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18話 ──老人と猫──

一時間後、リアラは姉弟たちと山を下り、ワークヒューマンが住むという街に向かっていた。
この少女は恵美という名で、弟の和樹と一緒に山に山菜を取りに来ていたらしい。
美しい銀槍を片手に持ったネコミミのリアラと、つぎはぎだらけの服で共に歩く姉弟は、
ある意味幻想的な風景の一コマで、まるでファンタジー物語の一部のようだ。

竹かご一杯の山菜を片手に恵美はリアラに話しかける。

「リアラさんはどこから来たんですか?」
「にゃあ、あっちにゃ」

リアラは手を伸ばして恵美たちの街とは違う方向を指でさした。
内心ひそかにみーちゃんが人間になったと期待していた恵美は、その答えに少しがっかりしながらも笑顔で頷く。

「あっちはボーン階級の人たちが住む街ですね。リアラさんはボーンだったんですね」
「そうなのかにゃ?」

正直、自分の階級など気にしたことがなかったリアラは首を捻って答える。
リアラはあまり難しいことを考えるのは苦手だ。
異世界にいたときも自分は何事も深く考えず槍を振るってきた。こういうことを考えるのは幸太やクレアの役目である。

リアラの疑問形の言葉に、恵美は冗談だと思ったらしくクスリと笑う。



そして暫く歩いていると、恵美たちの住むワークヒューマンたちの街に到着した。

「リアラさん、ようこそ。ここが私たちの街『ボロリッツ』です」






ワークヒューマンの街ボロリッツ──。
それは言葉が示す通り、バラック小屋が沢山建ち並ぶボロボロの街だった。
リアラたちが住んでるような石や木材でしっかり出来ている建物は少なく、ほとんどが薄い板とトタン屋根で出来ている。
そして街に行く人のほとんどが、恵美や和樹たちと同じようにつぎはぎだらけの服を着ていた。


リアラの目にはそれがとても懐かしく感じられ、にゃあと一声鳴いた。
異世界のリアラの村も、こんな感じにごちゃごちゃとした木造作りの民家ばかりだったのだ。

「リアラさんこっちです」

恵美の案内で街の中を歩きだすリアラたち。
街の人々はリアラを見て怯えたような様子を見せるが、先頭を歩く恵美たち姉弟の様子に気付くとホッとしたような表情で肩の力を抜いた。
恵美たちはボロリッツでも有名な姉弟だったのだ。

知っての通りワークヒューマンは、新人類と旧人類のハーフである。
恵美の母は、島外から連れて来られた女性で、父は新人類の名前も知らない男である。
父は恵美が妊娠したことを知ると、母をこの街に捨て姿を消した。母は、ここで恵美を出産し、それ以後ずっとこの街で一緒に暮らしている。

故に和樹とは血が繋がっていない。
和樹は赤ん坊の頃、この街に置き去りにされたところを、母が引き取って恵美の弟として育てているのだ。
もちろん和樹はこのことを知らない。知っているのはごく一部のワークヒューマンと恵美だけである。
もっともこのような話は、ボロリッツでは珍しくもなんともない話なのだが。

恵美の先導のもと、リアラたちは建物を縫うような細く曲がりくねった道を進み、やがて一軒の石造りの家に着いた。

「大寺先生、先生に会いたい人を連れてきました。入りますよ~」

恵美がドアを3回ノックすると、そのまま中に入っていった。
そして暫く待っていると、ドアが開いて恵美と人のよさそうな70くらいの老人が出てきた。

「おお、これはまた珍しいお客さんじゃな。まず中に入ってくれ。お茶でも出そう」

リアラは頷くと、和樹と一緒に家の中に入っていく。
中に入ると、8畳ほどのリビングに小さな木のテーブルと椅子が4つあり、リアラは勧められるまま椅子に座って槍を壁に立てかけた。

「どうぞ」

恵美が台所からとってきたのか湯のみ茶碗にお茶を入れて、全員に配っていく。
リアラはすぐにお茶に口をつけたが、慌てて茶碗から手を離した。

「熱いニャ!」
「あっ、ごめんなさい! リアラさんは麦茶のほうが良かったですね」

リアラがネコミミだったことを思い出し、恵美は慌てて冷蔵庫から冷たい麦茶を持ってくる。
猫人間なので、猫舌だと思ったのだ。
もっとも真実は、単に夏日なのに熱いお茶が飲みたくなかっただけなのだが。
そうとは知らない恵美は冷たいお茶に入れ替え差し出した。

