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10話──貴族──

「まずは自己紹介といこうか。俺の名はアトス。サザウンド・アトスだ。
 今回俺が主催した狩猟に飛び入り参加、歓迎するぞ。劣等種諸君」

凄まじいプレッシャーを放ちながら、俺たちの前に仁王立ちしたアトス。
身長は180くらいなのだが、それ以上に巨大に感じる。
どうやら先程の矢を躱したのは、まぐれではないようだ。

(どうする……)

俺は、アトスという男から視線を外さず思考する。

3人で戦えば負けることはないだろう。いかに強かろうと、俺たちはまだ本気じゃない。
魔法という切り札もあるし、武器は奴より強力な魔法武器だ。
だが、クレアの矢を躱した動きは驚嘆に値する。
負けないにしても顔を隠している布を剥ぎ取られ、顔を見られる可能性くらいはある。

「どうした俺は名を名乗ったぞ。貴様らも名を名乗らんか? 無礼であろう」

自分の部下をかなり倒されたいうのにも関わらず、この余裕。
所詮はコモナー。何人倒されても構わないといったようだ。
こちらを完全に舐めてかかっている。

「……………やるぞ。2人とも」

俺は決心する。
このまま逃げ出すことは出来そうもない。
こいつの身体能力なら余裕で追ってくるだろう。

俺はチラッと森の奥から動かない、もう一人の貴族に視線をやる。
薄暗いうえに遠いのではっきり分からないが、そいつはその場から動く気はないようだ。
こちらをじっと見ている。

まるで俺たちを観察しているようだ。


俺は風剣を正道に構え、わざとらしく隙を見せるように剣を上段にゆっくりあげた。

「……むっ?」

怪訝な顔をして俺に視線をやるアトス。
その瞬間、弾丸のようにリアラが槍を構えて、アトスに迫った。

「にゃあっ!!」

リアラの高速突き。
心臓を狙って、銀槍『オリオンスピア』を一閃と呼べるほどのスピードで繰り出す。
アトスは俺に意識を合わせたぶん僅かだが反応に遅れたはず、それは致命的な隙となり、アトスの命を掻き消すだろう。

異世界でもよくやった必殺の戦術。
こちらを侮っている相手によく通用した攻撃。
───だからこそ分かる。

ピアーの戦闘能力がどれほどのものかを。


(終わりだ!)

俺は確かにそう確信する。
奴の瞳が俺からリアラに移動したのは、すでにリアラが目の前に到達したとき、その時にはすでに目で捉えるのが困難なスピードで銀槍が胸に迫っている。
ここからは防ぐことも躱すことも至難の業。
なにせ奴は盾も持っていなければ、腰の剣すら抜いていないのだ。
もはやどうしようもないだろう。
防御結界でも張っていれば防げたかもしれないが、奴ら新人類に魔力はない。
だから死ぬのは必定。どうしようもないのだ。

「小賢しい!!」

瞬間、アトスは左手を前に出した。
リアラの銀槍がアトスの左手を貫き、赤い血を宙に舞い散らす。

「ぬあああああああああああーー!」
「にゃーー!!」
銀槍がそのまま左手の手の平を貫き、勢いよく胸に迫る。

「──ぐっ!」

飛び散る鮮血!
銀槍がアトスの胸を貫き、アトスに苦悶の表情を浮かべさせる。
だが、奴はまだ生きている。
心臓を狙った一撃だったが、手の平を貫いたことで角度を変えられたようだ。
しかも厚い胸板に防がれ、背中まで突きぬけていない。

「リアラ、どいてっ!」

クレアが叫ぶと、リアラが銀槍を捨てて、その場からバネのように横に飛び跳ねた。
その瞬間、魔弓を構えたクレアが、矢を連射する。

左手と胸を銀槍で固定され、自由に身動きが取れないアトス。
完全に躱せないと悟ったアトスは、左肩を前にタックルするように身体を傾け、放たれた3本の矢のうち2本を避け1本を左手の2の腕で受ける。

───ドシュッッ!!

