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1 宇宙での生活

西暦3216年。7月。



海王星軌道上、宇宙開拓ステーション。<クリスタルリング管制室>

「葵上等兵、周辺宙域に異常はないか?」
「はい。異常ありません。キャプテン。」

地上とはまったく景色が違う、ここ宇宙ステーション<クリスタルリング>の管制室で、1人のサイドポニーの美少女が欠伸を噛み殺しながら答えた。

──栗本葵17歳。地球統合宇宙軍所属の上等兵である。
身長は160センチでバスト88の巨乳。真面目な印象を受ける青色のサイドポニーの美少女で、笑顔が可愛いことで有名だ。
彼女は、火星宇宙開発第3学校を今年卒業したのち、このクリスタルリングに4月に配属されたいわば新人であり、成績も優秀だったことから周辺の期待も高いエリートである。

「そうか、では速やかに引き継ぎを済ませてあがれ」
「了解しました。」

目の前の強化ガラスから見える幻想的な星の海を視界に入れながら、葵は敬礼を済ませてサッと椅子から立ち上がった。
先ほどの欠伸で分かるように彼女は深夜からお昼までの連続10時間勤務で非常に眠い。一刻も早くベッドに潜りたいのだ。

コツコツと履きなれないハイヒールを響かせて管制室から居住区への出口へ向かう葵。

本来ズボラな性格の彼女だが、仕事が終わるまでは気を抜かない。
気を抜いたところを見せれば叱責され自分への評価も下がる。周囲の期待の高いことを知っている彼女は、意外にそういうところを気にする今時の女の子だったのだ。


──プシュー

「うーん、やっと終わったぁ。」

管制室の自動ドアを出ると、葵は美しく艶のある青色の髪を軽く手櫛し、グラマーな身体を大きく伸びさせた。
ここが家であったならついでに欠伸のひとつもしていただろう。

以外に思われるかもしれないが、レーダーで宙域を監視するのは想像以上に大変な仕事である。
なにせ自分の見逃しでステーション全体を危険に晒すかもしれないからだ。
もちろん他にもレーダーを監視する人はいるし、ステーションにはバリアが張られているため、ある程度の衝撃や攻撃には耐えれるのだが、それでも危険は残る。
最近では、宇宙海賊の動きが活発になるなど、気が緩めれない出来事も多いからなおさらだ。

葵は閉じそうになる瞼を擦りながら銀色で統一された廊下を見渡し、誰もいないことを確かめると、身体をほぐすように手をブラブラと振った。
レーダーを石像のように固まりながら見続けていたのだから肩がこる。
葵は、部屋に帰ってストレッチをすることを決めると再び歩きはじめる。

引き継ぎと着替えを済ませるために更衣室へと……。



と、ここで葵の勤務する宇宙開拓ステーション『クリスタルリング』について説明しておこう。
このクリスタルリングは知っての通り、太陽系に属する最も遠い星、海王星の衛星軌道上にある。
形は、銀色をした指輪に似ていると言えば分りやすいだろうか。
直径数十キロにおよぶ巨大な銀色のリングには、様々な場所から宇宙船が補給と一時的な休息を求めてやってくる。
旅をするのに欠かせない中継ステーションの役割を担っている。

数百年前に人類は、宇宙に生活圏を求め、様々な星に入植してきた。
最初は月、そして次に火星へと──。

恒星を除く太陽系全惑星に入植することを目標に掲げた人類だが、西暦3216年になっても未だそれを成し遂げていない。星によっては、あまりに環境が厳しすぎるので当然である。
しかし人は取りつかれたようにこれを悲願に掲げ、未だにもがいている。これが達せれば、どんな環境の星でも人類が根をおろせると信じきっているからだ。



このクリスタルリングも、当初は海王星に入植するための前線基地として作られたが、
結果的には海王星の厳しい環境の前に、ただの中継ステーションとしての役割しか果たせないでいる。

いずれは本格的に開拓ステーションとしての役目を果たすのだろうが、今はその時ではないようだ。


何はともあれ、人類は外に出た。

そう、まさに開拓の時代。
宇宙を探検する時代なのだ。





葵は更衣室で着替えを済ませると、食事をするために食堂へ向かう。
そして食堂の席に着き、ボーとしていたところで声をかけられた。

「葵上等兵。一緒にいいか?」
「はっ! どうぞ小田軍曹」

注文した料理が届くのを待っていた葵は、目の前に自分の上官の小田がやってきたのを見て思わず立ち上がった。
この小田軍曹は、クリスタルリングに配属されたときからお世話になっている厳しいながらも自分に目をかけてくれる素晴らしい上官で、
まだ23の青年でありながら軍曹までのぼりつめた憧れの人だ。

