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16話 お泊り会2

「その前にみんな着替えましょうか。汚れたら困るし」
「そうね。その方がいいかも」

千雪さんが着替えを促し、色葉も同意する。
このままだと男が出した精液が花梨の服だけでなく、他の人の服にも掛かってしまう恐れがある。
男女が別々の部屋に入って着替えを始める。

俺はもうやめさせようとか考えていない。
一度出してしまったのだ。
ここで反対したら滑稽だろう。

俺は仲山を睨む元気もなく、Tシャツにトランクス姿に着替えると、人生ゲームの置いてある部屋に戻る。
すると女性陣は、なんと白いTシャツにパンツ一枚というほぼ下着に近い恰好で出てきた。

「………」

言葉が出ない。
いくらエロイベントがあるといっても、この恰好はどうなんだ。
人のことを言えないが、羞恥心がないのか。
激しく下半身が反応するのを感じながら、視線は女の子の胸や下半身に釘付けになる。
ブラも透けてるし、身体のラインもはっきり出ている。かなりエロイ。

(色葉の奴は着やせするタイプだな……。おっぱいも大きいしグラマーだ)

視線に気づいた色葉が顔を赤らめ、こちらを無言で睨んでくるが、俺は目を離せない。
それほど刺激的だ。
やっぱり俺は、色葉が一番気になっているらしい。

「さあ、次の人、まわして」

俺と色葉の視線が交差するなか、仕切っている千雪さんが言う。
すると、次は仲山が名乗りをあげてまわした。

シャー!

ルーレットがまわる。

そしてゆっくりと止まった目は5だった。

『指名した相手に5分間フェラさせる』

俺は仲山をに視線を送る。
こうなっては仕方がない。いったいこいつは誰を選ぶんだ。
というか、小心者のこいつが女の子を指名するなんて勇気を出せるのか?

みんなの注目を浴びる中、仲山は忙しなく周囲に視線を送る。
そして意を決したように口を開いた。

「じゃあ、色葉さんで……」

──なんだとっ、こいつ!!
よりによって色葉を選びやがった。
俺は以前言ったはずだ。色葉や美羽ちゃんは、巻き込まれているだけの可能性が高いって。

選ぶならこのえっちなイベントを推進している千雪さんや花梨だろうがっ!

俺の目が鋭くなったのをチラリと確認した仲山は、卑屈そうに身体を縮こませる。
だけど訂正はしない。そのままだ。

「じゃあ、色葉ちゃん。仲山くんのおちんちんを舐めてあげて」
「……わかったわ」

色葉が正座のまま縮こまった仲山の手を取り立ち上がらせると、なぜか隣の部屋の襖を開けてそちらへ連れて行こうとする。
俺はそれを訝しんで、声をかけた。

「おい、どこに行くんだ?」
「……ここじゃ、見られるから嫌なのよ」

少し潤んだ瞳で色葉は俺に視線を送る。
俺はそれを見ると、何も言えなくなってしまった。
誰に見られたくないか理解してしまったからだ。

──そうか、色葉は俺に恋してるんだった。

あの帰り道でキスした場面が脳内で再生されて、なんとも言えない気持ちになる。
キスした意味は添い遂げるということ。
彼女からしたら添い遂げるかもしれない相手に見られるのは耐えられないんだろう。

白いブリーフ越しに、勃起している仲山のちんぽが視界に入ると、激しく胸が疼く。
くそっ……これじゃあ、気になってるどこじゃなくて、俺も色葉が好きってことじゃないか。
俺は歯噛みしめながら、拳を握りしめる。

色葉が仲山を連れて隣の部屋の襖を閉めると、花梨が襖の傍に行って始まったら合図すると言う。
千雪さんは時計を見ながら、花梨の合図を待った。


そして、花梨が四つん這いで襖の隙間から向こうを覗きながら暫く待ったあと、右手を軽くあげた。

「OK! 始まったよ」

俺は襖を見ることも嫌で下を向く。

ちくしょう。どうしてこんなことに……。
色葉のことが強く意識され、胸がもやもやする。
聞きたくないのにどうしても意識が耳に集中し、襖の向こうの音を拾おうとしてしまう。

花梨が隙間から中を覗き「色葉ちゃんすごい。あんなにほっぺたをへこませちゃって……」というのを
目を瞑ってやりすごそうとする。
まさに苦痛の時間だ。

ぺちゃっ、ちゅばっ、ちゅぶ、ちゅぽ、ちゅぱ、ちゅるっ、ぐぷっ、じゅぽっ!

