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モブの植木鉢小説館

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9 同盟

──お昼休み。
授業が終わり、一種の解放感が教室を包む中、いよいよ俺は同盟相手と接触するために席を立つ。
今朝の急変した桜の態度に驚いたが、あれからは何事もなかったようにいつもの態度のままだ。いくらすんなり射精させるためとはいえ、本当に同一人物か疑わしい。興奮したのは確かだけど、あれはいったいなんだったんだ。今でも夢を見てたみたいだ。


まあでも。今はそれよりも奈々の方が気にかかる。
今日、あいつが登校してから話しかけてみたのだが、やはり反応は芳しいものではない。
俺に対してソッポを向くのは変わりないんだが、僅かにソッポを向く角度がこちらよりに浅くなったことくらいだ。
チャーハン効果で、ちょっと許されてきてると思っていいんだろうか?

「そろそろ行くわよ。いい?」
「大丈夫だ。」

桜がわざわざ俺の席にまで来ると、一緒に喧噪溢れる教室を出る。
朝から呼び出された為、満足に飯を食べれず腹が減っている。帰りに購買でパンでも買って昼食を済ませることにしよう。

俺たちは東校舎を出て1年1組のある中央校舎へ続く渡り廊下を通る。
この中央校舎には職員室があるので何回か来たことがあるのだが、職員室は1階にあるので3階にあるという1年1組には行ったことがない。
言うなれば敵陣なのだから、かなり緊張している。入学初日と同じくらいの緊張さだ。

「挑発されても表情に出しちゃ駄目よ。フォローはするから」
「わかってる。おまえこそ、その毒舌は封印しろよ。結べるものも結べなくなるからな」

中央校舎に入り、あまり人気のない職員室の前を通り抜けぬけ、
いざ階段を上がろうと廊下の角を曲がった瞬間、突然桜が立ち止り俺の制服の袖をグイっと引っ張った。

「お、おい」
「静かに」

桜が階段前で背後を振り返り、じっとそこを見る。
すると、トタトタと音がして慌てた奈々が飛び出してきた。

「あっ!」

奈々が慌てて隠れようと引き返すが時遅く俺にバッチリ見られてしまう。しかも体勢を崩して隠れようとしたものだから、廊下にビタン!と前のめりに転んでしまい、スカートが捲れてパンツが丸見えになる。

「………………」

声も出せずに奈々の姿を凝視する俺たち。
奈々は、暫くすると何事もなかったように立ち上がり、真っ赤な顔でスカートをパンパンと払った。

「奈々……?」

俺の呟きに反応して、ぶんぶんと頭を横に振る奈々。どう見ても奈々だろう。なんでついてきてるんだ。
というかまったく気づかなかったぞ。桜はよく気づいたな。
対応に困り桜の顔を見ると、桜は俺に目で合図する。
どうやら、俺に対応を一任すると言う事らしい。変に帰れと言ったらまたヘソを曲げそうで困るんだけどな。
もっともこのままここに放置という訳にはいかないので、俺はしぶしぶ声をかけた。

「奈々、俺たちはこれから1年1組に行くんだ。危ないから教室に帰ってくれ」
「………………」

穏やかに言ったつもりだが、奈々は黙ったまま俯く。だが、暫くしてから顔を上げるとムッとした表情で俺に言った。
「……私は駄目でも桜ちゃんはいいんだ。」
「うっ! いや、それは……」

言葉に詰まる。
それを言われてしまうと、俺としてはどうしようもない。交渉の為だって言っても奈々の性格だと納得しないだろう。
ただでさえ、奈々とは少し仲が拗れてるのだから強く出られない。
俺はどうしようか悩む。いつもなら無理に言い聞かせるのだが、その手は使えない。

俺が黙っていると、奈々は俺を無視して桜にいう。

「桜ちゃん、私も行ってもいいよね。桜ちゃんが心配だし」

わざわざ俺の名を除外するところが、今の俺と奈々の関係を表している。
うーん、地味に傷つくな。

「そうね。ここまで来たのなら奈々も一緒に行きましょうか。何かあったらそこの男が守ってくれるでしょうしね。」
「くっ…!」

有無を言わせない空気。もはや異論を唱えることもできそうにない。
俺は危険だと思うのだが、大丈夫なのか?
桜の顔を見ると、特になんらかの表情を浮かべてないので、俺には判断がつかない。
でも本当に危険だと思ってるなら、桜も反対するはずだ。それをしないってことは、あまり危険だと思ってないのだろう。
そういえば、これから行く1年1組の男は、人畜無害とか言ってたな。だからなのかもしれない。

