「遅かったな」
僕らが森の中に踏み入れると、制服姿の千夏先輩を木にもたれさせ、後ろから腰を振り続けてる隼人が不敵に笑った。
「もうやめろ隼人。千夏先輩を離せ」
「ふんっ……」
僕の怒りを押し殺した声に、隼人はニヤリと口元をゆがめた。
「いやだね。俺は自分の役割を果たしてるだけだ。お前の代わりにな」
「どういうことだ」
訳の分からないことを言い出したので、隼人に近づく足を止め、尋ねる。
「どうもこうもないだろ、何も知らない種馬さんよ」
隼人は腰の振りを速めながら鼻息荒く答える。
「あん、あん、あん」
隼人の突きに合わせてお尻丸出しの千夏先輩が、僕らの話しなんて知らないようにうっとりした声を上げた。
「種馬?」
知らない単語が出てきて僕は首を傾げる。
さっきから何を言ってるんだ、こいつは。
「あー、これは秘密だったな。まあいいや、俺にここまで恥をかかせてくれたんだ。全て教えてやる。おまえがいかに間抜けってことをな」
美奈が僕と隼人の顔を交互に見比べ、僕が黙って聞く姿勢になると美奈もそれにならった。
「おまえ、なんで俺とお前にちんぽがついてるか知ってるか?」
頭を横に振る。
わからない。昔悩んだことあって塩田先生に相談したことあったが、どうして僕と隼人だけかは分からない。
「ククク、そうだろうな。お前が知るわけないよな。いいか、よく見てろ」
そういうと、隼人はなぜか千夏先輩のお尻に視線を落として腰を速める。
「お前も知っての通りちんぽが気持ちよくなると先っちょから白いおちんぽみるくが出るのは知ってるな?」
黙って頷く。
隼人は僕の知らない何かを知ってるのか?
「こうやって腰を速めて、おまんこの中でちんぽをしごくと……」
腰を急速に速めてピストンすると、一気に千夏先輩のお尻に腰を深く押し付けた。
「たっぷり射精という名のおちんぽみるくが出るわけだ」
腰を震わし、隼人は見せつけるように千夏先輩の中におちんぽみるくを出した。
「それがどうした……」
また約束を破られて、僕は怒りを抑えながら訊く。
「不思議に思わないか? なぜ気持ちよくなると、こんなものが出るのか」
「………」
尋ねられて、少し考える。
正直、そんなこと考えたことなかった。
手足がなぜこんなに自由に動くとか、のレベルだ。
いや、待てよ。確か先生がおちんちんが壊死するとか言ってたな。でもなぜおまんこに入れると気持ちよくなるんだろう。
「おまえもそうだろうが、ちんぽはおまんこの中に入れると気持ちよくなる。おまんこを持つものだってそうだ。ちんぽを入れられると気持ちよくなる。まるで、身体がそうすると気持ちいいよって教えてくれるみたいにな」
だんだんこいつの言いたいことがわかってきた。
あのちんぽから出る白いおしっこは何か重要な意味がある。
そういえば、こうするといいと教えてくれたのは、塩田先生だ。
「そう、こうすることには意味がある。身体が快楽を感じるのは、ちんぽにおまんこの中で射精してほしいからだ。なぜなら……」
ゴクリと唾を呑み込む。
今僕は、知ってはいけないことを知ってしまう、そんな気持ちだ。
『妊娠』するからだ」
「えっ……」
いきなりとんでもないこと言われて、大きく目を見開く。
妊娠ってあの妊娠か?
お腹が大きくなって、赤ちゃんができるやつ。
「男が女と合体するのはそういう理由なんだよ。間抜けな健太くんよ」
そう言いながら、呆然と立ち尽くす僕の目の前で、隼人が気持ちよさそうに
「種付け最高! 千夏最高!」
と、気持ちよさそうに射精を繰り返す。
「男と女って……」
「おいおい、そんなことも知らなかったのか? 男ってのはちんぽのある奴。女ってのはまんこがある奴の事だ。もっとも今の世では男は限りなく少ないがな」
呆然と独り言のようにつぶやく僕に、隼人はすべてを教えてくれる。
「なんで、なんで、あんたがそんなこと知ってるの!」
今まで黙って聞いていた美奈が、隼人に噛みつくように訊く。
そこで初めて隼人は苦々しい表情になった。
「それは俺とこいつが違うからだ。生まれや立場からしてな。
そう、俺はこいつのスペアだった。人工授精によって偶然生き続けたサンプル。こいつがあまりにだらしなくて思わず健太に用意された女たちに手を出してしまったが、上の連中がなぜか俺の行動を黙認しててな。まあ大方、何も知らない健太は置いといて子作りに励む俺の行動を優先したってことだろうが、かなりの女を孕ませれてラッキーだったぜ」
「質問に答えてない。なんであんたが知ってるの!」
「言ったろ? 俺と健太では立場が違うのさ。何も教えられず、気軽に子作りするよう育てられたただ一人の天然の男、健太と、全てを教えられ薬漬けで無理矢理長生きさせられてきた俺。人類の数を増やすには別の育て方をする必要があったのさ」
何か話が大きくなってきた。
まさかと思うけど冗談か?
いや違う。話はとんでもないが、冗談を言う雰囲気じゃないし、何よりもこいつの目は真剣そのものだ。嘘を言ってる目じゃない。
知識がない僕には、なんとなくしかわからないが、隼人の言ってることは恐らく真実だろう。
そもそも、人類の数が少なくなってきてるのは知ってるけど、なんで男の数が少ないんだ?
