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7話 デートの約束

敵の背後につけようとしたネプチューンだったが、そう上手くはいかなかった。
敵はカカシではない。
体勢を立て直したエリアハールはすぐさま反撃しようと、こちらの動きに合わせて船体を傾けてくる。

こちらは一隻。敵は戦艦一隻に駆逐艦4の5隻。
数の上で不利な私たちは、機動力を生かしながら敵の射程外から常に背後に回り込もうと動き回る。

「そろそろか」

メインスクリーンに映し出される敵の陣形見ながら、小田少尉は呟く。
そう。敵は数の優位を生かすため、こちらを挟み込むように駆逐艦が2隻ずつに分かれて左右からやってくる。
小田少尉はそれを読んだように駆逐艦がついてこれるだけのスピードで後方に移動し、戦艦と駆逐艦の距離を引き離しにかかる。

どんどん戦艦と駆逐艦の間の距離が広がり崩れる陣形。
焦れたように敵の駆逐艦が射程外からレーザーを放ってくるが、当然当たるはずもない。
やがて駆逐艦同士も距離が離れはじめ、突出した一隻が迫ってきたところで突如反転してさらに撃沈させた。

これで駆逐艦残り3。
さすがに敵の頭も覚めたのか、こちらを追うのをやめ戦艦に合流しようと反転する。

だがそれを狙ってたかのように今度は一気にスピードを上げ敵の背後に迫る。
ネプチューンは最新鋭の高速駆逐艦。海賊が所有する駆逐艦と性能は雲泥の差なのは言わずと知れたこと。
性能をフルに生かしたネプチューンは敵の背後にあっという間に喰らいつき、慌てて反転しようとする敵の船体に牙を突き立てる。

「発射」

メインスクリーンからさらに2隻が姿を消す。
残り一隻がレーザー砲で攻撃してくるが……。
駆逐艦に似合わぬほどの強力なバリアによって、あっさりと逸らされ明後日の方向に飛んでいく。


「敵の戦艦が間もなく射程に入ります」
「わかった」

私の声に小田少尉は頷くと、ネプチューンを後退させつつ駆逐艦にレーザー砲を浴びせていく。
ここまでは見事としか言いようがない。
いかに海賊が相手だとはいえ、敵の統制を乱し、数的不利を覆したのだから称賛されて然るべきだろう。奇襲とネプチューンの能力をフル活用にしての戦術は素晴らしい。

だが敵はまだ2隻残ってる。
特に敵戦艦の攻撃力と防御力は高く、まともにやりあえばネプチューンと言えど、ただでは済まない。

(どうするのかしら)

私はそっと背後の艦長席に座る小田少尉を見る。
自分ならまともにやりあわない。
ここまですれば十分なので、冥王星からの援軍を待つだろう。
着かず離れずで牽制し、時間を稼ぐ。あと30分もすれば援軍が到着するので問題はない。
もしかしたら敵は自らの不利を悟って逃げ出すかもしれない。

だが、私の中で期待している自分がいる。
小田少尉なら援軍を待たずして、敵を全滅に追いやる策があるのではないかと、そう考えてしまってるのだ。
むしろこれからの行動によって小田少尉の軍人としての人生が変わる気がする。

「葵兵長、冥王星からの援軍はまだ到着しないか?」
「はい。まだ30分は掛かるようです」
「そうか」

小田少尉は腕を組み目を一度閉じると、何かを考えるそぶりをした。

どういう決断を下すのか。
援軍到着を待つのか。
それともこのまま撃破に向かうのか。

少しドキドキしながら小田少尉の判断を待つ。

「戦艦からの射程に入らぬよう後退。敵をクリスタルリングから引き離す」

援軍を待つ選択を選んだのか、現実的とはいえちょっとガッカリする。
これまでの手並みの鮮やかさからすれば、さらなる戦果を期待してもよかったのだけど。
これは他のクルーも同じ思いだったようだ。艦橋に失望に似た空気が流れる。

「少尉、駆逐艦の前進が止まりました。どうやら戦艦と合流するようです」
「そうか。では後退停止。敵の出方を待つ」

モニターを見つめる少尉。敵は合流すると、こちらと睨みあう形になる。
だが暫くするとゆっくり後退し始め、急速反転から宙域の離脱を図った。

「やはり逃げの一手か」

戦艦一隻と駆逐艦一隻ではクリスタルステーションを襲うどころではない。
巡洋艦1駆逐艦4隻を失ったことで、頭の血が昇って損害を度外視して襲ってくる可能性もあったが、エリアハールは冷静に判断したようだ。外宇宙の方に船首を向け今更だが去っていこうとする。

