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モブの植木鉢小説館

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1話 観光?

「火の玉……?」

深夜遅くコンビニに買い物に出た私を待っていたのは東の空から斜めに切り裂くように堕ちてくる大きな火の塊。
それは夜空を真っ赤に照らし、ただごとではない予感を私に感じさせる。


「近くに落ちた!」

街近くの森に消えた火の玉を確認した私は思わず駆け出していた。






「いつっ……」

固い地面に叩きつけられる衝撃で僕は目が覚めた。
辺りを見回すと、なぜか知らない場所にいて、しかも自分を中心にすり鉢状にクレーターが出来ている。
身体を起こすと、あちこちに電撃が走るような痛みが走り、暗くてよく分からないが怪我をしてるかもしれない。

僕は立ち上がると、どうしてこんなことになったのか思い出すように考える。

確か家の近くのコンビニに向かう途中、突如まぶしい光が上空から僕を包み、気づいたらここにいた。
あの現象にさっぱり心当たりがないが、オカルト好きに言わせればきっとUFOによる地球人拉致だと興奮して答えるだろう。

とにかく真実はどうあれ、僕としてはここがどこか把握し、安全なところに行きたい。
なにせここは明らかに深夜の森で、何が出てくるか分からない不気味な場所だ。
こんなところでじっとして夜を明かせというのも無理があるというものだ。

「とはいうものの、どっちにいけばいいんだろうな……」

方向的にどっちにいけば森を抜けれるか分からない。
360°見渡す限り森だし、真っ暗で視界も悪い。
クレーターの底がぶすぶすいって炎の残りかすを撒き散らしているが、その勢いは弱くクレーターの底だけあって周囲を照らすにはほど遠い。
よく五体満足だったと自画自賛したいくらいだ。
僕はしっかりした足取りで、感を頼りに歩き出す。


じっとしてるのが正解なのかもしれないが、それはここがどこかだと分かってる場合だと頭が囁く。
コンビニに行くために住宅街を歩いてたら、いきなりここにワープしていた。ぶっちゃっけここが日本かどうかも自信がない。
森を抜けることが出来れば、きっとここがどこかわかるだろう。そしたら家に帰れるはずだ。

もしかしたらここは日本じゃないかもしれないという不安を考えないようにしながら、近くに落ちていた棒を拾うと先を進んだ。


腕時計によると10分後。
僕はまだ森の中にいた。
この森は思った以上に広く、抜けれるのは容易ではないらしい。

ホーホーと梟みたいな鳴き声が耳を通り抜けるなか、音を立てないように慎重に歩く。
肉食動物みたいなのに見つかってはひとたまりもない。武器として棒を持っているが、そういった動物と戦った経験など皆無だからだ。

緊張からのせいか喉に渇きを覚え、身体が水を欲するが、川など見つかる気配がない。
もっとも川の水を飲むなんてよほど追い詰められてなければないだろうが、日本じゃない場合覚悟しなければならない。
森に生えてる草木は日本と変わった様子がないのだから一縷の望みを抱いているが、どうなるかだ。

さらに数分歩いたころだろう。
突然、前方からこちらに向けて枯れ木を踏む音が聞こえ、身体が固まってしまった。

「……だれ?」

柔らかな少女特有の声が聞こえ、僕は大きく息を吐く。
今聞こえた声は間違いなく日本語。ということはここは日本だろう。いきなり訳の分からない目にあったが家に帰れそうだ。

僕は近づいてくる少女の姿を確認すると、少しためらった後、返事をした。

「すいません。いきなりなんですが、ここってどこなんですかね?」
「………」

明らかに不審者特有の返し方だと言ってから気づいたが、言ってしまったのは仕方がない。
むしろ警察を呼んでもらって保護してもらった方が早いかもだ。

案の定、相手は警戒し、僕の問いに沈黙している。
夜の森でこんなこと言ったら当然だ。というか、今になって考えてみればこの少女もおかしい……。
こんな真っ暗な森の中を一人で歩いてるなんて明らかに変だ。

急速に自分の中で警戒感が膨れ上がり、思わず身構える。

相手の姿は暗いせいではっきりとは見えない。向こうも警戒してるせいで、一定の距離から近づいてこない。
ゴクリと唾を飲み込み、緊張感が高まっていく。

けど、僕の心配は少女の明るい声で急に霧散してしまった。

「なぁ~んだ。遭難者なの?」
「ええ、まぁ……」

思わず頷いてしまった僕。
向こうからゆっくりと少女が姿を現し、僕の目の前に来る。

少女はとんでもない美少女だった。
栗色の短い髪をポニーテールにまとめ、白いタンクトップにジーパンという格好で、綺麗と言うより可愛い顔立ちをしている。
身長や歳は僕と同じくらいで、間違いなく日本人だ。

「どっから来たの?」
「えっと、杉並から……」
「杉並?」
「あっ、東京の杉並です」
「ああ、東京ね。観光?」

観光と言われて不安がよぎる。
ここは東京じゃないのか?