襖が仕舞ってても小さな淫音が聞こえてきてイライラする。
こんな気持ちになるなら、場の空気が重くなってもいいから反対すべきだった。
俺は馬鹿だ。
色葉のことを思うなら、何があろうとも反対すべきだった。

5分が数時間のように感じられて、胡坐をかいた足が貧乏ゆすりをする。
そしてようやく千雪さんは、5分過ぎたことを告げ終了宣言を出した。

「終わったよ~」
花梨が襖を開ける。
するとフェラの方も終わってたようで、すでに色葉は仲山から離れている。
だが、仲山の硬度を保ったままのちんぽの先っちょに白い液体が見えて、俺は息が詰まる。
これは仲山が色葉のフェラで射精した証だ。色葉を凝視すると、特に汚れた様子はない。

(口の中に出したのか……)

色葉と仲山がそろって向こうの部屋から戻ってくるのを見て、呆然とする。
楽しんだせいなのか、戻ってくる途中の仲山の口元が、少しにやけたように歪んだのを見て頭に血が昇り、
俺は思わず腰を浮かし、仲山に殴り掛かろうかと考えてしまう。だが、そうしたらなぜ止めなかったと誰かから突っ込まれるだろう。
そうでなくても俺は花梨にフェラさせて射精してしまったのだ。仲山を責めることなんて出来やしない。

俺は無言のままふたりが席に座るのを待つ。
その間、色葉と目を合わせることができなかった。


「さぁ次は美羽の番よ。まわして」
「はい」

美羽ちゃんが緊張した様子でルーレットをまわす。
すると美羽ちゃんは6を出した。

「6はえっと……」

花梨がマスを凝視する。

「指名した相手と69ね。終了はどっちかがイクまで」

千雪さんが、言葉を引き継ぐように美羽ちゃんを見ながら言う。
美羽ちゃんは、少し迷ったような態度を見せ、そして恥ずかしそうに俺を指名した。

俺は安堵の息を軽く吐き、どうしようか考える。
このまま俺たちも隣の部屋でやれば、なんとか誤魔化せて回避できるかもしれない。
こうなっては美羽ちゃんだけでもなんとか守るべきだ。とても快楽に溺れる気分じゃない。

俺は立ち上がると、緊張したような様子を見せる美羽ちゃんを連れて、先ほどの部屋に行こうとする。
だけどその足を千雪さんが止めた。

「ごめんなさい。畳だと汚れるかもしれないからこっちの部屋でやってくれる?」

千雪さんが別の襖を開けて、俺と美羽ちゃんを誘導する。
すると、そこは8畳ほどの部屋で、布団が6枚並べられていた。



「………」

恐らく机をかたずけるのが面倒だから予めここに布団を敷いておいたのは分かる。
だけどこの数だと男も一緒の部屋に寝るってことだ。それでいいのか?
いや、千雪さんは仲良くならないといけないと言ってるのだからこれでいいのかもしれないか。

俺は背中にいくつもの視線が突き刺さるのを意識しつつ、美羽ちゃんと一緒に部屋に入って襖を閉める。
そしてそのまま一番奥の布団まで行って、美羽ちゃんの耳に顔を寄せると、小さな声で話しかけた。

「美羽ちゃん、えっちなイベントをやめて、ここでしたふりをしよう。布団の陰でやれば、部屋も暗いからばれないよ」
「えっ……」

美羽ちゃんは驚く。
俺が何を言ってるかよく分からないようだ。

「美羽ちゃんこういうことしたことないでしょ。だから無理することないよ。口裏さえ合わせれば大丈夫」
「あっ、そういうことですか」

美羽ちゃんが理解したかのように頷く。
でもすぐに俺の提案に突っ込んだ。

「浩介さんの提案は嬉しいんですけど、人生ゲームはえっちなイベントばかりです。ここで免れてもすぐに他のイベントに当たっちゃいます」
「ああ、それもそうか」

今逃れてもすぐにルーレットを回さないといけない。
こんな簡単なことも分からなかった。俺は相当焦ってるな。
俺は目を瞑って思考する。

こうなったら仲山を連れてトイレに行くふりをして脅すか。
そしたらあいつも美羽ちゃんや色葉をこの部屋に連れてきてする振りをするだろう。
それにあいつを一発殴りたい。

俺は隣の部屋から覗かれてないか気にしながら、静かに言った。

「それなら大丈夫。俺に考えがあるから」






5分後──。
俺と美羽ちゃんは、奥の布団で69をした振りをして部屋に戻ってきた。
そしてそのままトイレに行きたいと場所を聞く。

俺はトイレの場所を聞くと、今思いついたという顔をして仲山に声をかけた。

「仲山も一応来るか? ゲーム長くなりそうだし、トイレの場所確認しといたほうがいいだろ」
「えっ、えっとはい」

自然に誘う。こいつも広い神社で1人で行くより、誰かと確認して行った方がいいと思ったようだ。
とりあえずトイレに行ったらこいつの腹にワンパンかます。
俺は固く心に決め、仲山と連れ立って部屋を出た。


