名前:佐山 亮
性別:男
年齢:16
性格:中立
レベル:1
HP:15/18
力:11
知力:8
早さ:10
体力:9
運:6
スキル
なし
ステータスを確認した僕は数値を確かめると、ステータス画面を閉じる。
職業が書いてないことから、今は何もないのだろうと考える。
これからの問題はどうやってこの世界から脱出するかなのだが、正直どうしたらいいのかさっぱり分からない。
なにせ自分がどうしてここにいるのか分からないのだ。ここがゲームの世界だったらラスボスでも倒せばいいのかと思うが、それもはっきりしない。
せめて職業が勇者とか書いてたら分かりやすいのになと思いつつ、今度は現実的な問題を考え始める。
まず金がない。そして中世みたいなゲームの世界なのに武器がない。
それにレベル1だから弱いと思うのだが、他のNPCのレベル1と比べてどれくらい能力で勝っているのかそれも分からない。
とりあえずレベルを上げてなるべく自分の心に圧し掛かるストレスを解消したいのだが、もしこの世界に魔物がいても武器なしだとどうすればいいのだろうか……。
というか村の周りのモンスターがレベルに見合わなかったらそれだけでアウトだ。
まずは自分の知識に従って武器屋を探そうと思ったが、もう暗くなってきたので今日は諦める。
無一文でお腹も減ってるし、寝る場所もない。
初日にしてかなりピンチだ。
僕は寝る場所を探して村の中を彷徨うが、
どこで寝れば安心なのか分からない。
RPGっぽいゲームの世界だから強盗などいないと信じたいが、どんなゲームか分からない以上油断できない。
僕は結局、村はずれの畑の傍の納屋で寝たが、熟睡することが出来なかった……。
次の日、僕は目を擦りながら目を覚ました。
やはりすきっ腹のせいと、よく眠れなかったせいでかなり体調が悪い。
僕は村人が井戸から水を汲んでいるのを見て、その水を飲んで腹を満たすと、ついでに顔も洗ってスッキリする。
そして、ホント水の感触といいリアルだよなと思っていると、腹が減っていたせいか、少しよろめいて後ろにいた水汲みの少女の身体にドンと当たってしまった。
「あっ、すいません」
「………」
思わず謝った僕と、何も言わない少女。
なんとなく気まずくなって脇に逸れると、彼女は何事もなかったように井戸で水をくみ始める。
僕は初めてこの世界でNPCに触れた感触が人とまったく変わらないものだったので、戸惑いを覚えると同時に、気味の悪さも感じて暫くその様子を見守っていた。
あれから僕は村を歩いていた。
一応昨日家の中にいる人を除いて一通りの村人と喋ったのだが、昨日と何か変わってないことがないか確かめに来たのだ。
色々と喋ったりしてみると会話自体は昨日とまったく同じで、残念であると同時にどこか安心してしまう。
昨日ウトウトしながら考えていたのだが、ゲームの世界なら死んでもまた復活できると思ったからだ。
とはいえ、そんな保証はないのであくまでも気持ち的な問題なのだが、少しでも心に余裕を持たせないとやってられないから仕方ないだろう。
僕は村人から集めた情報を元に村の西側の畑にモンスターが出ることを知る。
だが、武器がないことが問題だ。
さすがに素手で攻撃はできないので、お金が掛からず武器になりそうな物がないか腕を組んで考える。
そして昨日寝た納屋に錆びた鍬が置いてあったのを思い出した。
「あれを使うしかないか」
今日何か食べないと死ぬと思った僕は、あの頼りない農具で妥協する。
武器になりそうなものを探してたらまたそれだけで疲れてしまう。命には代えられないだろうと言われてしまえばそれまでなのだが、もし畑にでるモンスターが弱かったらそれでもいけるんじゃないかと考えたのだ。
そもそもこの村の人たちって弱そうだし、その人達がまだ生きてるなら大丈夫だろう、多分……。
僕は納屋からボロイ鍬を取ってくると、パジャマ姿に鍬という異様な格好でさっそく畑に向かう。
畑に行くと、一目でモンスターがいると分かった。
露地野菜の畑に小猫くらい大きさの黄色いイモムシが数匹蠢いていたからだ。
「これなら倒せそうだな」
外見から弱そうなモンスターと判断し、俄然やる気が出る僕。
