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17話 ──馬──

リアラ=ネコミミ。16歳。
重騎兵(ドラグーン)と呼ばれるネコミミ族の戦士である。
彼女は異世界で幸太と共に魔族との戦いに明け暮れ、敵には恐怖と死を、そして味方には栄光と勝利をもたらした英雄のひとりである。


クレアが制服という奇妙な服を着てどこかに出かけて行き、家にひとりぼっちになったリアラは、30分後、ネコミミを隠すため野球帽をかぶって、緑豊かな苺山島の中心にある苺山に足を踏み入れていた。
目的は馬探しである。
なぜ馬を探しにここへやってきたというと、リアラは異世界では馬と共に戦場を駆けぬけ敵をなぎ倒してきたドラグーンと呼ばれる戦士だからだ。
本来森で暮らし馬と共に生活してきた彼女は、やはり共に戦場を駆けぬける馬が欲しかったのだ。


彼女は以前、クレアの付き添いで買い物に付き合いながら街で馬を探していたのだが、いないと分かると、
いつかこの自然豊かな島で野生の馬を捕まえることを心に決めていた。

馬というのは大体が森林にいるということをリアラは知っている。
だが、野生馬がこの島にいないということは知らない。
仮にいないと知っていたとしてもリアラなら馬を探しに行っただろう。

楽観的な思考を持つネコミミ族のリアラは、いないと言われてもたぶん山に行けば一頭くらいいると思っているのだ。
自分の聴覚があれば、きっとすぐに見つかる。そう信じて疑わない。
だから普段、口うるさいクレアが制服を着てどこかに行ったのを見計らってここへやってきた。



リアラは愛槍のオリオンスピアを手に持ちながら、注意深く耳を澄まし、馬の蹄の跡がないか地面に目を凝らす。
ガサガサと茂みを掻き分け、時には枝を振り払い山を探しまわる。

そうして暫く探し回るうち、こちらに向けて複数の足音が聞こえてきたので、リアラは足を止め姿を隠して目を凝らした。

こちらに向けてやってきたのは10代半ばほどの5人の少年だった。

だがどこか様子がおかしい。
彼らは全員武器をもっており、辺りをキョロキョロして何かを探している。
こちらには気づいていないようだが、このまま彼らが歩みを進めれば、遠からず気づかれるだろう。

リアラは彼らに馬をいるとこを知らないかと尋ねたいのだが、どうも変な空気を出している彼らに近づくのは気が進まない。
そうこうしているうちに、彼らは別の何かを見つけたようで、そちらに向かって一直線に走り出した。

「なんニャ?」

自然とリアラの視線が彼らの走り去った方へ向く。
もしかしたら何かいいものを見つけたのではないか?
それがもし馬だったとしたら……。

楽観的な思考らしく都合のいいように考え、リアラもそちらに向かって森を走り出す。
その脚力は当然、少年たちなどに負けるはずもなく、少しと遠回りしながらも、あっというまに彼らが目指していた先に辿り着いた。

「にゃ?」

そこで見たのは腰を屈め、山菜をとっている14、5歳くらいの少女と10歳にも満たない少年だった。
どうやら姉弟のようで、藪から飛び出て来たリアラを見て目を丸くして驚いている。

「ここで何してるニャ? 馬はどこニャ?」

固まった姉弟をよそに、尋ねながらキョロキョロするリアラ。
すでに脳内では、ここに馬がいることは決定している。できれば丈夫な若い馬がいればいいにゃと思ってる始末である。

「あ、あの……あなたはいったい……」

槍を持つリアラに怯えているのか、弟をかばうように自分の後ろにし、つぎはぎだらけの服を着た姉の方がリアラの前に立つ。

「にゃ?」
馬がいなかったことでがっがりしていたリアラが、思い出したように姉弟を見た。
そして馬がいないか尋ねようと口を開きかけたところで、
5人組の少年がこちらに到着した。

「へへ……、今日はついてるぜ。オス一匹にメス2匹か」
「そうだな。オスはさくっと殺してメスをたっぷり可愛がってやろうぜ」

腰の剣を抜き、舌舐めずりしながら近づいてくるボウズ頭の少年。
どうやらリーダーらしく、身体が一際大きい。

「お、おねがいです。ここにある山菜は全てあなたさまに差し上げます。どうかお見逃しを……・」

半ば諦めに近い悲しい声をあげて膝まずく少女。だがそんな願いが当然聞き入られるはずもない。
ボウズ頭の少年は、下品な笑い声をあげて少女の腕を掴もうとして……

それは起きた。


──シャッ!!


