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20話 勝負

取材は続いている。
隼人は空気を読まずに陸上とは離れた質問をしている。
いいかげんにやめさせようかと悩んだけど、隼人が「最後に……」と言ったのでそのまま待った。

「俺と競争しませんか?」
「えっ?」

隼人の提案に怪訝そうな表情を浮かべる千夏先輩。
今までの質問からいきなり何を言ってるんだって感じだ。
僕も首を傾げてなんでそんなことを・・・、と考えていると、隼人は言葉を続ける。

「千夏先輩は知ってますかね。おちんぽみるくを出せるものは出せないものより強いんですよ。知性的にも肉体的にも」
「……それは私と走っても負けないってこと?」

千夏先輩が不快さを隠さず聞く。

「ええ、もちろんです。2年間陸上をしてきた千夏先輩より素人の俺の方が速いです」
「へー、言うじゃない」

隼人の挑戦的な態度に、千夏先輩はムッとした表情を浮かべる。
そりゃそうだろう。
千夏先輩みたいに大会上位に入るような速い人に向かって、おちんちんがあるから自分の方が速いとか言えばプライドが刺激される。
しかも千夏先輩は陸上部の部長で練習もまじめにやってきたんだ。
怒らない方がおかしい。

さすがに僕も一言いってやろうと立ち上がると、僕が近づく前に千夏先輩が口を開いた。

「なら勝負しましょう。それで証明してくれない? 私より速いって」
「いいですよ。元々そのつもりでしたから」

売り言葉に買い言葉で、二言目に決まる。
ピリピリとした空気の中、100メートル走するためにふたりはグラウンドに向かって歩き出す。
僕はなぜ隼人がそんなことを言い出したのかよく分からなかったが、何はともあれとんでもないことになったと少し距離を開けてついていった。


グラウンドのスタートラインにふたりが立つと、まわりを部員たちが取り囲んでザワザワとし始める。
千夏先輩がスタートダッシュをしていた部員達に隼人と勝負するからどいてと言った為だが、事の経緯を知らない部員達は只ならぬ雰囲気に顔を見合わせる。

「その恰好じゃ走れないでしょ。ここで待ってるから走りやすい恰好に着替えてきて」
「いや、俺はこのままでいいですよ。このままでも俺の方が速いんで」
「そう……」

タンクトップに紺のブルマという格好の千夏先輩に比べて制服の半袖シャツに黒のズボンという格好の隼人。
明らかに舐めた態度をとる隼人にやっと事情が呑み込めてきたのか、みんなが隼人に敵意を剥き出しにし、千夏先輩に声援を送りはじめる。

「じゃあ、始めましょうか」
「俺はいつでもOKです」

スタートラインに手をついてクラウチングスタートという前傾姿勢をとった千夏先輩に対し、
長距離走を走るスタンディングスタートの構えをとった隼人。
まるで分かってないと陸上部の間から失笑が漏れる。
僕はあの隼人の自信に少し気味悪さを感じながら、内心で千夏先輩を応援していると、美奈が僕に近づいてきて隣に立った。

「千夏負けないよね」
「うん、負けるはずないよ」

確かに隼人は体格がいい。
だけどあのスタートの構えを見るだけで走りは素人だと分かる。
僕から見ても千夏先輩は速いと思う。隼人に負けるはずがない。

どういうつもりで無謀にも勝負を挑んだのか知らないが負けてしまえばいい。


「じゃあ、副部長合図して」
「わかりました」

コースの横に立った副部長が手を上にあげた。

「よーい!」

ゴクリと誰かが生唾を飲みこむ。

「ドンッ!!」

手を振り下ろす。
それと同時に飛び出した千夏先輩と隼人。
スタートは千夏先輩が速く、早くも身体ふたつ分くらいの差をつけている。

「よし、いけぇ~」
「がんばれー!!」

みんなの声援を背に受けながら千夏先輩は綺麗なフォームで走る。
だけど隼人も思ったより速く差をつけれない。
身体ふたつ分を維持したまま走り続ける。

だけどコーナーを過ぎたあたりから距離が詰められ始めて、目を見張る。
グングンと力強いスライドで隼人が千夏先輩から少し遅れるくらいまで伸びたのだ。

大きくなる悲鳴と声援。

だけど千夏先輩も負けていない。そのまま並ばれると思ったところから一気に加速し隼人を引き離しにかかる。

「頑張れっ!!」
「千夏先輩!!頑張れっ!」

僕と美奈が拳を握りしめて声を枯らす。
まさか隼人がここまで速いとおもなかった。油断したら千夏先輩でも負けるっ。

そして50メートルまで走ったところで、再び1人分の差ができた。

よし!勝てるという予感がみんなの脳裏に過っただろう。
加速した千夏先輩に引き離された隼人。
力の差が出たと皆は思ったのだ。

だけどそこからさらに30メートルすぎたところで信じられないことが起きる。
まるで隠していた力を解放したように隼人のスピードが一気に増して千夏先輩と並んだのだ。

「えっ!」
「嘘でしょ」

唖然とする僕たち。
楽観したところでこの加速。
制服姿の素人同然の隼人がどうして、と混乱し始める。
だが現実は目の前にあって。
隼人はそのまま千夏先輩を追い抜きにかかる。

「ああっ!!」

ゴール間近でついに隼人が半歩リードした。
そして……!