「あっと、ここはどこなのかな?」
「あっ、そうだった。ここは鳥羽よ三重のね」
「三重!?」

一瞬冗談言ってるのかと思ったが、顔は真面目と書いてある。
ありえないことだが、東京から三重までワープしてきたらしい。

「えっ、驚いてるけど観光できたんだよね?」
「う、うん」

嘘ついてしまった。
東京からいきなり三重に来たって言ったって変に見られるだけだし
しょうがないよね。

「それより、えっと……」
「あっ、わたしの名前は高山みさき。よろしくね。君は?」
「僕は新川秋一。みさきちゃんはどうしてここに一人でいるの? 危ないよ」

見たところ同じ高校生っぽいのに、真夜中にこんなところにいるなんて危ない。
しかも服装は極めて挑発的で軽装だ。

「んっ、わたしは森に落ちていく火の玉を見てここに来たの。君は見なかった?」
「……僕は見なかったかな」

心当たりはあったが知らない振りをする。知ってるなんて言ったら面倒なことになりそうだ。
やっかいごとに巻き込まれる前に家に帰りたい。明日学校あるし。

「そうなの? かなり大きな火の玉だと思ったんだけど……」
「気のせいじゃないかな。そんなに大きな火の玉だと、他の人も気づいただろうし、僕も見たと思うよ」
「う~ん、そっか気のせいだったのかな……でも……」

みさきちゃんは腕を組んで少し考え込んでしまった。
僕はその可愛らしい姿に少し見惚れながらも、明日の事もあり帰りを促す。

「それより駅まで案内してくれないかな。ちょっと道に迷ってしまって……」
「あっ、ごめん。案内するね」

みさきちゃんは僕の様子を見ると、慌てて腕をおろして歩きはじめた。
これで家に帰れる。訳が分からない現象に巻き込まれたが、もう大丈夫だろう。
大丈夫なはずだ。

数分後。みさきちゃんの案内の元、ぼくらはあっさりと森を抜けてすぐ傍にあった街にやってきた。
道を良く知ってることからいってみさきちゃんは地元の人のようだ。その足取りに迷いはない。

「駅でいいんだよね?」
「うん」

出来れば電話番号とか教えてもらって、もっと仲良くなりたかったとチラっと思ったけどしょうがない。
ナンパとかしたことないし、そんな勇気ないし。それにここまで親切にしてくれたのだから下心を出さずに素直にお礼を言って別れるべきだろう。
駅の券売機の前に到着すると、彼女に向き直り頭を下げる。