普通の矢と違い威力が桁違いな魔弓『エル・ブレイカー』の矢は突き刺さるだけでは留まらず、アトスの2の腕を半分抉って突きぬけ、そのまま森の奥へ飛んでいく。

「ぐおおおおおおおおおお!!」

右手で銀槍の柄を掴み、雄叫びをあげて、一気にアトスは銀槍を自分の身体から引き抜く。
身体の左半身は血まみれで、せっかくの貴族服が台無しだ。
致命傷は避けれたようだが、重症なのは間違いない。
左腕は2の腕から下がダランとしており、もう使い物にならないだろう。
ゼーゼーと息を乱すアトス。ギロリとこちらを睨みつける。

「アトス様っ!!」

その場にいたコモナーたちが真っ青な顔をしてアトスのまわりに駆け寄っていく。

「近づくなっ! クズども! これでは俺が負けそうに見えるではないか!」

この期に及んでもまだ強がるアトス。
荒い息を吐きながら、銀槍を捨て、ゆっくりと腰からクレイモアと呼ばれる剣を抜く。

「認めよう…。今、俺は、自らの過信ゆえにこれほどの傷を負った。
だが……っ!!」

呼吸をスーと整えると、アトスは剣をブン!と上段から下段に振り下ろした。

「おまえらは決して俺に勝てぬ! 今この場で俺に殺されるのだからなっ!」

目を血走らせて俺たちをアトスは見る。
──背水の陣。ただの虚勢とも受け取れるが、プライドの高い連中のこと、勝つために何をしてくるか分からない。
もう俺たちに対する侮りはないだろう。
本気で来ると思ってもいい。

もっとも片腕を使えない状態でどこまでやれるかという疑問が残るが。

そう思いながらも一切の油断はしない。
窮鼠猫を噛む。そんな諺もある。
油断すれば、こいつのように片腕を失う可能性だってある。

一歩前に出る。
アトスの血走った目を見ながら、俺は風剣を居合抜きするように横に構えた。

一陣の風が吹く。
木々がざわめき、緑の葉がカサカサと音を鳴らす。
武器を失ったリアラは後方のクレアと並び、俺とアトスの戦いを見守る。
クレアといえば、弓を構えてコモナーたちを牽制している。俺とアトスの戦いを邪魔させまいとしているのだろう。2人の確かな信頼を感じる。

「いくぞ。劣等種、貴族である俺に血を流させたこと、死ぬより後悔させてくれるわ」
「そのセリフ、負けフラグが立ってるぞ」
「ぬかせっ!!」

瞬間、俺とアトスは同時に地を蹴った。
思った以上に奴のスピードは速い。俺を真っ二つにせんと頭上から雷のごとく剣を振り下ろす。
俺はそれを躱すこともせず、受け止めるように風剣を横なぎに払った。

ガキンッ!!

鈍い音と共に衝撃がズシリと俺の身体にかかり、地面をしっかりと右足で踏みしめる。
風剣は唸りをあげてアトスの上段斬りを受け止め、アトスは驚愕の表情で俺の風剣を凝視する。

「なんだ、その剣は!?」

魅入られたように俺の剣から目を離さないアトス。
周囲の地面が風剣が発する風に巻かれて砂煙をあげ、俺とアトスの姿を竜巻状に覆い隠す。

(ちっ、見せすぎたか……)

竜巻の中心にいて俺とアトスは鍔迫り合いを続ける。
互いに剣を持つ手に力を込め相手を押し切ろうとする。

クレアの魔弓と俺の風剣の能力。
どちらも新人類は見たことも聞いたこともないだろう。
隠し通すことは無理だったとしても見せるのが早すぎたかもしれない。
なにせ、ピアーは一人ではない。かなり離れた場所から女のピアーが俺たちの戦いを見続けているのだ。
もし、このまま新人類を逃がせば、新人類は俺たちの武器を必要以上に警戒し、武器の性能を探ろうとするだろう。
最悪、俺たちの武器をどんな手を使ってでも奪おうとするかもしれない。