隼人がそのまま一着でゴールした。


「はぁはぁはぁ……」

荒い息をつくふたりと、
何も言い出せない僕と陸上部員。

沈黙が場を支配し、このままどうなるんだろうと固唾を呑んで見守る。

「俺の勝ちですね、千夏先輩。俺の言ったとおりでしょ?」
「………」

荒い息を吐いたまま膝に手をついて何も答えない千夏先輩。
だけど相当悔しがってるのは分かる。
僕だってすごく悔しい。

「まあ、現実はこんなもんです。俺としてもいいネタが手にはいったのでこれで満足ですよ」
「ネタ……?」

千夏先輩が反応して顔をあげる。

「ええ、そうです。陸上部のエース、制服を着た新聞部の新入生部員に短距離走で惨敗。いいネタでしょ?」
「ぁっ……」

呆然自失した千夏先輩に追い打ちをかける隼人の言葉。
僕はこれが狙いだったのかと苦虫を潰す。
隼人がなぜ勝負を挑んだのか不思議だったが、この記事を書きたくてわざと挑発するようなことを言って千夏先輩を勝負の場に引きずり込んだのが分かったからだ。
つまり隼人は自分の書きたい記事をかけないため、仕返しに陸上部の評判を落としにかかったのだ。
こんな記事が出回れば、陸上部は真面目に練習してないで遊んでるんだと思われるのは間違いない。
よほど自分の足に自信がなければ挑めない勝負。いや、隼人にはこの勝負にあまりデメリットはなかったのだ。自分が負けてもさすが陸上部のエースと言って軽く謝ればいいのだから。

「もちろん、偶然ってことありますからね。リベンジは受け付けますよ。ですが今度俺が勝てば条件をつけさせてもらいますが……」
「………」

言葉を発せず立ち尽くす千夏先輩。
隼人はそれを見ると「じゃあ」と言って去って行った。

僕たちはそれをただ見守るしかできなかったのが悔しかった……。




「あんな奴が勝ったのは偶然ですよね!」
「もちろんリベンジしますよね!」
「油断しただけですよ!」

勝負が終わったあと、落ち込む千夏先輩はみんなに囲まれていた。
あんなのは偶然、次は勝つとみんなに言われて千夏先輩は愛想笑いを浮かべて元気なく「ええ」と答えている。
僕も千夏先輩を励ましたかったけど、美奈も隣で見たことないくらい落ち込んでたので、すぐに千夏先輩の傍にいけなかった。

なんとももどかしい気持ちになりながら、後で傍に行こうと、今は美奈を元気づける。

「美奈、落ち込むなって。今までの練習で千夏先輩は疲れてたんだから……」

そうだ。千夏先輩が負けたのは疲れていたせいだ。
午前中の階段往復に午後の暑さと練習の疲れ。そこを狙われていたに違いない。
隼人は練習してないんだから、体調は万全のはずだ。
そこを突くなんて、なんて卑怯な奴なんだ、隼人の奴………。

なし崩しに練習が終わりになり、僕たちは宿泊所に戻る。

皆が千夏先輩を最後まで元気づけようとしていたことで、僕はこの部に入って良かったと心から思った。



晩御飯、どことなく元気のない美奈を連れて食堂に行く。
今日はトンカツだったけど、食べていてもあまり美味しいと思わない。美奈の箸もあまり進んでないようだった。
また食堂の雰囲気も予想していたとはいえ、少し静かだ。
他の人の話だと、まだ千夏先輩がご飯を食べにきてないらしい。

僕は晩御飯を食べてから千夏先輩の様子を見に行こうと、急いで箸を進めた。

















その頃、千夏は自分の部屋で電気もつけずにベッドに座り落ち込んでいた。
いくら自分が練習で疲れていたとしても、負けは負けだ。
相手をどこか甘く見ていたということもあったが、それは言い訳にはならないだろう。

食欲も湧かずにベッドで項垂れる千夏。
部長の自分がいつまでもこうだと部の士気に関わると言うことも分かっているが、なかなか心の切り替えができない。
気分転換に歩きたい気分でもあったが、今の状態では誰かに会えば心配されるだけだろう。

千夏はそれでもご飯を食べに行かないわけにはいかず、食堂に行こうか迷う。
晩御飯を食べないと明日が持ちそうにない。
予定はちゃんと決まっているのだ。明日は何事もなかったように振る舞わなければならない。

パンパンと自分の顔を叩き、気合を入れる千夏。
この心の重さはリベンジすることによって晴らされる。
このまま負けを認めるわけにはいかない。陸上部の名誉がかかってるのだ。
油断と練習の疲れさえなければ負けないだろう。差はわずかだったのだから。

部屋の洗面所で顔を洗うと、食堂に行くために着替えを始める。
そして着替えを終え、出て行こうとしたところでノック音が聞こえたので、ドアを開けた。

「先輩、あの……」

やってきたのは可愛い後輩の健太だった。
多分だけど自分の心配をして様子を見に来てくれたのだろう。
その証拠に健太の挙動がおかしい。何か言いたそうにしては口を閉じている。

「何、どうしたの?」

心配してきてくれたのを嬉しく思いながら微笑む。

「えっと、今日の晩御飯とんかつでした」
「えっ、そうなんだ」

言葉を選んだ健太の切りだしに噴き出しそうになりながら続きを待つ。

「は、はい。だから美味しかったです」
「そっか、それなら食べに行こうかな」
「ええ、ですから食べに行った方が……って。ええっ!」

予め決めていた受け答えだったのか、健太は驚きの表情を浮かべ慌てる。

しかしすぐに落ち着きを取り戻すと、少しどもりながら自分を促した。

「そ、そうですね。すぐに行きましょう。みんな待ってますよ」
「うん」

笑顔になった健太を見ながら、やっぱりいい後輩だな、美奈が懐くのもよく分かると思い、

もしおちんちんを入れられるなら健太がいいかな、と歩きながら胸に熱いものを感じるのだった。

















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  1. 2014/06/13(金) 00:00:07|
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