さっそくあれを倒して経験値とお金をゲットすることにしよう。
鍬を手にイモムシの背後にそっと回り込み様子を見る。
改めて自分の武器に不安を持ったが、あれなら大丈夫だろうと半ば確信する。
そして、そっと攻撃範囲まで忍び足で近づくと、鍬を振り上げ一気に振り下ろした。
「ピギーーー!!」
なんともいえない肉の感触とイモムシの悲鳴が響き渡る。
思った以上にイモムシは柔らかいみたいでかなりの手ごたえだ。
僕は必死で反撃がこないよう何度も鍬を振り下ろして止めをさす。
そして数十秒くらい攻撃してからイモムシの様子を見ると、暫く痙攣してから動かなくなった。
初勝利である。
僕は喜ぶと同時にモンスターを倒したのだからお金が落ちてないか地面に視線をやる。
だが、お金など落ちてなくて代わりに白い糸が一束落ちていたのでそれを拾った。
多分イモムシの残したものだろう。
(素材ドロップ型なのか……)
なんだかよく分からなかったが、イモムシが消えたりしないかじっと見守ってても変化がなかったので、
ステータス画面を開いて変わったことはないか確認した。
名前:佐山 亮
性別:男
年齢:16
性格:中立
レベル:2
HP:23/25
力:12
知力:8
早さ:11
体力:10
運:6
スキル
なし
おお、レベルが上がってる!
しかもステータスも!
昨日レベル1だった数値を思いだし、自然と顔がにやける。
まさか一回の戦闘でレベルが上がるとは期待してなかったからだ。
身体を軽く動かしても特に変わった感じはしなかったが、レベル1あがっただけならそんなもんだろうと次のイモムシに目をつける。
「それにしても仲間が殺されても何も反応ないよな」
村の周りの敵が弱くてホッとしたが、仲間が殺されても何の反応も示さずのんびり葉っぱを食べるイモムシに少し呆れる。
だが、そっちの方がこっちには好都合だとイモムシを狩りつづけた。
夕方──。
僕は狩りを終えて村の中に戻ってきた。
倒したイモムシの数は数十匹。
畑が広大だった為、イモムシのいるところを探して歩き回るだけでも大変だったが、それを除けば特に問題なくレベル上げ出来ただろう。
モンスターを倒しても自然湧きしなかったことが気になったが、
レベルも4にあがったし、いいことづくめだ。
僕は手にした白い糸の束を持って、道具屋さんに向かう。
まるで野良仕事をしたみたいに汗だくで気持ち悪いが、まずは金を手に入れて食料と靴を手に入れたい。
村の中を歩き回って店の位置をあらかた知っていた僕は、すぐに道具屋を見つけ中に入った。
「いらっしゃいませ。御用はなんでしょう?」
いつものテンプレ発言を半ば聞き流して、手に持った白い糸の束をカウンター机に置く。
「これを全部売りたい。いくらになる?」
「……65Gになります。よろしいですか?」
それが高いか安いか分からない僕はそれを全部売る。
そしてすぐに道具屋で売っていた安い靴と靴下を20Gで買うと、その足でご飯を食べに行く。
メニューは肉料理が25Gととんでもなく高く、魚料理が3Gと安かったので魚料理を注文する。
注文を待ちながらそういえばここには海から来たんだよなと思いつつ、もしかしたらここから海に近いルートがあり
僕は遠回りしながらここへ来たんじゃないかと考えたが、今さらどうでもいいかと店内を見渡しながらテーブルに肘をついた。
店内は客が少なく寂しかった。
小さな村なので驚きはないが、全員がNPCだと思うとたまらなく自分が孤独に感じる。
注文した料理がテーブルに並べられるのを見ながら、早くこっから脱出する方法を探さないとなと心に決めるのだった。
次の日。
僕はイモムシ狩りに出かける前に武器屋に寄る。
とりあえず武器を買ってからイモムシ狩りに行き、効率よくイモムシを倒し武器に慣れたいとの考えからだ。
その分、懐が心配になるが、実は昨日も納屋で寝てお金を節約している。
だいぶ順応してきているのか昨日ほど身体がしんどくないのはいいのだが、どうにも慣れたくはない。
僕は武器屋の中を見渡して、いい武器がないか探す。が、所持金で買えるのは安い木刀だったのでがっかりする。