「にゃあ、冷たくて美味しいニャ」

満足そうなリアラを見て恵美はホッと胸を撫で下ろす。
ちなみに熱いお茶を出したのは、体を冷やさず暑さをしのげる健康対策からである。
そして場が和んだところで、大寺という老人が湯呑をテーブルに置き、リアラに向かって話しかけた。

「おぬし、恵美からの話によると、ワシに何か話があるということじゃが」
「そうニャ! 馬が欲しいにゃ!」

すっかり忘れていたとばかりに、リアラが勢いよくテーブルから身を乗り出して言う。
大寺はその勢いに苦笑いしながら、落ち着くように言ってから話はじめた。

「馬が欲しいということは分かったが、なぜ欲しいのじゃ? 正直この島で馬を持っててもロクなことにならんぞ。新人類に目をつけられやすくなるからのぉ」
「乗りたいからニャ、乗って戦いたいからにゃ」
「戦いたいじゃと?」

リアラは頷く。

「戦うとは、新人類相手に戦うということですか?」

今まで黙っていた恵美が、心配そうに口がはさむ。

「そうだにゃ。ギッタンギッタンにしてやるにゃ。幸太もそう言ってるニャ」
「……幸太じゃと」

聞き覚えのある名前が出てきて、大寺は顎のヒゲをしゃくった。
そう、この大寺という老人は以前、幸太と手村にワークヒューマンの反乱を押さえるように依頼した老人だったのだ。
大寺はかつて農場で出会った幸太と手村の姿を思い出し、ううむと唸る。

幸太たちには恩がある。
出来るだけ力になってやりたいが、まずはこのネコミミの不思議な少女と幸太の関係を確かめなければならない。

「リアラさんじゃったか。ひょっとして幸太と知り合いなのかの?」
「そうにゃ。幸太は一緒に暮らす……恋人ニャ!」

本人やクレアたちがいないことをいいことに好き勝手に言うリアラ。
今は違ってもいずれはそうなるつもりである。なので今言っても問題ないと思ったのだ。


それを聞いて大寺は少しびっくりし、恵美は頬を赤く染める。
恵美がボソリと「みーちゃんったらおませさんなんだから……」と言った気がしたが、
リアラにはその意味があまりよく分からなかった。

「ふぅむ、するとこの事は幸太も知っておると、そう思っていいんじゃな?」
「……そ、そうだニャ」

若干間があき返事をしたリアラに大寺は不審を覚えると、ニコニコしながらリアラの顔を見つめる。
するとリアラはにゃあにゃあ言いながら誤魔化すふりをした。

(どうやら嘘をついてるようじゃな……)

大寺は内心で、そう判断する。
正直、危険なので断ってもいいのだが、この純粋で好感のもてる少女の頼みを無下に断りたくない。
しかもこの少女は、孫のように思ってる恵美たちを新人類から守ってくれたようだ。
新人類をあっというまに倒した手際といい、かなりの実力者なのだろう。
教えてあげてもいい。しかし……。

「わかった。教えてやろう。じゃが今日は泊まっていきなさい。もういい時間じゃし、ここからだとボーンの街まで遠いしの」

すっかり夕暮れになり、カラスが「カアカア」と鳴いているのを聞いて大寺は言った。

「にゃあ。でも家に帰らないと怒られるしニャア……」
今頃家でカンカンに怒ってるだろうクレアを思い出し、リアラの顔が少し曇る。

「それなら大丈夫じゃ、ワシが緊急用の電話機を使って連絡してやろう。
恵美たちの命の恩人に、なんの礼もなく帰すことなどできんし、それこそ罰が当たるわい」

それでもなお渋るリアラ。

恵美が、大寺の後押しをするように口を開く。

「リアラさん泊まっていってください。美味しい猫缶も……。い、いえ、お魚もあります」
「そうニャか……。お魚もあるにゃか」

魚と言う言葉にリアラは敏感に反応し迷う。
そういえば最近魚を食べていない。礼というならそれなりの魚を出してくれるのだろう。
ここは怒られても魚を食べて帰るべきなんじゃないのかとお腹の方も訴えてくる。

