寮に帰ると晩御飯はカレーだった。
基本寮での食事は食堂でとることになっているので、僕は千早ちゃんと一緒に食堂に行く。
これでまりなちゃんも一緒だったら良かったんだけど、残念ながら寮が違うので無理だ。
寮自体、マンションのようにクラスごとにA棟B棟C棟と連なっているので行き来は簡単だけどやはり寮ごとの行動が求められるのだ。
きっとまりなちゃんも隼人と一緒に行動しているだろう。
千早ちゃんとお喋りしながらカレーを食べ終わると、自室に戻る。
部屋は2人部屋なので、千早ちゃんと一緒だ。
パジャマに着替え終わると、一緒に宿題をやる。
まだ授業初日なのに宿題なんてずるいよ。
「今頃、まりなちゃんたち何してるかな?」
「うーん、僕たちと一緒で宿題してるんじゃないかな」
絨毯に置かれた白い机で向かい合ってシャーペンを動かしながら、心あらずといった風な会話をする。
まりなちゃんは隣だった為か、隼人と同室になったらしい。
だから今日、親しそうに話していたのかもしれない。
「健太、この問題間違ってるよ」
「あっ、本当だ」
消しゴムで数式を消しながら、指摘された箇所をなおす。
千早ちゃんは頭がいいので大助かりだ。
宿題の量はそれほどないのですぐに終わりそう。
「宿題が終わったら向こうに行ってみる?」
「んーでも遅いしなぁ、門限もなかったっけ?」
「あ、そうか。確か9時が門限」
千早ちゃんがベッド傍の目覚まし時計に顔を傾ける。
「9時16分か。もう駄目だね」
「うん、今日はやめとこ」
こうして僕たちは雑談をしながら宿題を済ませた。
次の日、学校に行くと隼人やまりなちゃんはまだ学校に来ていなかった。
僕は千早ちゃんと時計を見ながら遅いねと話していると、隼人とまりなちゃんはHRギリギリに慌てたように教室に飛び込んでくる。
「やべぇ、遅刻するかと思った」
「ほんと。隼人のせいだからね」
「俺のせいかよ!」
漫才のようなやりとりをしながら隼人とまりなちゃんは、B組で待っていた僕たちに挨拶をする。
「おはよう、2人とも。遅かったね」
「ああ、健太おっす。ちょっとバタバタしてて遅くなった。まぁギリギリ間に合ったからセーフだな」
机に鞄を置きながら隼人が答える。
「慣れない寮生活だから仕方ないんじゃない。私もあんまり寝つけなかったし」
千早ちゃんが分かる分かるといった風に同意すると、
まりなちゃんが呆れたように首を横に振った。
「遅れたのはそんな理由じゃないよ。隼人が朝から……」
そこでHRも告げるチャイムが鳴る。
僕たちはそこで会話を中断すると、手を軽くあげて慌てて教室に戻る。
また後でB組に行こう。
昼休み──。
今日も一緒に昼食をとることになった。
なんか隼人を加えたこの4人組で行動することになりそう。
「まじか、トマト入ってるぜ。俺この赤いのが嫌いなんだよな……」
「えー美味しいのに」
隼人が弁当の中身に顔を顰め、まりなちゃんがそれに突っ込む。
「いや、まるで血みたいだろ。俺検査ばっかりされてたから見るのが嫌なんだよ」
「変なこと言わないでよ。ご飯なのに」
やっぱり同じクラスで隣の席だったのか、2人の新密度が増してる気がする。
そういえば寮でも同じ部屋だっけ。
「じゃあ、このトマト食べてくれ。いくらでもやるから」
「もぅ、しょうがないわね」
隼人の弁当に箸を突っ込みまりなちゃんはトマトを食べた。
やっぱり仲がよくなってる。
そしてそれを見ていた千早ちゃんもそう思ったらしい。そこに話題を持ってくる。
「ふたりはだいぶ仲良くなったんだね」
「そっかな~」
まりなちゃんが隼人の顔をチラリと見て首を傾げる。
「うん、だいぶ仲良くなったよ。昨日よりもずっと」
「まぁお互い人見知りしないからな。だからそう見えるかもな」
隼人が箸をまりなちゃんのお弁当に伸ばすと、まりなちゃんはサッとお弁当を遠ざけアッカンベーをした。
そして何事もなかったようにまりなちゃんは話をかえる。
「ねぇ今日から部活だけど、終わったら一緒に帰る?」
「うーん、それは無理じゃないかな。終わる時間だいぶ違うかもだし」
「そうだな。無理だろうな」
僕と隼人があっさり否定する。
「そっか。じゃあ、あんな人たちはほっといて千早ちゃん、一緒に帰ろう」
「えっ? うん。いいけど」
否定的な僕と隼人に不満だったのか、まりなちゃんは頬を軽く膨らませ千早ちゃんを誘う。
千早ちゃんは勢いに押されたように頷いた。
僕と隼人は苦笑すると、まりなちゃんを宥めにはいる。
「いや、僕たちも一緒に帰りたいんだよ。だけど部活初日だし、終わる時間の目安がきかないからね。
