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25話 事件の詳細

土曜日──。
明日のピクニックの準備を済ませ、俺は図書館に行く用意をする。
制服組の写真など忘れ物がないか確かめ、俺は10時にバス亭に向かう。
家族に車で送ってもらっても良かったが、生憎と11時から用事があるため、無理とのことだった。

バスに乗り窓際に座ると、窓の外の景色を眺める。
相変わらずの変わり映えのしない田園風景。
人っ子一人いない風景に俺は視線を前に向ける。

すると、前方に人影が見えてきた。

(あいつは……)

俺は凝視する。
こちらに気付いていないが、確かに前方の道をこちらに向かって歩いてくるのは仲山だ。
いつものオドオドした様子はなく、誰もいないせいか堂々としている。
いったいどこに行くのか分からないが、バスがあっというまにすれ違って後ろに通り過ぎた。
俺はすれ違うと同時に後ろを振り返ったが、仲山はきづいてないせいなのか振り返りもしなかった。

俺はその堂々とした仲山の歩きに、なぜか一抹の不安を覚えるのだった。






俺は街の図書館に着くと、さっそくカウンターに向かい、前に約束した係員を探す。
すると、俺が見つけるより早く向こうが俺を見つけて声をかけてきた。

「こんにちは、この前の男の子よね?」
「はい、そうです」

俺は確かめてきた係員に頷く。
すると係員はちょっと待っててねと言うと、事件を知ってる人を呼びに行った。

そして待つこと数分。係員は少し腰の曲がった年老いた男の老人を連れて戻ってくる。
首からプレートをかけてることから、前に聞いた通りこの図書館の係員のようだ。
老人は俺の前に来ると、ジロジロと無遠慮に俺の顔に視線を送る。

「ワシに用だと言うのは君かね?」
「はい、事件の事について教えてください」
「……わかった。ついてきなさい」

俺は老人に促され、応接室に連れて行かれた。

応接室に入ると、俺は黒いソファーに座るよう視線で指示され、大人しく座る。
老人は俺の対面のソファーにゆっくり腰かけると、改めて俺の顔を見た。

「村の子か……?」

一瞬どう答えようか迷う。
こんなこと聞かれると思ってなかったからだ。
しかし、ここで嘘をついてヘソを曲げられたら困ると、正直に頷いた。

「……そうか」

老人は小さく呟くと、ゆっくりと一度目を閉じ、
思い出すようにして話しはじめた。

「何から話していいもんかの。高度成長期の時代、村から人が離れはじめ深刻な問題になり始めた年に、仲のいい子供が男4人、女1人おった。
その子らは幼い頃から何をするにもいつも一緒で、共に成長しスクスクと育っていった。
だが時の流れは残酷での、やがて子供らは恋を覚え、一人の女の子を奪い合いはじめたのじゃ。
それが……」

「芹沢彩羽(いろは)ですね」

俺が言葉を繋ぐ。

「そうじゃ。彩羽は優しい子での。4人の中に想い人がいたものの、他の3人に遠慮してなかなか想い人と結ばれなかった。
じゃが、最終的には5人のリーダー格であった想い人である笹井庄吉と結ばれ、それで終わるはずじゃった……」

やはり同じ読み方だったのかとショックを受けながらも、
ここからが本題だと俺は姿勢を少し正す。

「だが、それに横やりを入れてくる者がおった。それが村の長老連中じゃ。彼らは庄吉と彩羽の仲を引き裂こうとしてきたのじゃ」
「なぜでしょうか?」
「それは村の伝承のせいじゃ」
「伝承?」
「そう、伝承じゃ。村にはこんな言い伝えがある。
『男神と女神が交わるとき、村に繁栄が約束されん』
男神というのはお主も知っての通り、男性器を祭る芹沢神社を指し、女神と言うのは若いお主は知らんかもしれんが、今は廃墟となった女性器を祭る秋川神社を指すのじゃ」

「秋川……神社」

心臓がドクンとなり、少し緊張する。あのセクハラ教師秋川を思い出したからだ。
しかしそんな神社が村にあったなんて俺は知らなかったぞ。

「長老たちは秋川神社の跡取りの秋川遼と芹沢彩羽を結ばせ、衰退していく村に再びかつての繁栄を取り戻そうと画策し、
庄吉と共に彩羽に交際を迫った3人に命じて庄吉と彩羽を別れさせようとさせた」