「わかったニャ、今日はここに泊まるにゃ」

結局リアラはここに泊まることになった。


・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・


「結局、馬はどこにいるのニャ?」
「まぁまぁ、そう焦るな。今思い出してるからの」

深夜、リアラだけでなく結局、恵美も大寺の家に泊まることになった。
すでに魚をメインとした夕食に舌鼓をうち、すっかりご満悦になったリアラは、気分をよくしたまま大寺に馬の場所をせがんでいる。
しかしながら、この老人は食後のお茶を飲みながら、リアラの質問をのらりくらりとかわしていた。

実は、電話でボーンの街にいる手村に連絡がついたものの馬の事に関しては、幸太に聞いてみるから待ってくれと言われて、連絡待ちの状態だからである。

大寺のカウンセラーとして見るところ、このリアラというネコミミ少女は少し子供っぽくて向こう見ずなところがある。
馬のいる場所は知っているが、その場所は非常に危険なところにあるので、そのまま教えては無鉄砲に計画をたてずに行く可能性があり、
さすがにこんな少女を1人で行かせるのは、例え幸太の許可があろうとも気が進まなかった。

だからできるだけ返事を引き伸ばし、少しずつ馬の事を諦めさせようと考え始めていた。

「恵美の話では、おまえさんは槍を使って戦うようじゃな。いったいどこでそのような技術を身につけたのじゃ?」
まずはあの芸術品のように美しい銀槍について尋ねる。

「ネコミミ村ニャ。触手と戦うために村に生まれたものは、みんな武器の使い方を学ぶにゃ」

リアラが胸を張って誇らしそうに言うと、一緒に話を聞いていた恵美が口を開いた。

「あの、ネコミミ村って。それに触手って……」

今まで聞いたこともない単語を言うリアラに恵美は戸惑う。
自分は、確かにこの街にいることは多いが、この島の大体のことは知ってるつもりだ。その自分が知らないってことは、ひょっとして島の外から来たのだろうか?

「ネコミミ村はネコミミ村にゃ。触手は森に巣食う悪い奴らにゃ!」

要領を得ない答えに、今度は大寺が訊く。

「ネコミミ村と言うのは島の外にある村なのかの?」
「そう、この島にはないのにゃ」
「なるほどの……」

ようやく合点がいったというように2人は頷いた。
この島にリアラのようなネコミミ人間がいるとは聞いたことがない。やはりこの少女は島の外から来たのだ。
美しい容姿をしていることから、恐らく島の外で新人類に捕まってボーンにされたのだろうと察する。
しかし島の外に彼女のようなネコミミ人間がいるとは、世界とはどれだけ広いのだろう。一歩も島外に出たこともない恵美には想像もつかない。

大寺がううむと唸ると、タイミングよく玄関に設置してある電話機がジリリと鳴った。
この電話機は、この街とボーンの街を繋ぐ最後の電話機で、緊急用として使用が認められている。
もちろん内容は新人類に盗聴されてる恐れが強いので、新人類に対する不満や敵対するようなことなどは一切言えない。



「……そうか、ふむ分かった。ではそのようにすることとしようかの。でわの……」

大寺が受話器を耳に当て話をし、リアラたちのいる部屋に戻ってくる。

「大寺先生、今のは?」
「幸太たちからじゃ。馬の事は教えてあげてほしい。ただしリアラは馬を手に入れに行く前に必ず戻ってくるようにとのことじゃ、
怒ってないみたいでよかったの」
「にゃあ~」

リアラが笑顔を見せて、ネコミミをぴくぴく動かした。

「では馬の事を教えてやろうかの」
「思い出したのかにゃ?」

再び食卓の椅子に腰をかけた大寺は、顎髭をしゃくりながら、リアラに向かって微笑んだ。

「うむ……。だがワシの言った通り明日は一回家に帰るのじゃぞ。よいな?」
「わかったにゃ」
リアラの目をじっと見つめ確認すると、大寺は居場所について話をはじめた。

「馬のいる場所なんじゃが、実は新人類の街で貴族が飼っていると聞いたことがある。世話をしているのはワークヒューマンの使用人だから分かったことなんじゃがな」
「その街はどこにあるのニャ?」
「ここから西にある貴族たちの中心街『エデン』じゃ。かなり大きくて警備も厳しいから一筋縄ではいかんぞ」

