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11話 紀北の戦い 2

絶えることのない剣戟と血の匂いが充満するなか、僕らはまだ戦っていた。
陣の東側からやってきた和歌山の軍勢は未だ攻勢をやめず、僕らを攻めたてている。
自軍から撤退命令が出ないことから、奇襲に来たのはそれほどの人数じゃないのかもしれない。いや、ここを引き払う事自体ありえないので命令が出ていないのかもしれないが。

「踏みとどまれー!もう少ししたら援軍がくるぞー!!」

自陣から勇ましい声が聞こえ、僕らは無我夢中で敵と切り結ぶ。
もう後ろにいる深優ちゃんと愛梨ちゃんを振り返る余裕はなく、前方から現れる敵をみさきちゃんとの連携で殺していく。
人を殺すことに躊躇いはなくなった。というか、周りの状況がその選択を与えてくれない。ためらいなど持ってたらこっちが殺られる。
これが戦場──。学校で女の子だから手加減する、とかしてたのがアホみたいだ。

嫌な手ごたえと共に血しぶきを浴びながら、肩で息をする。
何分戦った?何人殺した?
見当もつかないが、歯を食いしばり、クラスメイトに襲い掛かってる敵の側面から雄叫びをあげて斬りかかる。

「ぎゃあ!」

アマゾネスみたいな筋骨隆々の女が、腕を押さえながら逃げていく。

「あ、ありがとう」
「ああ!」

クラスメイトが礼を言い、僕はすぐさまみさきちゃんたちに加勢に行く。

心臓のバクバクが止まらない。
身体が疲れから悲鳴をあげてるのに、まるで気にならない。
興奮が頭をぶっとばし、普段引き出せない力を引き出して、僕を戦士と化す。
さらに何人か倒すと、敵が引いていくのに気が付いた。

「もうちょっとだ! 敵が逃げだしてる!」

みんなに鼓舞するように叫んで、僕は刀を振るう。
こうなると一方的だ。
逃げる敵に追いすがり背中から斬りつける。

松林のあちこちから敵の断末魔が聞こえ、さらなる地獄絵図が描かれる。

「やめろ追うな!!深追いはよせっ!!」

こっちの指揮官らしき怒声で、追撃はなんとか止められた。

僕らの勝利だ。




「被害は……?」

愛梨ちゃんが気を取り直したように周囲を見た。
まわりは死体と怪我人だらけだった。
見ているだけで顔を顰めたくなる。
そんな中、僕らの班に、怪我らしい怪我がなかったのは奇跡に近いだろう。
それにしても、

やっちまった……。

勢いや雰囲気、そして合戦とはいえ、女の子を殺してしまった。
いや、相手が男でも人間を殺したのだからきっと同じことを思っただろうが、男を殺すより胸糞が悪かったのには違いない。
なにせ、敵とはいえ女の子だし。

周囲に転がる死体を目に入れたくなくて顔を逸らすと、深優ちゃんが真っ青な顔をして震えてた。
正気に戻って自分のしたことに衝撃を受けてるって感じか。
戦のあの独特の雰囲気。流されても仕方がないと思う。

「秋ちゃん」
「ん?」

みさきちゃんに話しかけられて振り向く。

「榊先生に報告に行かないと」
「あっ、そうだね」

一応この班のリーダーだったことを思いだし、深優ちゃんと愛梨ちゃんに顔を向ける。

「ふたりとも大丈夫?」
「は、はい」

深優ちゃんが絞り出すような声を出す。

「愛梨ちゃんは?」
「わ、わたしも大丈夫です」

一番年下の愛梨ちゃんだったが、シッカリした返事を返した。
自分に叱咤しているみたいで、顔はさすがに青ざめている。
何か言おうと口に出しかけたが、生き残っていたクラスメイトが榊先生の方に行くのを見て、その口を閉じる。

何はともあれ報告してからだ。
落ち着いてからちゃんと話したほうが、色々受け止められる。
先生も心配してるだろうから早く報告しないといけない。

さすがにこれで帰宅決定だろうと、残される愛梨ちゃんに罪悪感を感じながら、僕らは榊先生が他の生徒と喋っているのを視界に入れ足を進めた。

「全員無事だったか?」
「はい」

僕らが来るのに気づいた榊先生が、他の生徒との話を打ち切り、こちらに顔を向けた。
その顔は見たことのないくらい厳しく、いかにこの戦いが厳しいものだったかを思い知らされる。
なにせここは補給陣地。戦えるものもそれなりにいただろうが、見ての通り地元の若い志願兵も多い。
前線と比べればまともに戦える兵士は少なく、僕らだって見習い新兵みたいなもの。かなりの犠牲者が出たと推察できる。