俺は一人頷くと、再び歩き出した桜と奈々の後を追って階段を上る。
いよいよ未知の領域だ。


中央校舎3階廊下───。

とうとう1年1組のある3階にやってきた。
1組は少し階段から離れているらしく、教室までは距離がある。
俺は念のために2人の前に立ち、先頭をきって歩く。
途中、1年1組の女子生徒とすれ違うが、どの顔も俺を見て警戒の色を浮かべている。はっきり言って、こんな態度を示されるとは思わず、すごいプレッシャーだ。

(どうなってるんだ。これは……)

いつのまにか、空気が緊迫したものに変わっており、ガラスにひびが入る前のような雰囲気になっている。
こちらを見つけた女子生徒は一斉に喋るのをやめ、俺たちの一挙手一投足を見つめており、桜に相談したいが後ろを振り返る余裕すらない。
俺は針のむしろのような心境のまま、なんとか1年1組の教室に辿り着いた。

「すいません。ここに仲山楓太くんはいますか?」

教室のドアを防ぐように立っている気の強そうなツインテールの女子生徒に丁寧に話しかける。
なぜ、彼女が人がよく通るような場所で突っ立ているのか知らないが、とてもこちらを見る目は友好的とは思えない。
まるで何かを守ってるような……。番人みたいな感じだ。

「いるけど、なんの用?」
「ちょっと話があって」
「ふーん、どんな話?」
「それはちょっと……」

やけに絡んでくるなと思っていると、後ろにいた桜が口を開く。

「同盟の話よ。このゲームを勝ち抜くためのね。仲山くんにとっても損はない話だと思うけど?」
「………………」

桜の顔をじっと見て考えるそぶりをした女子生徒。
暫くして彼女は「わかった」と言い、ドアを開けて仲山の名を呼んだ。

「なんですか山根さん?」

やってきたのは、校長室で俺の隣に立っていた、あの童顔の仲山だった。仲山は俺の顔を見るなり顔を強張らせる。

「大丈夫よ。こいつらはフウ君を傷つけにきたわけじゃないから。このゲームを勝ち抜くための話をしにきたんだって。」
「そ、そうなんですか。」

ドアの前にいた女子が、安心させるように仲山にそう言うと、仲山は露骨にホッとしたような表情を浮かべた。

なるほど。こちらを上目遣いで見ていることといい、実に庇護欲をそそられる顔立ちと態度を示している。
一見するとやはり中学生みたいだが、それがこいつの魅力なのだろう。どうやら俺が感じた違和感の正体がわかった気がする。
ようするにこいつらは、クラス全体でこの仲山という男を守っているのだ。だから、俺たちとすれ違った女子たちは全員警戒の色を示したのだ。
ドアの前に立ちふさぐように立っていたのもわざとだろう。俺たちが乱入して仲山を傷つけないようにしていたに違いない。

ふと、視線を感じて周りを見ると、いつのまにか遠巻きにするように1組の女子たちが取り囲んでいる。
しかもその手には、箒やらモップが自然になるよう握られている。
何かあれば、すぐにでも飛んできて俺たちを攻撃するつもりなのだろう。

普段桜に虐げられている俺とは違い、すごいハーレムを築いているな。
本人が意図して作ったのかどうか知らないが。

「あ、あの~」

目の前の仲山がなよなよした声で俺に声をかける。
考え込んでいたせいで、本来の目的を忘れていた。
俺は慌てて、仲山に向かって話しかける。

「あ、ああ、すまん。俺は1年2組の芝山勇太。後ろのふたりは同じクラスの女子生徒で、付き添いだ。
  実は今日、おまえと同盟を結べないか話に来た。」

「ど、同盟ですか?」

思ってもいなかった提案のようで、不安そうに仲山は隣の女子生徒に視線を送る。
その姿は、小鳥が親鳥に助けを求めているようで、俺まで不安になってくる始末だ。
大丈夫なのか。これは。

「ええと、おまえも知ってると思うが、このゲームは誰かひとり落としたら進級できる。だから俺たちで同盟を結んで他の誰かを落とそうってことなんだ。
  同盟を結んだら、自分の所有物の女子には互いに手を出さないってことだし、敵も1人減るだろ。かなりメリットがあると思うんだが、どうだろう?」