葵は、小田がテーブルの対面の席に座るのを見ると、自分もまた席に座り、すぐに店員を呼ぶ。

「小田軍曹、ご注文を」
「せっかちだな。葵上等兵は」

自分が席に着くなり店員を呼び注文を聞いた葵に、小田は苦笑いする。
彼女は生真面目すぎるのだ。食事のときくらい少し肩の力を抜いたほうがいいと思うのだが、彼女は聞き入れないだろう。
それほど真面目なのだ。

もっとも葵は人の目のないところでは、肩の力を抜きまくっているのだが、それを小田は知らない。
知っていたらこんなこと思いもしないだろう。

「葵上等兵。仕事に慣れたか?」
「はい、軍曹のご指導のおかげで今のところは順調です」

注文を終えた小田が、一足先に届いたカレーを口に運んでいる葵に訊ねると、
葵は手を止め、背筋をシャンと伸ばして答えた。

「そうか。だが、肩に力を入れすぎるなよ。仕事とオフはきちんと使い分けるんだ」
「はっ! 了解しました」

無駄だと思いつつ肩の力を抜くように言った小田だったが、本当に分かっているのか葵はテンプレ通りの返事をして食事に戻った。

それを見ながら、小田は内心で軽く溜息をつき話題をかえる。

「そういえば葵上等兵知っているか、恒星アンタレス付近で調査船団が知的生命体と接触したという噂を」
「……いえ」

堅苦しい雰囲気を崩すため、今ステーションで噂になっている話をした小田。
だが、あまり効果はないようだ。葵はその話を真剣に聞いている。

そもそも人類はまだ、公式には知的生命体と遭遇していないことになっている。
この広大な宇宙。人類という知的な存在があるのだから他にいてもまったく不思議ではないのだが、
地球統合宇宙軍は、マニュアルでもあるかのようにその存在を否定し続けている。

真面目な葵なら公式の見解を信じて一笑に付し、雰囲気が和やかになると思ったのだが、小田の目論みは見事に外れた。

「……葵上等兵は、知的生命体の存在を信じているのか?」
「いえ、私は信じていません。ですが小田軍曹がそう言われたということは、その可能性があると信じています」
「そうか。葵上等兵らしい答えだな」

溜息をつくどころか内心呆れながら、小田は注文した煮魚の料理に箸をつけた。
それ以後は、互いに仕事の話に終始し、食事を終え別れるのだった。






午後7時。
自室で仮眠をとった私こと葵は、ベッドに寝転びながら大きく溜息をついていた。


「ここって、気が休まる暇がないのよね。就職先まちがえたかなぁ」

人の目がないと分かった途端、私はだらけて愚痴をこぼす。
この宇宙軍に入ったのは、給料と待遇の良さに惹かれて入ったはずだった。
しかし現実には、宇宙ステーションで共同生活と言ってもいいほど、上司や同僚と寝食を共にし、
エリートと期待されている私は、仕事で手を抜く隙やプライバシーがほとんどない。
こんなことなら火星の軍事学校に入ったのは失敗だったと、過去の自分に言い聞かせたい気持ちでいっぱいになる。

私は顔を横に向けると、部屋の窓から見える星の海に視線をやる。
宇宙軍にはいって一番良かったのは、この星の海を毎日眺めれることだ。
しかしこうも毎日見つめていると、さすがに飽きもやってくる。
変わらぬ光景なのだから仕方ないだろう。


私は先ほどの軍曹が言っていた話を思い出す。

人類以外の知的生命体。

興味はあるがいったいどんな存在なのだろうか。
まったく想像がつかないが、一度くらいは会ってみたいと思う。
でも所詮は遠い場所での出来事。

アンタレスと言えばここから何百光年も離れたさそり座の恒星。
ここにいる限りは出会えることなどないだろう。


そんなことを考えていると、突然ピピピと機械音が鳴る。

私がベッドから上半身を起こすと、部屋の中央に置いてある3D映写装置に一人の若い女性が浮かび上がった。

「葵、起きてる?」
「起きてるわ。陽菜」

私とそう言って会話を交わしたのは、同期の朝藤陽菜。
彼女は私と同じ17歳で階級はひとつ下の一等兵。
容姿はふんわりしたこげ茶のショートカットで誰が見ても可愛らしい顔立ちをしている。
出会ったのは入隊式で隣に立っていた為だ。
今では本音で語れる大事な親友である。