「ありがとう、助けてもらって。本当に助かったよ」
「いえいえ、どういたしまして♪ 気を付けて帰るんだよ」
「うん」

笑顔で手を振ってくれる彼女の前で、僕はやっぱ可愛いなぁと思いながら財布を取り出す。

「あっ!」
「どうしたの?」

大声を出した僕と、どうしたって顔で傍に来たみさきちゃん。

「いや、帰るだけのお金持ってなかった……」
「えー!」

目まぐるしく頭を働かせながら、結局家に電話しないと駄目かと溜息をつくのだった。



・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・



「おかしいな、誰も出ない……」

みさきちゃんのいる前で電話を掛けること数回。
僕はちょっと焦っていた。
午後9時ちょうどなのに親が電話に出てこない。家にいるはずなのにだ。

「どう繋がった?」
「だめだ。繋がらない」

電話を諦めポケットに仕舞う僕に、みさきちゃんは身体を寄せてくる。

「おかねのアテはある?」
「ないかも……。キャッシュカードは家に置いてきてるし」
「えー! どうしてカードなしで一人で旅行に来てるのよ!」
「うぅっ、ごめん」

もっともな意見に思わず謝ってしまう。旅行に来たつもりはないのだが、こういう押しに弱い。

「じゃあ、泊まるところは?」
「ない……です」

言ってて虚しくなってきた。今日は野宿決定か。
親父怒るだろうな……。短気だし。
そもそもどうして僕だけこんな目に……。

虚ろな瞳で項垂れる僕に同情を覚えたのだろうか。
みさきちゃんが慰めるように言った。

「よかったらウチにきなよ。寝床くらいなら保障するよ」
「えっ、でも……」
「大丈夫だって。お姉ちゃん優しいし」

僕は親はいいのか?と思いながら流されるように頷いた。


「いらっしゃい。妹から聞いてるわよ。大変な目に合ったらしいわね。布団は出しといたからゆっくりしていってね」
「お世話になります……」

家に着くと、玄関先に出たこれまた美人のお姉さんに歓迎された。
みさきちゃんと違って少しおっとりした風の栗色ふわふわロングの優しそうな人だ。
ちなみにみさきちゃんの家はよくある2階建ての白い一軒家である。

僕は恐縮しながら2階にあるみさきちゃんの部屋に通された。

「お疲れさま、楽にしてね。あっ、お風呂入っていいよ」
「うん」

美人姉妹二人だけの家。両親はいないみたいだけど、本当に僕が泊まっていいのだろうか。
というか、見知らぬ男を泊めることに抵抗ないのだろうか。
まさかビッチってことはないよね。

屈託なく笑う目の前のみさきちゃんは健康で活発な明るい美少女だ。
確かに身体つきはとてもエログラマーだが、ビッチに見えない。

お言葉に甘えて女物のパジャマを借り、お風呂を先に頂くと、みさきちゃんがパジャマに着替え部屋に布団を敷いていた。
みさきちゃんがベッドで僕が床の布団ってことだろうけど、さすがにどうなのよこれは……。
無防備すぎて、かえって遠慮してしまう気持ちが湧き上がってくる。これは言わば信頼の証。僕を信用してるって証拠だ。これはさすがに裏切れない。

さっきまでこのお風呂にあの美人姉妹が浸かってたんだと、色々妄想してたんだけど、なんか自己嫌悪してきた。親切な人なのに。

「じゃあ、今日は本当にありがとう。おやすみ」
「うん、おやすみ~」

明日早いし、いつのまにか11時になってるのを確認して、僕は布団に入った。
緊張して寝れないかもしれないけど、さっさと寝よう。


カチッカチッカチッ……

灯りを消した真っ暗な部屋で僕はやはりというか寝つけずにいた。
女の子の部屋に入ったのも16年間生きてきたなかで初めてだし、ましてや一緒の部屋で寝ることになるなんて、もう目が冴えるしかない。
寝返りを何度も打ちながら、隣のベッドで寝てるみさきちゃんを感覚で探ると、スースーと寝息が聞こえてくる。
ほんと無防備だ。びっくりするくらいに……。

心臓がどきどきし、全神経が耳一点に集中しみさきちゃんの動向を追うが
やはり何もない。よくもう寝た?とかそういう会話もなく、ただ沈黙の帳だけが降りる。
それからどのくらい時が経ったか。

いつのまにか眠っていた僕は、微かに押し殺すような声で目が覚めた。

「ん、ん……んぅ……」

どこか艶っぽい聞いた事のないような声が闇から耳に入ってくる。
ぼんやりとはっきりしない意識で聞いてると、押し殺したような声と息遣いが頭をノックし、すぐに目が冴えた。


(オナニーしている!?)

明かなそれとわかる気配。
ベッドの上でみさきちゃんがモゾモゾと動き、微かな声を上げている。

くちゅっ……くちゅっ、くちゅっ……

淫らな水音が暗く無音な部屋に響き、ますます目が冴えてくる。
まさか男の僕がいるのにありえない。だが、身体を硬直させ耳を研ぎ澄まさせてみても聞き間違えようがない。
みるみるうちに下半身に血が集まり、ちんちんが勃起してくる。
唾液を音もたてないように飲みこもうとしたが、緊張からかゴクリと大きな音を立ててしまった。

「ぁっ……」

気付かれた!
僕は慌てて寝返りを打ってみさきちゃんから背を向けたが、かえってそれが悪化してしまったようだ。
みさきちゃんが暗闇の中、すまなさそうに謝ってくる。

「起こしちゃった? ごめんね」
「………」

答えない。答えられるはずがない。
眠ったふりを続ける。
わざとらしかったかもしれないが、スースーと寝息を立ててみた。

みさきちゃんは暫く僕の様子を窺ってみていたが、僕が寝ているとみて再び自慰の続きを始めた。

「ぁっ…ぁっ、んっ……」


僕はそうして眠れぬ夜を目を充血させ過ごした。

いったいどうなってるの。



 






                                              >>
  1. 2015/12/21(月) 00:00:01|
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