「そ、それは芝山くんが僕の味方になって、他の人と戦うってことなんですよね?」
「そうだな。同盟を結んでくれたら、俺たちは味方になって一緒に戦うことになる。」

「そ、そうですか。」

俯いて仲山は一生懸命考え始める。
悩んでいるのだろう。俺と同盟を結ぶかどうかを。

俺はその間に後ろの桜と奈々の顔をみる。桜は、なんの表情も浮かべず澄まし顔のままだ。
奈々は、俺と視線が合っても顔を逸らさず、少し不安そうな顔で俺を見ている。どうやら周りを取り囲んでいる女子生徒を気にしているようだ。
誰も一言も喋らず、俺たちのやりとりを聞いてじっとしているのだから不安になるのも無理はない。なんか皆の見守るなか、舞台にあがってお芝居をしているような感じだからな。

そうして仲山が考え始めて5分経ったが、仲山は一向に決断を下さない。
進級が掛かってるのから慎重になるのは分かるのだが、このままだといつ考え終わるか分からない。俺は仲山にこのまま考えさせ、
いったんこの場を離れようかと桜と奈々に目配せした。
だがその時、桜がそれに逆らうように口を開いた。

「このままうだうだ悩んでいても仕方がないでしょう? はっきりしないってことは、私たちとは同盟を結ばないってことでいいのかしら?」
「桜ちゃん!」

桜の少しキツイ言い方に、奈々が慌てて注意する。
まわりの女子たちの雰囲気が少し殺気立ったものに変わる。こちらを睨み武器を構えてジリジリと近づいてきた。
ほんと何言っちゃってるの。俺が毒舌を封印しろって言ってただろうが!

俺が大急ぎでフォローすべく、桜から仲山に振り向くと、仲山は怯えとは行かなくとも少し怖がった様子で、扉の前の女子生徒の後ろに隠れるように身体を移動させていた。

「言ってくれるわね、桜さん。フウくんをこんなに怖がらせて……、覚悟はできてるんでしょうね?」

俺を押しのけるようにしてズイっと前に出てきた扉の女子生徒。声を抑えているが、怒っているのは一目瞭然だ。
額の血管をピクピクさせていることから本気で怒っているのが分かる。
なんでこんなマジになってるんだ。いくらなんでもキレるの早すぎだろう。俺がフォローするのも忘れてそう思っていると、代わりに奈々がフォローすべく動いた。

「ごめんね。桜ちゃんはちょっと今日は機嫌が悪いだけなの。仲山くん気を悪くしないでね。」 

お得意のロリフェイスを生かした天使の笑顔で、奈々は仲山に語りかける。その効果は絶大のようで、仲山は顔を赤くしポォーとした表情で奈々に魅入っている。
俺はこの間隙をつき、この場を収めるべく奈々に続いて動いた。

「仲山、同盟の件はあとで聞きに来るから考えてくれるか?」
「………………」

心ここに非ずといった感じで仲山は俺に見向きもしない。だが、俺たちはこの隙に無言でこちらを取り囲む女子生徒たちを壁を割って脱出した。
階段を降りるとき後ろを振り向くと、女子生徒たちは無表情で俺たちが立ち去るのを見ていた。








「ふぅ、怖かった。桜、おまえ空気を読めよ。袋叩きにされるかと思ったぞ……」

俺たちは、どうにか職員室のある1階まで辿り着くと、ようやく息を整え一息ついた。
まったく桜のせいでとんでもないことになるところだった。はっきり言うのはこいつのいいところかもしれないが、あの雰囲気で言わないでくれよ。
そう思いを込めて、桜を睨むと、桜はしれっとした態度で口を開いた。

「あれはブラフよ。私たちから主導権を取りたかっただけでしょうね。」
「そうなのか。そう見えなかったけどな」

廊下のガラスにもたれながら、俺が皮肉気に言うと、今度は奈々がいう。

「でも。なんか仲良くしてくれそうな感じはしたよね。あの男の子も嫌な感じはしなかったし」
「いや、まぁあの男はしなかったけど、まわりは……な」

確かに奈々の言う通り、あの男には問題がなさそうだった。
しかし、あの取り巻きはどうだろう。明らかにこちらに敵意剥き出しだった。
桜の読み通り、あれがブラフだったとしても、本当にこちらに友好的なのか怪しいものだ。仮に同盟が結べたとしても、あの取り巻きが主導権を持ってたら平気でこちらを裏切りそうな気がする。
そのあたりは桜はどう考えているのだろう。そう思っていると。
桜は、その疑問に答えるように長い髪をフワッと片手で払って、俺を見つめ答えた。

「大丈夫よ。確かにあの男の周りは気の強い子が多いけど、彼女たちは仲山の言う事には逆らえないわ。絶対にね……。」
「なんでだ?」
「それは彼女たちが彼を大好きだからよ。母性本能を刺激される男と言った方がいいかしら。私には理解できないけどね」