「エンジン全開。追い打ちをかける」
「りょ、了解!」

てっきりこのまま見逃すと思っていたクルーが慌てて操縦かんを持つ手に力をいれると、艦のスピードをあげる。
敵は足の遅い戦艦を抱えた敗残兵。
最新鋭の高速駆逐艦ネプチューンの性能を甘く見て逃げ切れると思ったのだろうが、そうは問屋が卸さない。
たちまち追いつくと、すぐに敵は逃げ切れぬと悟り駆逐艦が反転を試みるが、それを許さず撃沈させる。

あとは背中を向けた戦艦のみ。
降伏勧告を出すこともなく小田少尉は主砲にて戦艦をも撃沈させた。

歓声が上がる艦内。
私はやれやれと息を吐く小田少尉を尊敬のまなざしで見つめた。









華々しい戦果をあげた私たちは、クリスタルリングに凱旋していた。
クリスタルリングでは沢山の人たちが私たちを英雄のように出迎え、こちらが戸惑うほどであった。
報告のために管制室に入ると、キャプテンがわざわざ立ちあがって敬礼した。

「見事だった小田少尉」
「はっ、ありがとうございます」

援軍を待つことなく敵を全滅させた。
これほどの大戦果はクリスタルリング始まって以来の出来事ではないだろうか。
実際初めてだろう。
キャプテンの前に立つ小田少尉と私も興奮を隠せずにいる。
これで小田少尉の昇進は間違いなし。羨ましい限りだ。

「しかしあれほど脆いとは。冥王星の援軍を呼ぶまでもなかったな」
「いえ、敵の襲撃を事前に知っていたからこそできたことです。葵兵長を褒めてやってください」
「うむ。葵兵長もよくやってくれた。君がこの情報をもたらしてくれからこそここまでの戦果を挙げることができた」
「ありがとうございます」

予想しない言葉に顔を少し紅潮させる。

「キャプテン、冥王星艦隊、戦艦プルートノアから通信がはいっております」
「むっ、繋いでくれ」

メインスクリーンがブンと変わり、50代の壮年の男性が映し出される。

「冥王星所属、戦艦プルートノアの艦長ハイン少将であります。申し訳ありません。到着が遅くなりました」
「いやご苦労だった。とりあえず色々と報告したいこともあるので、クリスタルリングまで来てくれ」
「了解しました」

ブンとスクリーンが星の海に変わる。

「何はともあれ疲れただろう。ゆっくり休息をとってくれ」
「はっ、ありがとうございます」

小田少尉と私はそろって敬礼をして管制室を出た。






「疲れただろう。葵兵長」
「いえ、それより小田少尉、ご昇進おめでとうございます」
「それは少し気が早くないか、葵兵長」

私たちは小田少尉の誘いで、陽菜とよく待ち合わせをする喫茶店に来ていた。
既に深夜2時を回っているが、クリスタルリングのほとんどの店は軍が関わっているため24時間営業だ。夜勤の多い軍関係者のために24時間営業という噂がある。

「これほどの大戦果を挙げたなら昇進は間違いないと思いますが」

客が私たちだけという喫茶店。
高揚感漂う私たちが気を落ち着けるにはいい雰囲気だ。

「つい先日昇進したばかりだからね。そう易々と昇進できると思わないよ」
「そうですが……」

確かに私と小田少尉は先日の幽霊船騒ぎで昇進した。だが、今回の件はそれを補っても余りあるものだ。
これで昇進できなければ私なら辞表を提出している。
それだけのことをやってのけたのだ。

そんな不満が顔に出ていたのか、小田少尉は苦笑いを浮かべながらカップを皿に置いた。

「言いたいことはわかる。だが軍にも事情というものがある。そんなに焦ってないさ」
「………」

小田少尉は欲がなさすぎる。
目の前で苦笑する小田少尉はいい人っぽい雰囲気だが、私はそこに小さくない不満をおぼえる。
小田少尉は優秀で尊敬すべき対象だが、これだけの功績をあげたのだからもっとアピールして昇り詰めてほしい。尊敬すべき人物なのだから、もっと出世して自分の目が確かなのを証明してほしい。
自分勝手な考えなのだが、そう考えてしまうのは、それだけ小田少尉を評価しているからだと思う。エリートコースの代名詞とも言える地球や火星勤務だって夢ではない。

「そんなことより葵兵長は大丈夫だったか? 初めての実戦で緊張したのではないか?」
「はい。確かに最初は緊張はしましたが、小田少尉と一緒だったので不思議と落ち着きました」
「そ、そうか」

そういうと、小田少尉は少し顔に朱を灯したようだった。
照れたような仕草を見せながら、誤魔化すように再びコーヒーに口をつけて何事かを考えているそぶりを見せている。

「何か考え事ですか?」
「いや、不思議だと思ってな。リスクを考える海賊がどうして不利を悟りながら全滅覚悟でこちらに向かってきたのかをな。そもそも隕石群からの待ち伏せで海賊は自らの不利を悟って逃げ出してもおかしくなかった」
「確かに……そうですね」