「クラスのみんなは無事なんですか?」
「それはいま確認中だ。おまえたちは怪我人を救護室に運ぶのを手伝え。次の指示は後で伝える」
「……わかりました」

他にも聞きたいことがあったが、先生の厳しい口調に質問を諦める。

「みんな行こ」
「うん」

みさきちゃんが僕らを促し、僕らはみさきちゃんの後について怪我人の救助に向かう。
怪我人の苦痛を漏らす声が、心に突き刺さるようだった。


数時間後、僕らはおさげ髪のクラス委員長の連絡で、愛梨ちゃんを天幕の中に残して先生の元に集まっていた。
陣地には救援に来た前線の援軍が到着し、混乱は収まっている。
怪我人も無事収容し、僕らが出来ることはもはやなくなっていた。

「やっぱり撤収かな」
「だろうね。元々見学の予定だけだったし」

隣のみさきちゃんがポツリと呟くと、僕はそう返した。夕方だし、味方の援軍も来た。帰りたい生徒もいっぱいだろう。
リアルな合戦を経験してショックを受けてる生徒がちらほらみえる。

「あ、あれ、なんか生徒のかず少なくありません?」
「そういえば」

ちょっと考え込んでたところ、不意に深優ちゃんがまわりを見渡して言った。
クラスメイトの数が少ない。前の席の方の青山さんとかいないぞ。
まだ来てないのか?

「青山、原田、田中、北村、梅山、中田、秋山が戦死した」

えっ!?と榊先生に視線が集中した。

「先の戦いで1-Aから7人戦死者が出た。残念なことだ」
「………」

静かになる場。誰もが言葉を発せず、榊先生の言葉を飲みこもうとしている。
知っていた者はただ顔を俯かせ、死を知らなかった者は呆然としている。
信じられない。数時間前はみんな元気だったのに。
どうしてこうなった?

「……うそ」

みさきちゃんがそう言葉を発した。
それと同時に、あちこちからすすり泣く声が聞こえ始める。

「どうして青山っちが……」

みさきちゃんと青山さんが結構喋ってるのを見たことがある。
故にショックが大きいのだろう。拳を震わしてキッと先生を睨んだ。

「先生っ!どうして、どうして私たちを戦わせたんですかっ!こうなることは分かってたはずなのに!」

乱世の世である以上、こんな光景珍しくもなんともない。
それゆえか先生は目を閉じて静かに答える。

「それがこの国を守ることに繋がるからだ」
「そ、そんな……私たちに人権はないんですか!」

黙ってられないように深優ちゃんも叫んだ。

「ない。嫌ならこの国から去れ」
「なっ!?」

あまりの返答に深優ちゃんは絶句する。

「高校に入った時からおまえたちは覚悟していたはずだ。いつかはこんな時が来るとな。それが少し早まった。それだけのことだ。
それに明日の朝をもって我々は撤収することになった。もうこの話はいいだろう。各自荷物を纏めろ。30分後にキャンプ地に戻る」

解散との合図と共に榊先生は踵をかえす。
みさきちゃんが何かを言いかけたが、僕はみさきちゃんの肩に手を置いてそれを止めた。

「先生だって教え子を失って辛いはずだ。もうこれ以上は……」
「……っ!」

みさきちゃんは僕を涙目で睨むと、手を振りほどく。

「わかってるわよ! そんなこと!」

みんながすすり泣く中、みさきちゃんは一人走り去って行った。




集合時間になり、全員が集まると、僕は殺し合いのあったこの補給陣に視線をやる。
先程、僕たちは愛梨ちゃんに別れを済ませ、ここへ来た。
お互い上手く笑えなくて、痛々しい別れになったが、ここに残るともいえず最後は無言のまま背を向けた。

これでよかったのかとか思ったが、僕が残ると言えば他の人も残ると言い出しかねない。特に未だ落ち込みを見せているみさきちゃんは、仇をとると言って前線にも行くだろう……。
それはさすがに家にいる結衣お姉さんになんと申し開きをしていいか分からないし、非常に危険なので必ず止めなければならない。
そう──。所詮僕たちは学生なのだ。
武道の時間があると言っても、戦場では殻のついたひよっこに過ぎない。
ならば今は鳥羽に帰り、守りたいものを守る為、より勉学と訓練に励むべきだろう。
そして来るべき時が来たら、その時は敵を相手に大暴れすればいい。
残された時間は短いかもしれないが、悔いを残してはいけない。