大寺はお茶を一口飲んで真剣な表情になった。

「エデンの住人はほとんどが新人類じゃ。仮に馬を手に入れても街から出るときにまず入り口でひっかかるし、強引に突破しても追跡されるじゃろう。
振り切っても馬なんて目立つものがいれば、すぐに場所が知れてしまう。おぬしや幸太が何を考えているのか分からぬが、馬を手に入れるにしても実力行使はやめてほしいものじゃのぅ。命がいくつあっても足りんわい」

少し憂いの顔を見せた大寺だが、リアラは椅子から立ち上がって喜びを露わにした。

「これで馬が手に入るにゃ! 楽しみだにゃ」

にゃあにゃあとはしゃぐリアラ。
大寺と恵美はそれを苦笑して見つめながらも、
心の奥底ではどこか不安を隠せないでいるのだった。



次の日。
リアラは、大寺に礼を言い、街を後にした。
本来ならボーンの街までの道に不慣れなリアラを送っていきたいとのことだったが、
リアラはそれを断った。
これから起こす事を考えれば、関わり合いがあることをなるべく人に見られたくないから気を使ってくれたのだろうと大寺や恵美は思ったのだが、
実際は一刻も早く馬を捕まえたいため、誰かと一緒に行くより1人で走って帰った方が早いと思ったからだ。



リアラは一般人が走るよりはるかに速いスピードで移動しながら、ウキウキ気分で街まで帰った。











「リアラ! 心配させるなよ。どうして家を勝手に出たんだ!」
「嘘ついたにゃ! 怒ってないって言ったのに嘘ついたにゃ!!」
「これは注意だ。怒ってない!」

にゃあにゃあと抗議するリアラを見ながら、
俺は黙っていなくなったリアラが、いつのまにかワークヒューマンの街まで行き、大寺さんにお世話になっていたことに怒っていた。
今回は無事だったものの、リアラは基本的に気まぐれでトラブルを起こしやすい体質だ。新人類と戦いになれば、それこそリアラが危ない。
例え実力があろうとも数では向こうが圧倒的に上だ。数で消耗させられれば、リアラですら負けると思ったのだ。

「クレア、おまえもなんとか言ってやってくれ。勝手に家を出たんだぞ」
「申し訳ありません。私がもっと注意しておけば、こんなことにはならなかったんですが」

しおらしく頭を下げるクレア。
いったいどうしたんだ。いつもならクドクドとリアラに説教するのはクレアの役目なのに。
そういえば、昨日俺が家に帰ってきた時からクレアの様子は少し妙だった。
ボーとして顔を赤らめたと思ったら、急に頭をぶんぶん振ったり。
それにリアラが黙っていなくなったのにも関わらず口数も少なかったしな。

俺は心配になり、クレアに向きなおる。

「クレア大丈夫か? 少し疲れてるみたいだし、休んだらどうだ?」
「いえ、大丈夫です。幸太さまお気遣いなく」

「差別にゃ!! クレアばっかり甘やかして、にゃーも甘やかせてっ!」

俺がクレアを気遣うと、リアラが後ろから抱きついてきた。
そしてゴロゴロと喉を鳴らして背中に顔をスリスリする。

こういうところがこっちの世界の猫っぽい。
世界が違うのに不思議なものだ。

俺はしがみつくリアラを引きはがすと、とりあえず今日は休息日にして馬のことは夜にでも話し合うことにした。

クレアの調子も悪そうだし、リアラが少し興奮気味なので冷静さを取り戻させないといけないしな。



夜。
俺たちは夕食を終え、ソファーの上でくつろいでいた。
今日は、出来るだけクレアを休めさせたかったので、俺が料理を作った。
リアラが持って帰ってきた魚をメインにした、焼き魚だったので作ること自体は楽だった。