周囲が風に覆われ、視界を外の敵から妨げられたことで、さらなる切り札を使う。

──身体能力強化。
魔力を全身に通し、筋力をアップさせる。
もし奴が万全の状態であれば押し切られていた可能性も、これで完全に消える。

「ぬがあああーー!! ば、馬鹿なっ!!」

弾かれるのではなく、純粋なパワーによって自分の剣が押し込まれていくのをアトスは信じられない表情で見た。
貴族である自分。
新人類でも上位に位置する自分がパワーで負けようとしている。
──あり得ない。あってはならないことだ。
アトスは歯を食いしばって愛用のクレイモアを必死で押し返す。
しかし、現実はその考えを否定するように、目の前の光景を嫌というほど見せつける。
身体能力でもそうだ。
パワーはおろか、スピードでさえも貴族である自分に負けていない。
なぜだ、なぜ俺が負ける?
片腕が使い物にならず、体力がかなり消耗しているのは認めよう。
だが、それでもコモナーなどに後れをとることなどありえない。ましてや劣等種に劣ることなど……。
なら、こいつはいったいなんなのだ。まさか自分と同じ貴族だと言うのか?
いや、それこそあり得ない。先ほどこいつらの1人が、槍を持った女に向かって『リアラ』と叫んだ。
そのような女がピアーにいると聞いたことがない。


──キュィーーン!!

俺の持つ風剣の刀身が淡い緑色を発し、アトスを力だけでなく風圧でも押し切ろうとする。
もう少しだ。もう少しで奴は、風剣に押し切られバランスを崩し大きな隙を作る。
その時こそ、奴の最後だ。

俺はより一層力を込め、風剣を力任せに振り抜いた。

ギンッ!!

アトスの腕が上空に撥ね上げられ、上体が後ろに仰け反って胸元ががら空きになった。
グラッ!と浮きあがったアトス。ここから体勢を立て直すのは瞬間的には無理。
俺は返す刀で、アトスの首筋に風剣を勢いよく振り下ろす。

風剣は奴の左の肩筋に入り、そのまま肉を切り裂いていく!

「ぐあああああああああああ!!」
口から血を吐きだしながら、なすすべもなく風剣はアトスの上半身を斜めに別つ。
その間、約2秒。
アトスの上半身と下半身は別々の生き物となり、ゆっくりと地面に堕ち沈黙した。



「……ア、アトス様がやられた……ば、化け物だ。に、にげろーーー!!」

半狂乱になってコモナーたちが蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
クレアはそのうちの3人を背後から弓で仕留めて、こちらに駆けよってきた。

「お見事です。幸太さま」
「ああ、ありがとうクレア」

俺は油断なく、森の奥でこの戦いを見守っていた女のピアーに視線を移す。
彼女は俺がこちらに顔を向けたのを見ると、胸の前で何度か拍手をするような仕草をし、そのまま森の奥へ走り去って行った。

「……追いますか?」
「いや、いいだろう。このアトスって奴が主催者だった狩りは中止になったみたいだしな……。それより隠れているワークヒューマンを無事に街に帰そう。付き添って帰してあげることはできないけど」
「そうですね。あくまでも私たちはワークヒューマンたちとは無関係。そうしないと彼らはまた狙われるでしょう」
「ああ」

銀槍を拾ったリアラが、こちらに戻ってくるのを見つめながら俺は、作戦が上手くいったことに安堵を覚えるのだった。









(すごいものを見せられましたね)

エレンは興奮冷めやらぬよう、森を疾風のように走りながら先ほどの戦いを思い返していた。
いかにアトスが相手を舐めてかかっていたとはいえ、あそこまで圧倒的に戦いを有利に進めるとは思いもよらなかったからだ。
しかもあの様子だと、彼らはまだ、何か隠している力がある。
武器もそうだったが、いったい彼らは何者なのだろうか。
少なくとも貴族ではないようだが、まさかコモナーの中で力を隠している者がいるのだろうか?
自分でも3対1では危うい。それほどの実力の持ち主。

とにかくここは引くのが先決。
エレンは森から脱出し、新人類の街『エデン』へ直走る。
もしかしたら彼等が自分を口封じのため追いかけてくるかもしれないと思ったからだ。顔を布で隠していたのだから可能性はある。


狩猟に参加したメンバーは自分とコモナー数名を残して全滅した。
これを他の貴族が知れば、自分は嘲りを受け、ピアーの面汚しと馬鹿にされるだろう。
だが、馬鹿にされるのが嫌だといって命を落としては、それこそ本当の愚か者だというものだ。言いたい奴には言わせておけばいい。むしろ、そいつらを焚きつけて奴らにぶつけるのがいいだろう。
そうすれば自分の気に入らない奴が敵を侮って勝手に死んで行ってくれる。

それにしても…とエレンは哂う。

何者か知らないが、面白い連中が現れたものだ。


エレンは、かつてない好敵手の登場に、心が躍っているのを感じていた。











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  1. 2013/03/14(木) 00:06:14|
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