128人の戦死者を出したこの戦いにおいて僕ら1-Aは7人のクラスメイトを失った。
話す機会も大してなくて顔見知り程度だった人たちだけど、失ってみると寂しいものがある。教室にいって空いた机を見ればさらにそれを実感するだろう。
僕は怪我人を担架で車に運んでる人達に視線を向け、小さくつぶやく。

どうか生き残ってくれと。





キャンプ地に着いた時はもう暗闇が迫っていた。
ここからバスに乗って今日中に帰る予定だったらしいのだが、向こうに着いた時は深夜になるということだったので、明日帰宅することに決まった。
みんな肉体的精神的にクタクタだったので、不満ひとつ漏らさず晩御飯を食べると、昨日と同じようにテントを張る。
そして昨日と同じように早々に寝袋にもぐりこんだ。

「………」

深夜、梟の鳴き声が聞こえてくる中、暗い天井を見上げてやはり眠れずにいた。
補給陣からみさきちゃんと一言も口を利いておらず、なんとかしなきゃと考えると眠気が襲ってこない。
そりゃあ親しい友人を失ったわけだからその気持ちは理解できるのだけれど、この落ち込みようは見てて辛いものがある。

──時間が解決するのかな。

唾ひとつ飲みこむ音にも気を使うなか、僕はふと考える。
友達を失うことでこんなに落ち込むなら、ただ一人の姉、結衣さんを失ったらいったいどうなってしまうのかと。
この世界では人霊樹が親とも呼べる存在なので、家族は貴重な存在だ。姉と言っても当然血の繋がりがあるわけではなく、調べた範囲だと独り立ちしてやっていけるだけの経済力を持つ者が、人霊樹から産まれた子を引き取り、家族を持つことを許されるらしかった。
だから大抵の家は姉と妹のふたりだけの家族だ。何人も養えるほど経済力を持つ家は少ない。親子、兄弟で仲が悪い家族がいるなか、この世界の姉妹は互いが互いを強く求めているから、家族の絆はきっと人一倍強いと思う。そんな二人だけの姉妹のうちどちらかが欠けでもしたら。

僕は思わずふぅと溜息をつくと、目を瞑る。
こんなこと考えても仕方がない。
起こってもないことを考えても無意味だ。
明日の事を考えよう。

そう、思うが、やはりなかなかうまくいかない。
今度は愛梨ちゃんのことを考えてしまう。

愛らしくて一生懸命だった愛梨ちゃん。
別れ際の寂しそうな姿が目に浮かぶ。
ちょっとの間だったけど妹にほしいくらい可愛かったし、敵と戦ったということで戦友にもなった。
そんな彼女を残して帰るのはやはり胸が痛い。

(あー、頭がおかしくなる)

喉の渇きを覚えて枕元に置いてあった、水の入ったペットボトルを手に取り喉を癒す。
すると、そんな姿を見たのか、隣で寝ていたみさきちゃんが話しかけてきた。

「今日も寝れない?」
「……うん」

少しためらいがちに頷く。
彼女が今どんな気持ちなのかが分かるから返事も慎重だ。

「愛梨ちゃんどうしてるかな?」
「………」

僕と同じことを考えていたのかと、ドキッとする。

「あの子いい娘だったよね。辛いはずなのに明るく振る舞って一生懸命で……」

言葉が出ない。また愛梨ちゃんのことで悩んでしまいそうだ。

「もし何かあったら……」
「みさきちゃん!」

話しを遮るように、僕は大きな声でみさきちゃんの話を止める。
これ以上は駄目だ。ますますみさきちゃんが暗くなる。

「な、なに?」
「もっと明るい話をしよう。暗い話ばっかりしたら本当にそんな風になっちゃうかもしれないから」
「う、うん」

いきなり大きな声で話しかけたせいで面喰ったのか、みさきちゃんは素直に言う事をきいてくれた。
これでいい。
僕も悪いことを考えてしまいそうだったから。

「じゃあ、なんの話する?」
「う~ん、明日の晩御飯のこと?」
「なにそれ」

僕は思わず笑った。
みさきちゃんはさすがに笑わなかったけど、この会話こそが僕が望んだもので、落ち込んだみさきちゃんにもよく効くと思う。
不謹慎かもしれないけど、こういう会話をどんどんしていかないといけない。

「なら、みさきちゃんが何か面白い話してよ」
「……悪いけどやっぱりそんな気になれない……」

声のトーンを落として答えるみさきちゃんに、やっぱり咄嗟に気の利いた言葉が言えないからモテないんだろうなと思いつつ、
なんとか話を続けるような話題を考える。
すると僕から話を切り出す前に、みさきちゃんが少しすがるような口調で言った。

「ねぇ……えっちしない?」















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  1. 2016/03/06(日) 16:00:07|
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