「良かった。ちょっと今出れない?」
「いいわよ。どこで会う?」
「じゃあ、いつもの喫茶店で」
「わかったわ」

私は陽菜と短い会話を終えると、身支度を整えドアの外を出る。
勤務外でも私服に着替えることはない。常に青を基調とした宇宙軍の制服だ。

私が喫茶店に着くと、店の奥から陽菜が軽く手を振って場所を知らせてくれた。

「いったいどうしたの。話って?」
「もう相変わらず葵はせっかちね。取りあえず何か注文しなさいよ」
「じゃあ、コーヒーで」

私が席に座ったのを見計らって水を持って来てくれたウエイトレスさんにホットコーヒーを注文し、
陽菜の顔に視線を送る。
すると陽菜はテーブルに肘を突きながら、私に顔を近づけてきた。

「ねぇ知ってる。今度地球から移民船団がこのステーションに来るんだって」
「えっ、それって」

私は少し驚く。
海王星は美しい青色の惑星なのだが、太陽から遠いため僅かな熱しか受け取れず、表面温度はマイナス220度ほどしかない。
何度もこのステーションから調査船が海王星に送りだされたが、内部はとてつもなく早い強風で、まだ移民なんてとんでもないレベルなのだ。

そこに移民船団が来るなんて。

私の訝しんだ顔を見て陽菜は慌ててそれを否定する。

「違う違う。船団の全部が来るんじゃなくて、その中の一隻が来るの」
「どうして?」
「そんなの私に分かるわけないよ。私も噂で聞いただけなんだから。でもその様子だと葵も何も知らないみたいだね。
葵なら何か知ってると思ったんだけどなー」

露骨にガッカリした表情をして陽菜が肩を落とすのを、私は溜息をつきながら言う。

「陽菜が私に何を期待しているのか分からないけど、私だってそんなに情報を持ってるわけじゃないわよ」
「でも葵は管制室勤務でしょ。治安課の私より情報持ってそうじゃない」
「あのね。私だって新米なのよ。普段はレーダーを監視してるだけなんだから、情報なんてまわってこないわよ」
「ぶー」

陽菜がふてくされた様子で頬を膨らませ、テーブルに置いてあったコーヒーを飲み干した。

そして少し考えていたと思うと、話を切り替える。

「じゃあ、恒星アンタレス付近で……」
「調査船団が知的生命体と接触したという噂を知ってるか?でしょ」
「えっ、それは知ってるんだ」

以外だという風に陽菜が驚いた顔をし、私は苦笑いする。
先程小田軍曹に教えてもらわなければ、知らなかった話なんだけど。

「葵がこの手の話を知ってるなんて……。いったい誰に聞いたのよ。
こんな話をするなんて、私くらいしかいないでしょ」
「ひどい言われようね。それは事実かもしれないけど」

苦笑を深めながら、私は確かにこんな噂話を気軽に出来るのは、目の前の陽菜しかいないと納得していた。
彼女くらいなのだ。友人らしい友人としての付き合いをしているのは。

私は丁度ウエイトレスさんが持ってきたホットコーヒーを受け取り、興味津々でこちらを見ている陽菜に答えをあげる。

「小田軍曹よ。彼が教えてくれたの」
「あー小田軍曹かぁ。確かにあの人ならこんな話しそう」

陽菜はなるほどといった感じで頷き、言葉を続ける。

「あの人ってさ。実際どうなの? 仕事じゃ厳しいとこあるみたいだけど、普段ボーとしている感じみたいだし」
「普段ボーっとって。別にそんなことないと思うけど」

小田軍曹のオフの時を思い出し、私は首を捻る。
少なくとも私は彼がボーっとしたところを見たことがない。確かに少し抜けたようなところがあるが、普段はとてもきちんとしている。
陽菜は軍曹が気を抜いているところを見たことがあるのだろうか。

「そんなことあるよ。この前中央広場で星を見ながら、ぼんやりしてたし」
「そうなの? それが本当なら驚きね」
「嘘じゃないって」

憤慨する陽菜を宥めながら、今度は私から話題を変える。

「陽菜、あなたこんな噂話をしたくて私を呼び出したの?」
「あっ! そうだった。葵って明日オフだったよね」
「ええ、そうだけど」
「じゃあさ、明日私の買い物に付き合ってくれない。ちょっと欲しいものがあって」
「それは構わないけど、急にどうしたの。いつもならこんな話、電話で済ませるくせに」
「うーん、久しぶりに顔を見合わせて、こういう話をしたかったっていうか……」

えへへと笑う陽菜。
そういえばお互い部署が違うこともあってなかなか時間が会わず、久しぶりにこうやって顔を突き合わせてゆっくり話をした気がする。
私も照れくさそうに笑う彼女を見て、自然と笑顔になった。



「じゃあ陽菜、明日10時に私の部屋で待ち合わせていい?」















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  1. 2013/09/12(木) 00:00:01|
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