恋は容易く友情を壊す。
村の長老たちの言葉は村では絶対。
例え、彩羽が庄吉を愛そうが秋川遼を嫌おうが、逆らうことは許されない。

3人は恋愛で拗れた感情もあり、庄吉や彩羽との友情より長老の命に従った。

「3人は彩羽を呼び出すと、庄吉と別れるよう迫った。だが彩羽はそれを拒むと、
言い争いで興奮状態であった3人の男たちに輪姦されてしまったのじゃ……」

そこで老人が言葉を閉じると、悲しそうに瞳を閉じる。
俺も言葉が出ない。俺も似たようなことをしただけあって胸に突き刺さるものがある。
そんな迷信のためにこんな結果になってしまったなんて……。

「……それで犯行を?」
「ああ、そうじゃ。事情を知った庄吉にみんな殺された。彩羽が殺されたのは、それを止めようとしたからじゃ」

俺は頷くと、大きく息を吐いて肩の力を抜く。

事情は分かった。確かに悲惨な出来事だ。
だが、これだけではなんか釈然としない。
俺はこの件と千雪さんのやってることが関係してると思ってたのだ。
今、やってる事と説明がつかない。色葉と彩羽の名前の読み方が同じというのも気になるし、それに何か意味があるのか。
他にも都会から転勤してきた秋川は今は廃墟となった神社の子孫なのか、気になることはいくらでもある。

俺は鞄から制服組の写真を取り出し、老人に差し出す。

「この事件を聞きにあなたに会いに来た女の子がいたそうですが、この中にいますか?」

老人は写真を受け取ると、一枚一枚に目を通して確かめる。
そして暫くしたのち、その中の一枚で声をあげた。

「この子じゃ、確かにこの子が来たぞ」

そうですかと言って俺は写真を受け取り確かめる。
するとやはりというか予想通り、千雪さんの姿が写ってあった。
俺は写真から視線を老人に戻すと口を開く。

「この少女は、芹沢千雪さんです。名前に聞き覚えは?」
「いや、名前からして芹沢神社の娘だと思うが、ワシはそれ以上知らぬ……」

老人は首を振る。
俺はそこで、先ほどから思っていたことを口にする。

「あなたは村の人ですよね?」

そう、俺はここまで詳しい話を老人から聞かされると思ってもいなかったのだ。
いくら隣村のことだと言っても、この街まで来るのにバスで1時間以上の結構な距離がある。
村の人間でもなければ長老の話など、そこまで生々しい話を知ってるとは思えない。
場合によっては俺はなんとかしてこの老人の口を封じなければならない。

だが老人は、再び首を横に振り寂しそうに言った。

「元、村の住人じゃな。もう村とは関わり合いがない。これを見れば納得するはずじゃ……」

そう言って老人は、首からぶら下げていた身分を証明する図書館の係員のカードを外し、俺に手渡した。

「……」

そこには『笹井吉次』と光沢の入った黒い文字で名前が記されていた。
この老人は加害者の笹井庄吉の親族だったのだ。




応接室に女係員が気を利かせてお茶を運んでくる。
テーブルに置かれたお茶は湯気をたて、老人は心を落ち着けるようにゆっくりとお茶を飲む。
きっとこの老人はあの事件で村に居辛くなり、街に出てきたのだろう。
村でどういう目で見られてきたのか想像に難くない。
多分被害者の家族もそうだ。だから電話帳に被害者の親族の名前が載っていなかったのだ。

俺はあまり思い出したくないであろう心境を察しながらも、質問を続ける。

「いろはという名前に何か意味があるのか知ってますか?」
「ああ、知っておる」
老人は頷く。

「どういう意味なんでしょうか?」
「いろはというのは、芹沢神社に祭られている神の名じゃよ」

ドクンドクンと心臓が高鳴っていく。

「では、秋川神社はなぜ潰れてしまったのでしょうか?」

少し声を震わしながらさらに尋ねる。

「秋川家の素行の悪さじゃ。あそこの男たちは代々女癖が悪くての。独り身の女だけでは飽き足らず村の人妻にも手を出し始め、とうとう妊娠させてしもうたのじゃ。
そしてそれが発覚すると、村の男たちの怒りを買い、神社を燃やされてしまったのじゃ。自業自得とも言えるがの」

俺の中で、ますます担任と秋川家の姿が被っていく。

「なら秋川家のその後は?」
「村を出て他に移ったと聞いている。どこまでかは知らんがな」

俺の中で色々繋がっていく。
村の長老たちの妄信と、伝承。
そして秋川の赴任といろは。

(すると千雪さんは長老の命令でああいうことを……?)