「いてぇっ!!」

顔を顰めて手を慌てて引っこめるボウズ頭。
かなり痛かったらしく、手の甲を擦ってフーフーしている。

彼の手を攻撃したのは、リアラ。
5人組を敵とみなして、爪でシャーとひっかいたのだ。

「なにしやがる、このアマっ!!」

まさか反撃されると思わなかった少年たちは、一斉に鞘から剣を抜いて構える。
彼らは一般的にイェーガーと呼ばれる新人類。
奴隷階級に攻撃され、ダメージを受けるなど屈辱以外何物でもない。場合によっては美少女であろうとも殺すことも躊躇はしない。
この山にいたのは奴隷階級の女を見つけ、遊びで犯すためである。彼らは定期的にこの山をうろついて獲物を探しているのだ。


「にゃあー、おまえら邪魔なので、どっかにいけニャ」

馬のいる場所を姉弟に聞こうと思ってたのに、邪魔されてリアラは不機嫌だ。
先程女を犯すと言われたことは頭にない。リアラの頭の中は馬の事でいっぱいである。それほど馬が大好きなのだ。

「こいつ、変な耳なんかつけて馬鹿なのか? 俺たちは新人類だぞ。そんな口を聞いてただで済むとでも思ってるのか?」

家からかぶっていた野球帽は馬を探すため脱いでいる。おかげでネコミミがバレた状態だ。
それを見て新人類の少年たちは、最初は呆れ、そして今は嘲笑っている。
だけどリアラはそんなことなど気にはしない。しっしっと手でジェスチャーして追い払おうとする。
少年たちはみるみるうちに頭に血を上らせ、顔を真っ赤にしてリアラに斬りかかってきた。

「にゃあっ!!」

ガキン!ガキン!キーン!!

リアラの持つオニオンスピアが少年たちの上段斬りを容易く弾いてぶざまに体勢を崩させる。

「き、きさま!」

思わぬ反撃に顔を真っ赤にさせ、少年たちは屈辱に身を震わせる。
たったひとりのリアラに5人がかりで軽くあしらわれたことが、プライドの高いイェーガーを激しく刺激したのだ。
彼らは体勢を立て直すと、ゆっくりと半円に広がり、リアラに対峙する。

元より戦闘の技量が高いと敬意を持たれるのが新人類の社会である。
屈辱は受けたが、もしかしたらこの目の前の槍を持った女は、自分たちと同じ新人類ではないかと思ったのだ。
そうでなければ自分たちがこんなに子ども扱いされることはない。いや、きっとそうだろう。そうに違いない。
イェーガーは、そう自分に納得させて油断を捨てたのだ。

「おねえちゃん怖いよぉ……」
「じっとしてなさい。きっとこの人が私たちを助けてくれるわ」

つぎはぎだらけの服を着た姉が、弟を抱き寄せリアラの背後で固唾を呑む。
自分たちの足では逃げ切れないだろう。このネコミミを生やした少女が誰なのかは分からないが、自分たちの敵ではないことが分かる。
先程この少年たちをあしらったことといい、この少女ならば自分たちを助けてくれると直観的に信じたのだ。

あったばかりの少女だというのに、信頼溢れる瞳を向ける姉弟。この少女の傍にいれば、なぜか安心できる。
まるで家で飼っている猫の『みーちゃん』を思い起こさせたのだ。



(みーちゃんが人間になって私たちを助けに来てくれたんだわ!)

槍を構え、耳をピン!と立てた美しいネコミミの少女。
心の中で頑張れと声援を送る。

「このメス豚が!! いやメス猫かっ! どっちでもいいから死ねっ!!」

右にいたイェーガー2人が襲い掛かってきた。
リアラはそちらに視線をやると、機先を制するように素早く動く。

タンタンタンッ───!

ネコミミ族らしく、しなやかなステップを踏みながら一気に距離を詰める。その独特の動きにイェーガーはついてこれず、
あっという間に2人は槍で突き殺されバタッ!と倒れる。

「カズマッ! タナカッ!」

驚くボウズ頭のイェーガー。まさかここまで強いと思ってもいなかったからだ。
戦闘に長けた新人類だからわかる。このまま戦っても勝ち目はない。ここは退くべきだと。

「ちっ……。おぼえてろよ! てめーの面は憶えたからな!」

ボウズ頭の少年が敵意を剥き出しのまま、仲間の少年2人に引き上げの合図を出してザザザ!と後退し、森の奥へ撤退しようとする。


普通ならそのまま逃げれるだろう。
漫画やアニメなら悪役が捨て台詞を吐いて逃げていくのは言わばお約束だからだ。

だが、残念なことに相手はネコミミ族のリアラ。
そう、ネコミミ族のリアラなのである。

本来猫というのは動くものに非常に興味を示し、ちょっかいを出す。
それはネコミミ族のリアラにも同様で、一度興味を示し遊んでしまったから止まらない。
自分の後ろで事の成り行きを見守っている姉弟を残し、一気に彼らを追跡して止めを刺しに行く。