早く部活が終わった人とかが1時間とか学校で待ってられないでしょ?」
「う~ん、それはそうだけど……」
まりなちゃんの勢いが弱まる。
「だからさ、とりあえずしばらくは様子を見て、一緒に帰れそうなら一緒に帰ろう。
それでいいでしょ?」
「うん……」
しぶしぶまりなちゃんは頷く。
僕たちはいつも一緒だったから、ちょっとこういうことに慣れてないんだろうね。
実際、僕も一人で帰ることになったら寂しく思うだろう。
場の空気が少し変わったところで、千早ちゃんがパンと手を叩いた。
「今日帰ったらみんなで宿題しながら部活の報告会しない? そしたら色々わかるだろうし」
「おっ、それはいい考えだな」
隼人が賛成する。
「じゅあ、どこで集まる?」
気を取り直したまりなちゃんが言う。
「そうだな。僕と千早ちゃんの部屋でいいんじゃない。晩御飯を食べた後で。別にいいよね、千早ちゃん」
「うん」
千早ちゃんが元気よく頷くと、僕たちはまたワイワイとお喋りを始めた。
帰ったらすぐに部屋の掃除をしないといけないかも。
学校が終わった。
僕は日直の子と合体しておちんぽみるくを出したあと、初めての部活を緊張気味に終え寮に帰る。
まだ千早ちゃんは帰ってきてないみたいだ。鞄がない。
僕は学習机に鞄を置くと、さっそくベッドに脱ぎ散らかしたパジャマを畳み始める。
「ええっと、あと掃除機もかけておいたほうがいいかな」
まだこの寮に入って三日目なので掃除機をかけていない。
千早ちゃんは整頓がちゃんとできてるので綺麗だ。
掃除をするとしたら僕の机やベッドまわりだろう。
僕は物置から掃除機を出すと、床の掃除を始める。
家で何度か手伝いでかけたことあるけど、自分の意志でかけるのは初めてだ。
聞きなれた音を耳に入れながら、丁寧にかけていく。
勿論、千早ちゃんのところも含めて部屋全体だ。
そして掃除機をかけ終わり、テーブルも濡れたタオルで拭き終ると掃除を終えた。
「これでよしと」
掃除機をなおすと僕は綺麗になった部屋を見て満足げに頷く。
これでまりなちゃんと隼人が来ても汚いと言われることはないだろう。
そして少し休もうと、ベッドに腰掛けたときに丁度千早ちゃんが帰って来た。
「ただいま」
「おかえりー」
綺麗になった部屋を見て千早ちゃんは驚く。
「これ健太がやったの?」
「うん、そうだよ」
「すごいね。すごく綺麗になったよ」
僕は得意げに胸を張る。
「健太にだけ掃除させてごめんね」
「いやいいよ。僕が好きでやったことだし」
千早ちゃんにそう言うと、僕はベッドから立ち上がる。
「ご飯食べに行かない。もうそろそろだし」
「うん、着替えたらすぐ行く。先に行ってて」
「わかった。席をとっておくね」
こうして僕は部屋を出て、千早ちゃんの席を取りに行った。
夜7時半。
僕たちがご飯を食べ終え寛いでいると、ノックがしてまりなちゃんたちがやってきた。
当たり前だが2人ともラフな格好で、鞄を持って入ってくる。多分あの鞄の中に宿題が入ってるんだろう。嫌なことを思いだした。
僕たち4人は軽い挨拶を済ませると、絨毯に敷かれたテーブルを中心にして座る。
そして教科書やノートを出しながら、話を始める。
「今日の部活どうだった?」
「んー、まだちょっと雰囲気はわかんなかった。緊張してたし」
さっそくまりなちゃんが僕に話を振ってくる。
が、僕はそれにはっきり答えられない。
初日は練習の見学みたいな感じだったからだ。
「じゃあ、千早ちゃんは?」
今度は千早ちゃんに話を振る。
「私は先輩がたてたお茶を飲んで和菓子を食べたかな。
緊張したけど先輩は優しかったよ」
「へーそうなんだ」
みんなが興味深そうに千早ちゃんを見る。
「そういうまりなはどうなんだ。チアガール部に入りたかったんだろ?」
「うん。私の場合はちょっと練習したかな。柔軟体操をして音楽をかけて踊るって感じ」
「ふーん。そっちは初日から結構練習したんだ」
隼人は机に肘をつく。
「隼人は?」
「俺か? 俺は先輩相手におちんぽみるくを出してたぜ。おかげで部活にならなかったけどな」
「えっ、部活もせずに?」
みんなが驚く。
まさか先輩相手に出すなんて大胆だ。
隼人から頼んだのだろうか。初日から頼むなんて僕にはとてもできそうにない。
そんなことを想像したら、なにかムラムラしておちんちんが大きくなってくる。
だから僕は中〇生になって初めてまりなちゃんに頼んだ。
「ねぇ、まりなちゃんトイレ行ったあと、おちんぽみるく出させてくれない。すぐ済ませるから」
「えー、こんな時にいうの。仕方ないわね。早く済ませてね」
「うん」