・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・


「……てめー、なんで色葉を指名したんだよ」
「えっ? そ、それは、す、好きな相手を指名していいって千雪さんが……」

部屋を出て廊下をだいぶ歩いたところで、
俺はドスを利かせた声で仲山に問い質した。

「馬鹿かおまえは。色葉と美羽ちゃんは、巻き込まれてる可能性が高いって調査のとき分かってただろ。
選ぶならこのゲームをやりたがってる千雪さんか花梨だろうが」

「あっ! そうでした!」

あまりに間抜けな声でそうでしたという仲山に、俺の脳内の怒りパラメーターが一瞬で振り切れ、
思わず手が出る。こいつは本当に馬鹿だ! マジでイラつく!

──ドスッ!

「うぐっ!?」

俺の拳が仲山の腹にめり込む。
仲山は呻きながら、くの字に身体を折り曲げて、ヨロヨロよろめく。

俺は怒りの炎が収まらず、もう一発殴ろうとしたところで、仲山が蹲ってしまったので気が一瞬削がれる。

「ごめんなさい! ほんとうに許してくださいっ!」

涙声混じりに必死に謝る仲山。
それはとても卑屈で、プライドの欠片もないようだ。
俺の目から見ても、卑屈で暗くて臆病で、とても男としての魅力がひとつも見当たらない。
植木鉢に隠れるゴミ虫のような奴だ。


(くそっ、なんでこんな奴と色葉が……)

俺は握りしめた拳の行き場をなくして、情けなくなってしまう。



──終わってしまったのは仕方がない。
俺の暴力に理不尽さが混じってるのも分かってる。
俺はこいつに無理やり協力させているだけなのだ。

心の中で燃えカスがくすぶり続けるなか、俺は仲山を見下ろして改めて脅す。

「とにかく絶対回避できない場合をのぞいて、千雪さんか花梨を選べよ。
次やったらこんなもんじゃすまないからな」
「は、はい……」

俺はそれだけ言うと、仲山に背を向けトイレに向かった。

もちろんそのあとを仲山はついてこなかった。


俺はしたくもないトイレに行って場所を確かめたあと、
気分を落ち着けてからみんなのいる部屋に戻った。
みんなは俺が来るまで雑談していたようで、笑い声が混じっている。

「すまん、待たせた」

俺は横目で仲山が戻ってきているのを確かめテーブルの前に座り込む。
そしてゲーム再開と思いきや、花梨が手をあげた。

「ねぇ、千雪さん。これじゃあ、全然進まないよ。もういっそのこと、みんなでえっちなことしない? どうせマスには似たようなことしか書いてないんだし」
「そうねぇ……」

いよいよ本音が出たなと感じる。
ここで反対しておかないとそのままなし崩しにされる。

「いや、そこはゲームなんだし、罰ゲームとしてならいいですけど……」
「なぁ~に? 芝山くんはえっちなことしたくないの?」
「……いや、したいですけど、でも色葉や美羽ちゃんは嫌がると思いますし」

もっともらしい理由をつけて、俺は美羽ちゃんや色葉に視線を送る。
ふたりは教室でもえっちな罰ゲームに乗り気じゃなかったし、ただのえっちには反対するだろう。というか事情を知らないのはこのふたりだし。
と、思ったのだが……、予想外にも色葉は花梨の意見に賛成した。

「別にいいわよ。確かにゲームが全然進まないし、どうせやることは一緒なんだし」

チラリと俺を見ながら言う。
これは俺と出来るならいいってことか? 誤解するぞ?

……とはいえ無条件に喜べない。ゲームに関係なきゃいいけど、これはゲームに関係しているのだ。
避けられないのなら色葉と俺がフェラなりクンニするなりすればいいが、美羽ちゃんはそういうわけにはいかない。

時間が掛かるなら好都合。
なるべく引き伸ばして色葉や美羽ちゃんの番を遅らせ、ゲームが終わるのを待てばいいのだ。
故に俺はゲームの続行を主張する。

「美羽ちゃんは嫌だよね。罰ゲームでもないえっちに?」

さっき隣の部屋で美羽ちゃんにそれとなく回避するよう言ったことを思い出す。
憶えていれば逃れようとするはずだ。
俺と美羽ちゃんの視線が交差し、無言で通じ合う。

美羽ちゃんは俺と同じように反対側にまわった。

「はい、浩介さんの言う通り、罰ゲーム以外なら私も反対です」

毅然という。
よし、これで美羽ちゃんはこっち側に立った。

あとは仲山が反対すれば、数の上では互角だ。















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  1. 2013/12/30(月) 00:00:01|
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