あまりに上手く行き過ぎた作戦。
プライドや仲間意識、そしてこちらが一隻だという事で踏みとどまった可能性もある。だが、待ち伏せされてる時点ですぐに逃げるのが妥当だろう。
そもそも宇宙ステーションを襲おうとした考えからして私には理解できないけど。あまりに敵は無鉄砲すぎる。海賊の中にはそういう者がいると話で聞いたことあるけど。

手に持ったコーヒーに映る自分の姿をぼんやり視界に入れながらそんなことを考えていると、小田少尉がカップを小皿に置いた。


「葵兵長。実は頼みがあるんだが……」
「はっ! なんでしょうか」

改まった様子で姿勢を正した小田少尉に、自身も姿勢を正す。

「その、、今度の休み、私と一緒に……その…」

言いづらそうに小田少尉は何度も言葉を途切れさせながら、身体を揺り動かせている。
なんというか、こんな小田少尉は初めてだ。何を言おうとしているのだろう。
内心驚きながら静かに言葉の続きを待つ。

「つまりだな。その……デー、いや海に行かないか?」
「海ですか?」

なぜ海に行くのにこんな落ち着きのない態度を見せたのか不思議だったが、それくらいなら問題ない。脳内でスケジュールを確認しながらすぐに二つ返事でOKをだす。

「別に構いませんが」
「ほ、ほんとうか?」
「はい」

少し気圧されながら返事をする。

「それはよかった。葵兵長、次のオフはいつだ?」
「明後日ですが……」

仕事の時とは違い、オフの予定まで積極的、いや強引に話を進めようとする小田少尉に再び驚く。
小田少尉は高揚が抜けきってないのだろうか。今日の小田少尉には驚かされてばかりだ。
失礼かと思ったがマジマジと小田少尉を見つめると、視線に気づいた小田少尉が顔を逸らした。

「最近色々あったからな。葵兵長は真面目だし少し休んだ方がいい」
「気を使ってくださってありがとうございます」

それなら他のクルーも呼んだ方がいいだろうか。
私だけが小田少尉に誘われるなんて他のクルーに悪い。いや、もしかしたら既に誘っているのかもしれないけど、まだなら小田少尉に煩わしい雑事を押し付けるわけにはいかない。

「予定が合うクルーの方には私から連絡しておきますが……」
「いや、いい!」

大きな声を出して拒絶した小田少尉に再び驚きながら、言葉を失っていると、小田少尉がハッとしたようにコホンと咳をして姿勢を正した。

「葵兵長は大きな武勲上げクリスタルリングを救ったからな。私が出世できたのは葵兵長の働きが大きい。これは私からの礼でもあるんだ」
「そういうことでしたか。重ね重ねありがとうございます」

まさかそこまで自分の事を考えてくださるなんて。小田少尉の配慮に感激する。
そういうことならお言葉に甘えて私だけのんびりさせてもらうべきだろう。
しかし小田少尉とふたりでオフを過ごすなんて初めての体験だ。尊敬すべき上官と一緒だとあまり気が休まらないかもしれないけど、そういうのは野暮だろう。せっかくのご厚意だし。

「あ、あおい兵長の水着楽しみにしているぞ」
「は、はぁ」

やはり今日の小田少尉はおかしい。こんなこという人じゃなかったはずだ。
やはり戦いの熱がまだ消えていないという事なのかしら。
クリスタルリングの運命を背負った戦いだったわけだし、プレッシャーはすごかったはずだ。興奮状態が精神に作用しているのかもしれない。

「小田少尉、そろそろお休みになられたほうが……」
「私は大丈夫だ。葵兵長は疲れたのか?」
「いえ、そういう訳ではないのですが」

遠回しに言ったつもりだったが通じなかったようだ。
少し早口に話す小田少尉にますます違和感が強くなる。
戦いの酔いを醒まさせるために場所を移した方がいいだろうか。公園など風通しのいい場所がいいかもしれない。

「小田少尉、そろそろ喫茶店を出ませんか?」
「えっ、あっ、ああ……」

急に酔いが醒めたように落ち込む小田少尉。
今の自分が普通ではないことに気づいてくれたのだろうか。少し肩を落としている。
もっとも小田少尉は、また別の事を考えていたのだが、それをまだ葵は知らない。

「すまない。夜遅いのに付き合わせてしまったね。ここは私が払っておくよ」
「えっ、はい……」

小田少尉は勘定用紙を掴むと、落ち込んだ様子でレジに向かって歩き出していく。
これでお開きということなのだろうか。
今から公園に行きませんか?と言いづらい。

「また誘ってもいいかな?」
「あっ、はい」

振り返った小田少尉の顔に陰が見える。

やはり今日の小田少尉は何かおかしかった。


















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  1. 2018/07/03(火) 03:18:06|
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