手持ちは42Gなので今日も頑張らないといけない。
僕は何も買わずに店を出ると、もう壊れかけの鍬を持って畑にでかける。
昨日倒したイモムシはどこにもおらず、死体はひとつもなかった。多分どっか消えたんだろう。システム的に。
僕はそれに疑問を持たず、畑に湧いたイモムシ狩りを始める。
レベルが上がってるせいとコツがわかったせいで、かなり楽だ。
もう作業だと言っていい。
昼になり一端休憩してステータス画面で能力を確かめると、レベル4のままだった。
僕はもうイモムシ狩り卒業なのかと感じながら、次は何を狩っていいのか考える。
情報通りなら、次は村の西側にある森の中だろう。
だが、一人で森に入って狩りをするのは怖い。
どのモンスターを倒せばいいのか分からないし外から見ても中は薄暗い。
情報を集めたくともあのNPCたちは西の森がオススメと言うばかりで役に立たないし、仲間を集めようにもあの会話からして無理だ。僕はどうしようかと思いつつ、少なくとも今日はイモムシ狩りだなと延々とイモムシを倒し続けた。
4日目の朝、白い糸を売り払った僕は武器屋でなんとか中古の槍を買うと、食堂に来ていた。
というのもどうも朝からもう一つ力が出ず、森に行くことだし奮発して肉料理を食べようと思ったからだ。
(もう納屋で寝るのはやめたほうがいいかもしれないな)
そこで寝ているのが原因なのか、隙間だらけの納屋で寝ると身体が時折痛む。
身体の方は昔から丈夫とは言えなかったが、お金の節約とレベルが上がった油断で軽く見ていたのかもしれない。そこは反省する。
僕は肉料理を食べてしっかり力をつけると、25G払って店を出る。
なんでこんなぼったくりの価格なのか知らないが、獣の肉をここに売りに来れば高く買い取ってくれるのではないかと前向きに考える。
よし!と気合を入れると、畑を越えた先にある西の森を目指した。
──西の森。
森についた。
中に入ってみると思ったよりかは暗くなく見通しもよい。
僕は南の森を越えて来たわけだからこの森は初めてなのだが、南の森と同じくあまり生き物がいる気配はない。
奥に行かないと駄目だったらしんどいなと思っていると、近くの茂みがガサガサとして一匹の角の生えた子豚ほどの大きさの兎が現れた。
「うっ……」
思わず腰が引ける。
この兎は一本角が額に生えているのだが、その角は非情に尖っており、刺されると痛そうだし結構大きかったからだ。
「まさか突っ込んできませんよね?」
人間である自分を見ても逃げるどころか、身構えた兎。
慌てて身構えるが、盾もなくパジャマ姿の自分の防御力は紙同然。
イモムシと戦うときと違って一気に緊張感が増す。
少しへっぴり腰になりながら穂先を兎に向けると、兎は頭を低くして弾丸のように突っ込んできた。
「うおっ!」
慌ててヒラリと躱して兎が飛んで行った方を向く。
スピードは自分が思ってるより速くはなく、目で追えるくらい。
これならいけると今度はこちらに突っ込んできたのに合わせて横に避けるとタイミングよく槍を突き出す。
ドスッ──!!
鈍い感触と共に、狙いは寸分違わず、穂先が兎の胴に突き刺さり兎は暴れる。
僕は力を込めて穂先をさらに押し込むと、兎はやがてぐったりして動かなくなった。
「死んだかな?」
穂先を抜いてちょっとつつくが、反応はない。
僕は例のごとくドロップアイテムがないか探すが、なかったので兎そのものがドロップアイテムなのかと考える。
しかしこうして考えても仕方がないかと、この子豚ほどの兎を抱えて森をいったん出た。
もしこの兎そのものがドロップアイテムなら金稼ぎが大変だと思いつつ、売却したら結構な値段になるのではないかと頬を緩めるのだった。
名前:佐山 亮
性別:男
年齢:16
性格:中立
レベル:4
HP:37/38
力:14
知力:9
早さ:11
体力:12
運:6
スキル
なし
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- 2014/09/26(金) 00:00:01|
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