少し遅れていくと、もう始まってた。
みさきちゃんと深優ちゃんが階段室の壁際で、みつめあうように座り軽いキスをしている。
少し驚いたが、この世界に来て驚きづくめだから、これくらいでは動揺しない。むしろ可愛い子同士のレズ行為を見せられて勃起してくる。
「深優……」
「みさきちゃん……」
頬を赤らめあい、舌を出してベロチューするふたり。
いやらしい。
僕に見られているのを知ってるはずなのに、舌を生き物のように絡み合い情熱的に宙でキスしている。
これになんの友情の意味があるか知らないが、僕としてはラッキーだ。美少女同士のレズ行為を見れるなんて。
ふたりは潤んだ瞳で見つめ合いながら、ゆっくりと胸を揉みしだきはじめる。
ゆっくりゆっくり乳房をこねるように揉み、制服の中に手を忍ばせ興奮を高めていっている。
やばいフルボッキだ。今すぐ混じって2人を犯したい。
僕の興奮も最高潮に達する中、ふたりはついにスカートとパンツを脱ぎだした。
ああっ、これがリアルの貝合わせ。
みさきちゃんが深優ちゃんの股の間に足を滑りこませ、お股をくっつけ腰を軽く振る。
ぐちゅっと淫音が聞こえ、みさきちゃんが深優ちゃんの片足を上に持ち上げ、主導権を握った。
深優ちゃんがみさきちゃんに犯されるように腰を乱暴に揺らされながら、こちらを見ないでとばかりに切なそうに見てくるので僕の頭がおかしくなりそう。まともに見てたら頭がどうにかなる。
レズ行為にそれほど執着があったわけじゃないけど、このままだと見るのが癖になってしまうだろう。
僕はいったん、2人の行為から目を逸らすが、深優ちゃんの押し殺したような喘ぎ声に反応してすぐ見てしまう。
重なり合う僕と深優ちゃんの視線。
まるで助けを求めてるような視線を受け取りながら、深優ちゃんは儚い声をあげてイッた。
女の子っていつもこんなことしてるのか!
僕は踵を返すと、急いで教室、トイレなどを見てまわる。
するとトイレで妖しい声が聞こえてきたので、僕は確信する。
ここは貞操観念が緩い世界なのだ。男がいないし、スポーツみたいな感覚でエロ行為をしてるんだ。
これでみさきちゃんが、深優ちゃんだけでなく僕とえっちしたのも合点がいく。
一人納得すると、僕は屋上のふたりのことを忘れて、教室の自分の席に戻った。
次の体育の時間。なんとか見られないように着替えをトイレで済ませ、グラウンドに出てきた。
上は体操服、下は青のジャージだという色気のない恰好だったが、男である僕には非情に有難かった。
それから男がいない世界なので、着替えも教室で済ませるのもちょっとした驚きだった。しかし考えてみればこれが常識かもしれない。
「もぅ、どうして一人で先に帰っちゃうのよ」
「ごめん」
グラウンドに出た僕に、体操服を着たみさきちゃんがストレッチをするように腕を伸ばしながら、言う。
ちょっと機嫌が悪いみたいだ。
「……みさきちゃんって、いつも深優ちゃんとああいうことしてるの?」
「ん? ああいうことって?」
「ほら……。食後の……」
「ああ、あれね」
みさきちゃんは僕から視線を外し、つま先にしなやかな手を伸ばし、なんでもないように答えた。
「あれは友情の証よ。仲のいい子ならみんなやってるわ。東京ではやってなかった?」
「えっ、あっ、いや、やってた……かな」
「なによ、はっきりしないわねぇ」
話しを逸らしたせいか若干普段の様子に戻るのを感じながら、みさきちゃんって以外に単純なんだなと内心で微笑む。
後から来た深優ちゃんにも挨拶していると、体育の担当らしい榊先生がジャージ姿でこちらにやってきた。
「みんな集まって授業を始めるわよ!」
慌てて先生の前に集まり整列する僕たち。
みんなの様子を見ていると厳しい先生のようだ。
誰も無駄口を叩く者がいない。
「では授業を始めます。欠席者はいないな。委員長?」
「はい」
おさげ髪を二本、胸に垂らした真面目そうな委員長が、僕らを見渡し自信満々に返事をした。
「では体育委員は倉庫から3分以内に木刀を持って来て全員に配れ。そしてすぐに各自素振りを100回。わかったな。いけ!」