「うわあああああああっ! 来るんじゃねえ! 空気を読みやがれ!!」

姉弟の視界から外れた森の奥であがる悲痛な叫び声。
にゃああああ!!というリアラの声と共にどったんばったんと砂埃があがる。
そして暫くしたのち、音はやみ、森はいつもと変わらぬ静けさを取り戻した。

「み、みーちゃん?」

少女が呟くように森の奥を凝視する。
静かになったのにこちらに顔を見せないネコミミの少女。
みーちゃんではないのだが、少女はリアラの身を案じて心配そうにキョロキョロしながらその姿を探し求める。

そして待つこと数分。
森の奥からカサカサと音を立てて槍を持ったリアラが満足そうに出てきた。

「みーちゃん!!」

思わずそう叫んでリアラに駆け寄る姉弟。
目をうるうるさせて、そのままリアラに抱きつく。
もはや姉の中ではリアラはみーちゃんに昇華しかかってる。弟のほうもみーちゃんという名を聞いて
ハッ!としたようにリアラを見て驚きの表情を浮かべている。

「にゃ?」

リアラは首を傾げる。目の前の姉弟からは敵意を感じないが、なぜ自分をみーちゃんと呼ぶのか理解できないし、抱きついてくるのも不思議だ。
よほど怖かったのだろうかと思いつつ、リアラはゆっくりと姉を引きはがした。

「にゃー。大丈夫かにゃ?」
「大丈夫よ。みーちゃんのおかげで私たちは無事よ。本当にありがとう」

自分より少し低い少女がリアラの頭に手を伸ばし、ネコミミや頭を撫で感謝の意を示す。
リアラはそれをくすぐったそうに受け入れ、目を細めた。
年齢的には自分の方が上なのだが、甘やかされるのは大好きなのだ。

そして暫く頭や耳を撫でていた少女だったが、急に思い出したように言った。

「あっ、もうこんな時間。さぁ、みーちゃん家に帰りましょう」

「にゃ!?」

突然手を引かれて驚く。
リアラは咄嗟に手を引いて振りほどくと、抵抗の意を示してフーと唸る。
それを見た少女は夢から醒めたように目をパチクリさせて、すぐにリアラに向かって頭を下げた。

「ごめんなさい。私ったらあなたのことをみーちゃんと勘違いしてしまって……。そんなことあるはずないのに」

しょんぼりと少女は肩を落とす。それほどにリアラの存在はこの少女には強烈だったのだ。
先ほど触って確かめたネコミミは本物だった。このありえない猫人間がいるということから、彼女がリアラを自分の飼い猫と信じたのは無理はなかっただろう。
だからこそリアラを家に連れて帰ろうとしたのだが、自分の手を振り払ったことから、少女はリアラがみーちゃんではないと悟ったのだ。

「ふー、いいにゃ。それよりこの山に馬がいないにゃか?」
「馬……ですか?」
「そう、馬にゃ」

なぜ馬?と少女は疑問に思ったが、自分たちを助けてくれたこのネコミミ少女の恩に報いるべく一生懸命考える。
しかしこの島に馬などいることなど見たことも聞いたこともない。
隣で袖を掴んでる弟に視線をやるものの、弟も首を横に振って知らないとだけ一言いった。

「ごめんなさい。ちょっと分からないです。馬なんて見たことないですし……」
「そうにゃか……」

今度はリアラがネコミミをペタンと倒し、しょんぼりとする。
馬なんてすぐに見つかると思っていたぶん、ショックは大きい。

「あっ、でも待ってください。もしかしたら知ってる人がいるかもしれません。うちの街にいる物知りのボーンのおじいさんがいるんですけど、その人は島の事をよく知ってるんです!」
「ほんとかにゃ!?」

一転、耳がピンと起って聞き返したリアラ。
目をらんらんとさせ、言葉の続きを待つように少女に視線を送る。

「え、ええ。よかったらえっと……お名前は?」
「リアラにゃ!」
「リアラさん、もしよかったらウチの街に来ませんか? そしたらおじいさんを紹介できます」

リアラは一も二もなく頷くのだった。















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  1. 2013/07/26(金) 00:01:10|
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