そこまで考えて違うと思いなおす。

長老の命令なら赴任してきた秋川と色葉をくっつけようとするだろう。
あの罰ゲームの説明がつかない。
そもそもあの秋川が秋川神社の子孫かどうかまだ断定できない。
まずは秋川が本物かどうか確かめないといけないだろう。

俺はこの笹井庄吉の親族、吉次さんに全てを話そうか悩む。
間違いなく力になってくれるだろうが、自分の悪行まで知られてしまうのが辛い。しかし、村の長老とか絡んでいるなら俺一人でなんとかするのは厳しい。

俺はテーブルに置いてあったお茶をゆっくりと飲みながら葛藤し、勇気を振り絞る。

「実は亜月村に秋川って教師が赴任してきたんですが、秋川神社の子孫かどうかわかりますか?」


俺は秘密を打ち明け始めた。









・・・・・・・・・・・・・・・


土曜日の昼間。普段から元気のいい私こと花梨は家に閉じこもることは良しとせず、家の外に出て村を散歩していた。
明日のピクニックに想いを馳せながら田んぼの畦道を鼻歌混じりに歩いていると、バスなどが通る村の道路を歩いている仲山くんを見つけた。

「おーい! 仲山くん!!」

丁度暇だったこともあり、わたしは手を大きく振り仲山くんを呼び止めようとする。
が、距離が離れていた為、仲山くんは気づかず道路に面した大きな屋敷の中に入ってしまった。

(あの屋敷って……)

クラスメイトの家を全て把握している私は興味を引かれ、
畦道からガードレールを乗り越え、屋敷の表札に視線を送る。

「秋川……」

先生の家ってここだったのかと屋敷を見上げる。
自分の家と比べてもなかなか立派だ。秋川先生はここに住んでいたのかと驚く。
まさか新任教師がこんな立派な家を借りれるとは思わなかった。

(そう言えば千雪ちゃん、秋川先生には気を付けてって言ってたよね……)

わたしは仲山くんと秋川先生という接点のなさそうな2人に怪しいものを感じ、
千雪ちゃんに連絡しようと家に向かって歩き出した。

そして数分も経たないうちに今度は対面から色葉ちゃんと美羽ちゃんがこちらに向かって歩いて来るのに気づき声をかける。

「2人ともどっかおでかけ?」
「う、うん」

色葉ちゃんが気まずそうに返事をする。
その様子は挙動不審で、美羽ちゃんも顔が少し強張っている。

「どこに行くの?」
「えっ、えっと……それは……」
「買い物です!」

色葉ちゃんが言い淀み、美羽ちゃんが慌てて答える。
怪しいなんてもんじゃない。2人は何かを隠している。

「そうなんだ。じゃあ、またね」
「うん、ばいばい」

わたしはにこやかに笑みを浮かべると、2人を見送った。
この先にスーパーなど買い物できる場所はない。バスがこの道路を通るので街に行くということも考えられるが、
バスが来るのは1時間後。村に長い事住んでいる2人がバスの時間を間違えるなんてありえない。
間違いなく嘘をついたと確信する。

私は急いで家に戻ると、千雪ちゃんに電話をかけ事情を説明する。

「わかったわ、すぐ行く。バス停沿いの公衆電話で合流しましょう」
「うん、わかった」

私は慌ててやってきた千雪ちゃんと合流すると、秋川先生の家の門の前に立った。

「……」
「どうしたの千雪ちゃん」

動こうとしない千雪ちゃんに私は首を傾げる。
彼女が秋川先生を警戒していたのは知っている。自分にも必要以上に仲良くするなと言ってきたからだ。
理由を聞いてもまだ確信が持てないからの一点張りで、教えてくれなかったのだから訳が分からない。

自分が協力している罰ゲームに何か関係があるのだろうか。
あの罰ゲームは、みんなを大人から守るためだと言って説得された。
あまりに千雪ちゃんの顔が真剣だったからOKしてしまったけど、どの大人が信用できないかまでは知らない。しつこく問い詰めても言葉を濁すので分からない。
自分もえっちなことに興味があったのだから別にいいのだが、大人たちを憎しみに似た感情で信用していない千雪ちゃんが気にかかる。
もしかしたら……と、思いたくない人物が頭に浮かびかけたが、それを掻き消す。

ほとんど初対面同然の男の子と自分の想像以上にえっちな事をしているのは、
自分でもそれが関係しているのかもしれないと自覚している。



そんなことを思っていると、千雪ちゃんが先生の家のインターホンを鳴らした。
















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  1. 2014/02/04(火) 00:01:50|
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