「「はい!!」」
体育委員が慌てて体育倉庫から木刀を持ってくると、全員に配り、僕らは散らばって木刀を振りはじめる。
結構な重量があってこれは大変。
こんな授業をするのも戦乱の世だからだろうなと頭の片隅で考えていると、僕は突如榊先生に呼ばれる。
「新川さん、ちょっと来なさい」
「はい」
遅れたら怒られると僕は駆け足で先生の前に直立不動で立つ。
「あなたの実力は転入試験で大体わかってます。そこで訊きますが、あなたは属性能力者ですか?」
やはりこの質問が来たかと僕は、冷静に受け止める。
この世界の事を調べてて分かったことだが、この世界には100年前より人より優れたな力を持つ属性能力者と呼ばれる人間が現れている。
属性能力者はその能力によって地、水、火、風、天と言った属性に区分され、国に管理されている。
属性と言っても魔法とかを使えるわけではなく、火は力に優れ水は回復力が早くなる。といった具合に身体になんらかの特徴を持ってる人の事をいうのだ。
ちなみに他の属性は風はスピードが速くなり、地は防御力に優れ、天は視力や聴力がいいといった具合の特殊系の能力だ。
「いえ、僕は能力者じゃありません」
「そうですか。てっきりなんらかの能力者だと思ったのですが残念です」
当然能力者は戦争においての切り札になる存在だ。
だがその数は少なく、学年でも10人いればいいほうらしい。
僕は能力試験など受けたことないが、そんな能力をもって生まれたことないし、第一能力を持ってると知られると身体を調べられそうでそれはごめんだ。
だから仮にこの世界にきた衝撃で能力が身についていたとしても、それを言うつもりはない。
君子危うきに近寄らず、だ。
「なら素振りに戻りなさい」
「わかりました」
僕は頭を下げると、みさきちゃんの隣で素振りをノルマの回数こなした。
次に出された課題はペアになって、戦えと言うものだった。
僕は仲のいいみさきちゃんと組みたかったが、深優ちゃんがみさきちゃんの傍に行ったので諦める。
誰か余ってる人はないかと見回していると、榊先生が木刀片手に近寄ってきた。
「新川さん、余ってるなら私と打ち合いなさい」
「……はい」
嫌と言えるはずもなく、僕は仕方なく木刀を構える。
試験で打ち合ったはずなのに、なぜまた僕と打ち合おうというのか。
前やった経緯から榊先生が達人だと分かってるので、勝てるはずなどない。
せっかくの初日なのにみんなの前で恥をかきたくないなと思ってると、榊先生が「集中しなさい!」と注意し襲い掛かってきた。
「うわっ!!」
ブン!風切り音が聞こえるほどの袈裟切り。
僕は慌てて飛びのいたものの、一歩遅ければ当たってた。
冷や汗が背中に流れるのを感じながら、慌てて体勢を立て直す。
だが、僕が攻勢に出る間もなく、一歩踏み込んで横なぎに木刀を振るってくる。
「ぐっ!」
なんとか木刀で受け止めたのはいいが、少し無理な体制で受け止めたので、押し切られそうになる。
僕は歯を食いしばると、右足を一歩後ろに下げ、身体を支えるようにして体勢を立て直すと、力任せに榊先生の木刀を弾いた。
「「「おおーー!」」」
湧き上がる歓声。
周囲を見ると、いつのまにかクラスメイトたちが手を止めて、こちらを凝視している。
なにを驚いているんだ。僕が善戦してるからか?
仮にも男なんだから力で簡単に女に負けるわけにはいかないだろ。
油断なくこちらに視線を向ける榊先生は、まるで侍。
素人目にも隙はなく、本当に強いということを改めて思い知らされる。
固唾を呑むクラスメイト。
妙な緊張感が漂い、僕は呼吸を整えると、居合切りの構えを取った。
一度は敗れた戦法だが、今度は力で押し切る。
横なぎに払い、そのまま力任せに攻撃だ。木刀だから叩きつける戦法だと言っていいだろう。
ジリジリと間合いを詰めながら、タイミングを計る。
隙を待つ手もあるが、榊先生が易々と隙を見せるとは思えない。
腰を低くし、互いの間合いに入った瞬間、お互い動いた。
正眼に構えた先生が頭上に木刀を振り上げ、僕は腰を捻りながら木刀を先生の横っ腹に向けて手加減なしで払う!!