そう言って桜は再び廊下を歩きだした。どうやら次の目的地、1年4組に行くつもりなのだろう。
西館に向かって歩みを進めている。

俺は、奈々は顔を見合わせると、すぐにその後ろを追うのだった。



次にやってきたのは、西館2階にある1年4組だった。
今度は4組の女子生徒に変な注目を浴びることなく近づける。
どうやら4組は、俺の2組と同じような雰囲気のようだ。やっぱこれが普通でさっきのが異常なんだよな、と確信する。
俺たちは、ごく自然に4組につくと、ドアを開けて目的の男を探す。するとその男は、教室の真ん中の席で小説らしき文庫本を読んでいた。
他の女子たちがお弁当を食べてるなかで、ひとり本を読んでいるということは、もう昼飯は終わったのだろうか?
そう思いながら、俺は小説を呼んでいる眼鏡をかけた男、『海森縁』に声をかけた。

「本を読んでるところを邪魔してすまん。海森、ちょっとこっちに来てくれないか? 話があるんだ」

俺が海森に話しかけたことで、教室の目が一斉にこっちに向いたが、俺は海森だけを見つめてそれを回避する。
海森は、俺の姿に気づくと、眼鏡をクイっとあげて本を閉じてこちらにやってきた。

「何か用かな。確か、芝山勇太くんだよね。」

人のよさそうな笑みを浮かべ、こちらに友好的な態度を示した海森。
俺の名前を知っていたのには驚いたが、これは簡単に話が済みそうだと、俺は人心地の悪さから逃れるべく一気に話を進めた。

「実はおまえに話があってきたんだ。このゲームを勝ち抜くため、俺と同盟を結んでくれないか?」
「同盟? つまり僕と、相互不可侵条約を結んだうえで、他の人を蹴落とすってことだよね?」
「そうだ。メリットもあるし、悪い話じゃないと思うが」

そこまで言葉を口に出し、梅森に視線をやると、奴は実に楽しそうに笑った。

「面白いね。いい話だと思うよ。これは君が考えたことなのかな? それとも……」

再び眼鏡をクイっとあげて、海森は桜と奈々に興味深そうに視線を移した。
俺は思わずふたりを隠そうとする。一瞬だが、海森の口元がいやらしく吊りあがるのをみてしまったからだ。

「私が考えたことよ。何か問題があるかしら?」
「ほう…、君が…ね。」

探り合うように視線をぶつけあう桜と海森。
互いの力量を見極めているような感じだ。俺の場違い感がすごい。

「それで同盟は結んでくれるのかしら?」
「そうだね……。いくつか確認していいかな?」
「どうぞ」
「まず、同盟を結ぶにあたり、僕たちは相互不可侵、情報の共有化、相互監視、ターゲットを共同で落とすってことでいいのかな?」
「……そうね。大体あってるわ。」

桜と海森が同盟条件を確認しあい話を進める。俺と奈々は蚊帳の外だ。

「ではあと2つ。この話を他の誰に持って行っているかという事とターゲットは誰かってことを教えてくれるかな?」
「……それはまだ教えられないわね。あなたはまだ同盟を結ぶと言っていない。味方でない者にそこまで言うつもりはないわ。」

「…そうかい。それはそうだろうね。」

海森は、わざとらしく大きく溜息をすると、俺ではなく桜に笑みを向け手を差し出した。

「わかった。君たちと同盟を結ぶことにするよ。これからよろしくね」
「ええ、よろしく」

桜も微笑を浮かべて海森と握手をかわす。
なぜ俺と握手しないのか気分が悪くなったが、ここでそれを言ったら揉めるかもしれないので我慢だ。
それにしても、俺はどうもこいつは、好きになれそうにないな。俺のことなんて眼中にないって態度が気に食わない。
多分性格が合わないと思うんだが、どうなんだろうな。少なくとも第一印象は俺にとって最悪だ。


まあそれはともかく、とりあえず海森とは同盟を結ぶことが出来た。
仲山はどうするかまだ分からないが、桜は楽観的だ。

これで仲山が加われば俺たちは一気に他の奴より有利に立てる。
進級に明るい道筋が出来て俺は胸を撫で下ろすのだった。













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  1. 2013/04/16(火) 00:05:15|
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ntr属性なのに超純愛ゲーをやって自己嫌悪になった男。リハビリのために小説を書いてます。
ほぼ賢者モードで書いてるので期待しないでください。

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