僕は慌ててトイレに行く。おちんちんがおっきくなったから仕方がない。隼人が変なこと言うからしょうがないよ。
トイレから出ると手を洗う。そして戻ってくると驚いた。
隼人がまりなちゃんのパンツを脱がし腰を振っていた。まりなちゃんが仰向けに寝転び、隼人がまりなちゃんの両足を持ってカクカク腰を動かしている。
まりなちゃんの表情はもうって言う感じだが特に嫌がってない。両手を自分の胸の前で組み、祈りを捧げるようなポーズをしている。
「あっ……」
僕は思わず声に出し、隼人は僕に気付く。
そして軽い感じで言った。
「まりなのおまんこ先に借りてるぜ。したいなら千早とやってくれ」
「う、うん……」
何か釈然としないものを感じながら、返事をしたもののまりなちゃんたちをみる。
隼人もおちんちんがあるのだからおちんぽみるくを出したいのだろうけど、先にまりなちゃんに言ってたのは僕のはずだ。それを横取りするなんて。
僕の顔が曇ったのが分かったのか、千早ちゃんが慌てて僕を誘う。
「ほら、健太もおちんちん出して」
「………」
力強い腰の振りでまりなちゃんの芯を貫いている隼人。
僕は納得できないまま千早ちゃんと合体し、結局まりなちゃんと合体することはなかった。
◇
丁度同時刻。
学校の校長室の机の前で、A組の担任塩田が目の前に座る校長に今日一日の報告を口頭にて伝えていた。
「そうですか、健太くんは無事クラスに馴染めましたか。それは良かったですね」
「はい、ですが校長、なぜ健太くんとまりなちゃんのクラスを別にしたのでしょうか? 私はそれがずっと疑問で。あんなに仲が良かったのに」
小○校から健太と共に中○にやってきたプロジェクトの一員になった担任の塩田が言う。
校長はそれをフッと笑うと、机の上で手を組み、その疑問に答えた。
「仲がいいからですよ。あれだけ仲がいいのに妊娠はしなかったということは、相性の問題があるかもしれません。
これが単なる偶然なのか、それとも本当に相性が悪いのかはわかりませんが、一度引き離してみるのも手だと考えたのです。
まぁ千早さんもいるので健太くんも寂しくはないでしょう」
なるほどと塩田は頷く。確かに数年間彼の担任をしてきたが、彼らはいつも一緒にいた。
妊娠しなかったのは不思議ではある。
だとすると、まりなちゃんは隣のクラスの隼人という少年の相手をすることになるのだが。
「……そろそろあの隼人という少年は何者か教えてもらえないでしょうか? 私たち教職員はまだ彼の素性を知りません。
まだ他に天然ものの男がいたということでしょうか?」
「そうですね……。まぁ塩田先生なら教えてもいいでしょう。しかしこれから話すことは秘密厳守でお願いしますよ」
「はい」
塩田が少し緊張した面持ちで返事をすると、校長は言葉を噛みしめるようにゆっくりと口を動かし始めた。
「彼は科学の結晶が生み出した人工授精の男です。本来幼少期に死ぬはずの彼はクスリ漬けによって生かされ、ある施設にて秘密裏に様々な実験をされながら成長したのです。
今回彼がこの学校に入学して来たのは、もう薬を使わなくても成長できるという判断からですね」
「まさか……」
塩田が絶句する。それが本当なら人類は絶滅の危機から救われたことになる。
もう人類は絶滅の危機に怯えなくてすむのだ。
隼人のような男を量産すれば、人工授精だけに頼らなくてもよくなる。
「ですがこれは初めてのケースですからね。一般社会に入れるとどうゆう反応を示すかもテストのうちなのです。
ああ、それから隼人くんはちんぽみるくの意味をきちんと理解していますよ。性の知識もしっかり叩きこみましたので。もちろん自分が男だということ、そして性の知識をばらさないようにちゃんと注意させていますが」
「………」
言葉が出ない。塩田は改めて自分がとても重要なプロジェクトに関わっていることを実感する。
これでは小○校で担任をやっていたときよりも、もっと気を引き締めないといけないだろう。
失敗は自分の評価どころか、命取りにも繋がる。
校長はそんな言葉を発することが出来ない塩田を尻目に楽しそうに呟いた。
「天然もので妊娠をさせる確率の高い健太くん、かたや科学の力で生み出された妊娠させる確率が低いものの回数と量が多い絶倫の隼人くん。
天然と化学が交差するとき、何が起きるか楽しみです」
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- 2014/04/27(日) 00:52:25|
- 小説
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