間違いなくこちらのほうが早い一撃。
頭上に振り上げたぶんだけ榊先生は遅いはず。
だが、次の瞬間。僕は肩に激痛を感じ、身体を硬直させ木刀を地面に落とした。
「ぐぅっ!!」
信じられない。木刀が僕の左肩に打ち下ろされている。
タイミング的に、悪くても相打ちだったはずなのに、どうして……。
左肩を押さえながら蹲ると、榊先生の声が頭上から聞こえる。
「本当に属性能力者ではないのね。てっきり火か土の能力をもってると思ったんだけど」
何か言いたくても激痛しか出てこない。なぜ負けたのか考えることも出来ない。
激しい痛みに耐えながら顔を上げると、榊先生がみさきちゃんを呼んで保健室に僕を連れて行くように言っている。
僕はみさきちゃんに付き添われて立ち上がると、俯き加減で歩き出す。
みんなの視線がとても痛かった。
「おしかったね。もう一歩だったのに」
保健室。先生がいなかったせいで、みさきちゃんが僕の治療をしてくれている。
こういうことには慣れっこなのか、当たり前のように戸棚から消毒薬を出すと、僕の傷口を消毒し、ガーゼを肩に乗せてくれた。
ちなみに上半身裸になったとき「おっぱいないね~」と言われたのは、ちょっとした愛嬌だろう。
「でも負けは負けだよ。あの振り下ろしの鋭さには勝てなかった」
タイミング的に勝ったと思った気の緩み。それが敗因だろう。もっと慎重に行かないと駄目だったのだ。相手は達人だし、やはり女と言うことでどこか甘く見てたのかもしれない。転入試験でもやられたのにホント馬鹿だ。
「それもあるだろうけど、それだけじゃないと思うよ」
ガーゼの上に丁寧にテープを張りながら、みさきちゃんは意味深な事を言う。
「どういうこと?」
僕は顔を上げみさきちゃんを見た。
「榊先生の最後の攻撃、おかしいと思わなかった?」
「さすが先生、鋭い攻撃だとは思ったけど……」
僕は正直な感想をみさきちゃんに話す。
やはりあの一撃は鋭すぎる。
「馬鹿ね。鋭すぎにも限度があるでしょう。あれは属性能力よ。先生の持つ『風』の力のね」
そういうことか……。
どうりで鋭いと思ったけどあれが属性能力だったのか。
たしか風は素早くなる能力のはずだ。
しかし反則すぎる。気づいたらやられてたぞ……。
「まさか先生が属性能力を使うと思わなかったけど、それだけ善戦してたってことでしょうね。転入試験でもびっくりしたけど秋ちゃんってやっぱりすごいね」
「いや、それほどでも……」
可愛い女の子に褒め慣れてないのでむずがゆくなる。
これで僕を男として認識してくれたら最高なんだけど、言うわけにはいかないだろうね。
「なに言ってるのよ。先生と初めて戦ってあそこまで出来るなんて見たことないんだから」
「そうなんだ」
「そうよ。もっと自信持ちなさいよ」
これでも男としてのアドバンテージがある。普通の女の子には負けはしないだろうけど、属性能力者には勝てないのか。
治療を終えると僕は体操服を着る。
このまま休みたいけど、みさきちゃんの話ではこれくらいで休ませてくれないらしい。
やっぱり厳しい先生のようだ。
僕は痛みの残る身体に眉を顰めながら、しぶしぶみさきちゃんとグラウンドに戻るのだった。
放課後。ついに今日の授業を終えた。
体育の時間のあとクラスメイトが口々に心配してくれて、こんな経験のない僕には嬉しかった。
クラスメイトたちが連れだって部活や帰宅する中、僕の前にも鞄を持ったみさきちゃんが現れる。
「さぁ帰ろう」
「うん。深優ちゃんは?」
いつも一緒の深優ちゃんを視線で探すと、みさきちゃんはやれやれと言った感じで、主のいない深優ちゃんの席に視線を向けた。
「深優は図書委員だからいないわよ。本が大好きだからね」
「へー」
儚げで図書室にいそうってイメージあったから大して驚きはないが、本当に図書委員だったと思うと、少し笑みが浮かんでくる。
こういうのってどこの世界でも一緒らしい。
「なによ、ニヤニヤして」
「いや、イメージ通りだなって」
「たしかにねぇ、深優はそんな感じするわね」
納得したようにみさきちゃんは頷く。
「ねぇ図書室ってどこにあるの?」
「2階だけど」
僕は鞄をもって席を立った。
「図書室に行くの?」
「そう」
「じゃあわたしは先に帰ってるわね」
「えっ、一緒に行かないの?」
背を向けたみさきちゃんに言葉を投げかける。
「私はいい。苦手な人がいるからね」
「苦手な人……?」
僕の問いに答えることなく、みさきちゃんは教室を出て行った。
<< >>
- 2016/01/17(日) 00:52:55|
- 小説
-
| トラックバック:0
-
| コメント:0