては竜族の固い鱗さえも貫いたのだ。
人間では躱すことも防ぐことも不可能。
そう、不可能なはずだった。

だが、、、

──タンッ!

矢が今にも突き刺さるといった瞬間。男は上空に3メートルほどジャンプしてそれをかわした。
そう、躱したのだ。
後ろに振り向きもせず、まるで矢が来るのが分かっていたと言わんばかりに、見事なタイミングでクレアの放った矢を躱してみせたのだ。

「……っ!?」

目を瞠る俺たち。
ありえない光景に一瞬、動きを止める。

「幸太さま!」
「ああ、来るぞ。油断するな。思った以上に貴族は強いぞっ」

取り巻きと思われるコモナークラスがこちらに殺気だって押し寄せてくるのを、俺たちは厳しい表情で待ち構えるのだった。










「不意打ちとはどこまでも腐ったゴミのような思考をしているな。さすがは奴隷階級といったところか」

悠々と地に着地したアトスは、矢を放ったクレアを見ながら呟いた。

「ですが、今の攻撃はなかなかでした。奴隷階級にしてはやるじゃないですか」
男より頭ふたつ分くらい背の低い少女が、赤いマントを翻して感心したように微笑んだ。

「ふんっ、だが所詮は奴隷階級。あの程度の力では我々ピアーを倒すことは出来ん。
貴様とてそう思っているだろう。なあ、エレンよ」

エレンと呼ばれた黒髪のショートカットの少女は、それを聞いて薄く笑った。
一見男とも女とも分からない中性的な容姿は、相手に戸惑いを覚えさせる。
彼女を女性と認識できるのは、その美しい声と薄いながらも主張する胸の膨らみか。

「どうでしょうか。もしかしたら我々を倒せるほどの力を秘めているかもしれませんよ」
「まさか……。貴様の冗談は笑えん」

腕を組んだアトスが馬鹿馬鹿しいとばかりに手を解くと、部下たちと戦闘を繰り広げる襲撃者たちの方へ歩いていく。

エレンはそれを冷たい目で見送ると、先ほどの攻撃を思い浮かべて冷静に分析を開始した。

100メートル先から矢を正確に撃ってきたその技量。
それはまさに恐るべきものだ。
威力、スピードはまさに一級品。

『外様』の分際で貴族階級に成り上がったアトスはその傲慢さ故に気づいていないようだが、あれは奴隷階級の者が放てる攻撃ではない。
あれは新人類か、それと同等の力を持っている者だけが繰り出せる攻撃。

本来自分の役目は狩りの見届け人ということだったのだが、面白くなってきたと
エレンは耳にかかる髪を軽く掻きあげ、その場に佇んで様子を見守るのだった。










───ヒュン!ヒュン!ヒュン!

クレアがこちらに押し寄せてくる20数人の敵に向かって、矢を次々に放って倒していく。

すでに倒した人数は8人。
矢を放つと同時に、奴らはバラバラに散って木に隠れながらこちらにやってきたが、それでも十分数は減らした。

残りは俺とリアラが中心になって始末することにする。

クレアを後衛下がらせ、俺とリアラが前に立ち、剣と槍を構えて殺気立つコモナーたちを迎え撃つ。

「こいっ!」

俺の気合の入った声と共に、コモナーがこちらに斬りかかってくる。

──シュバッ!!

上段から振り下ろした敵の斬撃を受け止めるまでもなく、俺は身体を左に軽く捻って躱し、そのまま剣を横なぎに振り首を撥ねる。
例え相手が人間であってもためらいはない。俺は異世界で人型の魔族を数えきれないほど殺してきているのだ。こちらの世界であってもそれに変わりはない。
特に感情を表すことなく機械的に命を刈り取っていく。

そしてそれは、先ほど何人かを仕留めたクレアやリアラも一緒で、ある意味俺よりこういう殺し合いには慣れている。
俺の召喚された世界は、弱いものは死に、強いものだけが生き残る世界。魔物や人との戦いに明け暮れた戦乱の世界なのだ。
むしろ敵を1人も殺さないという考え方が理解できないかもしれない。

「クソがぁ! なんで劣等種にこんな力が!!」

布で顔を隠した俺たちに発狂するコモナーたち。
次々と倒されていく仲間たちのあり得ない姿に、憤怒の表情を浮かべ唾を撒き散らして俺たちを罵る。

「貴様ら! 神聖な狩りを邪魔して、ただで済むと思っているのかっ!! おまえらは絶対に許さん。そこの女たちは犯して犯して犯しまくった後に殺してくれる!そして男の貴様は、手足を引きちぎってからバラバラの肉片にしてくれるわっ!」

「ふーん。言いたいことはそれだけか」

バシュッ!

俺は、目の前で喚き散らしていた男を、袈裟切りで屠る。
確かにスピードとパワーは侮れないものがあるが、敵は頭に血が昇って冷静さを失っている。
数の優位を生かして連携することもせず、バラバラになって襲い掛かってくるので俺たちの敵ではない。

みるみるうちに数を減らしていく敵。
ついに残りが5人になったところで、ようやく力量の差をはっきりと認めたようだ。
奴らは、ひとかたまりになり、こちらに剣の切っ先を向けて顔を歪める。

「何者だ、貴様ら…。おまえたちは劣等種ではないな? なぜ我らにこのような真似をする」

戸惑いを含んだ敵の声に、俺は自分たちの狙いが上手くいったことを確信した。
こいつらは、俺たちを新人類だと思っている。
顔を隠している俺たちを見て疑心暗鬼になっている。
なぜ、仲間である自分たちを襲うのか、頭の中は混乱に満ち溢れていることだろう。

(そろそろ潮時か……)

ここまでやれば敵も狩りを中止にせざるを得ないだろう。
とても呑気に狩りを続けることなど出来ないに違いない。
貴族クラスと戦っていないが、敵に襲撃者はワークヒューマンではないと印象づけれたので一応の目的は達成だ。

俺は隣で槍を構えるリアラに目で合図すると、ゆっくり後ろに下がっていく。

このままここから撤退するつもりだ。


だが……。

「それは困るな。せっかくの飛び入りのゲストだ。このまま逃げるというのはないのではないか?」

俺たちの前に現れた新たな敵。
黒いマントを身体に纏った20代の男、ピアーが、俺たちを逃がすまいとやってきたのだった。











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  1. 2013/03/11(月) 00:05:30|
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ntr属性なのに超純愛ゲーをやって自己嫌悪になった男。リハビリのために小説を書いてます。
ほぼ賢者モードで書いてるので期待しないでください。

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