「それで馬のいる場所が新人類の街『エデン』なんだな」
「そうにゃ。そこに馬がいるにゃ」

俺はこの場にいるクレア、リアラ、そして手村を軽く見回し、そしてゆっくりと背をソファーに預けた。

まったくやっかいなことになった。
心の底からそう思う。
勝手に家を抜け出して、どこへ行ったかと思ったら馬を探しに苺山やボロリッツまで行ってるとは……。


大人しくちょこんとソファーに座っているクレアに視線を送りながらさらに考える。

ちょっと考えてみたらこういう事態は予測できた。
ドラグーンをやってたリアラが馬なしで戦うのは、本意ではなかったはずだ。
この世界に戻ってきたときは、こんな戦いが待っているとは夢にも思わず気にもしなかったのだが、
貴族との戦いのような激しい戦いがあれば、リアラが馬を欲しがるのは当然じゃないか。

腕を組んだまま何も言わない手村と、なぜかいたたまれそうな顔をしているクレアを見ながら、俺は2人に意見を求める。

「手村、クレア。率直な意見を聞かせてくれ」

「うーん、そうだな。リアラちゃんが馬を欲しがってるのは昨晩聞いて知ってるんだが、場所が場所だけにな……」
手村が、言いにくそうに言う。

「クレアはどうだ?」
「わ、わたしですか? 私は幸太さまの意見に従います」

いつもとやはり様子が違うクレア。本当に大丈夫か?と声をかけたくなったが、
本当に体調が悪いなら自分から言うだろうと思い、まずは馬の事について話を進めることにする。

「新人類の街エデンは確か苺山学園がある場所だったな。今度ティアナが家に帰ってきたら馬のいる場所を訪ねよう」
「いや、別にティアナちゃんに聞かなくても、俺がエデンにいるワークヒューマンを通じてすぐにでも調べることができるが」

せっかく乗り気でない俺の意を汲まず、手村が余計なことを言う。
わかってるのか?
敵の本拠地に馬を奪いにいくんだぞ。

「幸太さま、何も力ずくが全てではありません。金銭で購入。または他の方法を使って手に入れることもできるかと」
「なるほど。その手もあるか……」

俺は腕を組んで唸る。

「でも金なんかないぞ。あったらこんな貧乏な暮らしなんてしてないしな」
「ええ、それは分かってます。これは物の例えです」
「クレアちゃんって結構キツイのね……」

手村が、少し落ち込んで顔を伏せる。
確かにこれは可哀想だ。手村だって好きで貧乏をやってるわけではない。
全ては新人類がボーン階級やワークヒューマンを奴隷のように扱ってるからだ。

「クレア、言いすぎだぞ」
「すいません。手村さん、言葉が過ぎました」

クレアは謝る。
やはりクレアは少しおかしい。普段ならもっと言葉を選ぶはずなんだが。

「気にしないでくれ。うちが貧乏なのは確かだし、それよりほら……ティアナちゃんに聞くって話なんだが、
やっぱりそっちの方で当たった方がいいかもな。学生なんだし、学生繋がりで譲ってもらえるってこともあるかもしれないしさ」

「そうかもしれないが、さすがにタダってわけにはいかないだろう。だけどティアナに色々調べてもらうようにするか。
もしかしたら情報によっていい案が出るかもしれないし、それに早急に必要ってわけじゃない。今この場で決めて失敗するよりかはいい。
リアラもそれでいいな?」

「にゃあ、でもにゃあは……」
「リアラ、私の言いつけも守らず勝手に家を出て行った罰です。いいですね」

反論しようとしたリアラにクレアが言葉をかぶせると、リアラは不満そうにしながらも口を閉じた。


これで話しは終わりだな。
ティアナにはまた負担をかけてしまうが、これが情報をもっとも得られやすく、安全なので仕方がない。
日常会話で、さりげなく新人類の学生たちに聞いてもらうことにしよう。














                                           <<  >>
  1. 2013/07/30(火) 00:00:10|
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ntr属性なのに超純愛ゲーをやって自己嫌悪になった男。リハビリのために小説を書いてます。
ほぼ賢者モードで書いてるので期待しないでください。

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