「幸せな奴だぜ……。何も知らずに能天気に育てられた救世主様はよ」
困惑する僕に、隼人はやれやれと溜息をついて、また腰をゆっくり振りはじめて子作りの続きを始めた。
「……なんでそのことを今になって僕に話した?」
一旦脳内で情報を整理すると、改めて隼人に落ち着いた声で尋ねる。
「どうでもよくなったからさ。本当は教えるの禁止だったんだけどな。というか、おまえはここで再起不能にされるし」
「なに?」
再び剣呑な空気になり、僕は咄嗟に身構える。
こいつ僕とやる気だ!
「ああ、もうちょっとだけ待ってくれ。もう一発濃厚な子種を仕込んだ後に相手してやるから」
隼人の腰が再び苛烈なものになった。
ぱんぱんぱんっ!と千夏先輩の尻肉の音が鳴り響き、千夏先輩が丸くて白いお尻を突き出したまま、嬌声をあげる。
僕はそれを見ながら拳を握りしめ、今がチャンスだと、千夏先輩を取り返すために行動を開始する。
すなわち、隼人に突撃だ。
この無防備な瞬間なら、あいつを楽にぶん殴れる。
「隼人ぉおおおおおおおお!!」
ランニングで疲れ切った身体が嘘のように動き、隼人に肉薄する。
隼人の目が見開かれるが、僕は構わず隼人の顔面に拳を繰り出した。
バシッ!
(えっ……)
右ストレートの軌道が逸らされ空ぶった。
隼人は千夏先輩のお尻を掴んでいた右手を防御に回し、僕の右ストレートを横に捌いたからだ。
こうも簡単に防がれ、あっけにとられる僕を嘲笑うように、隼人はそのままこぶしを固めて裏拳のように右手を振るう。
「おらっ!」
「ぶっ!」
隼人の攻撃が僕の鼻頭に命中し、たちまち鼻血が噴き出す。
「健太っ!」
美奈の悲鳴が木霊し、僕はなんとか崩れそうになった身体を踏ん張って、隼人を睨みつける。
「怖い怖い、そんなに睨むなよ。千夏のおまんこが怯えて、きゅーって締まってきたじゃねぇか」
隼人は止まっていた腰を再び動かしながら、軽口を叩く。
「隼人!」
「それとも千夏。俺が健太をぶちのめしてるとこを見て興奮したか?」
お尻が浮き上がるくらいに突き上げられた千夏先輩はうっとりとした顔になった。
僕は鼻血を拭うと、大きく息を吐く。
あいつはあんな体勢なのに、腕一本で僕をあしらった。もし隼人が僕に向きなおったら勝ち目はない。侮っている今しか勝てる見込みはない。
チャンスは次の攻撃か、その次が最後。
もしそれで僕が倒れなかったら、うっとおしくなって千夏先輩との合体を解いて僕を殴りに来るかもしれない。
呼吸を静かに整えると、隼人が対処できそうにない箇所を探す。
あいつは僕をニヤニヤ見つめながら腰を振っている。
背中にまわったら容易に勝てそうだが、そうするとさすがに千夏先輩を捨ててこっちに向きなおるだろう。
それはさすがに駄目だ。
なんだかんだと迷っていると、隼人の目が細まり気持ちよさそうな表情になる。
(そうか射精の瞬間を狙えば……)
快楽の極致。あの瞬間は、どうしても無防備になる。
それを狙って襲い掛かれば、隼人も対処しようがない。
最大のチャンスだ。
僕は攻撃を躊躇うふりをしながらへっぴり腰になると、隼人は僕に攻撃の意志なしと見て、こちらに構えていた右手を千夏先輩の腰に戻した。
「おらおらおらおらぁっ!」
「あん♥あん♥あん♥ああん!」
まるで主人と奴隷。
千夏先輩は口を大きく開け、舌をダラリと出しご主人様のくれる快楽に咽び鳴く。
隼人はもはや僕を見るのをやめると千夏先輩の背中に抱き着き、そのまま腰をヘコヘコさせながら、乳房をギュッ♥と搾るように握りしめると短い雄たけびをあげた。
「くうっ!」
「あぁっ!!」
隼人の腰がぶるりと震え、千夏先輩の搾乳された乳房がピクピク痙攣した。
今だっ!!
僕は再び突進をする。
隼人は千夏先輩の首元に顔を埋めこっちを見ていない。絶対にこれは躱せない。拳を握りしめると、いまだ射精に夢中の隼人の前で大きく拳を引いた。
ゴッ!!
隼人の横腹に僕の拳がめり込んだ。
今度は成功だ。僕は感情の思行くままにそのまま太ももに前蹴りをする。
「がっ!」
隼人がそのまま地面に倒れ苦痛に顔を歪める。
「てめぇっ!!」
慌てて立ち上がろうとした隼人だが、突如信じられないようなものを見たように目を見開き、慌てて腕で顔をかばう。
「あんたなんか死んじゃえっ!」
後ろに隠れていた美奈がいつの間にか僕の前に躍り出ると、いつ拾っていたのか拳大の石を隼人に投げつける。
僕よりえげつない。だがいい気味だ。
石が顔だけじゃなく、お腹や胸にも当たる。かなり痛そうで呻き声をあげている。
だけど同情しない。ここでトドメを刺さないときっと後悔する。僕はそのまま隼人に飛び掛かる。
「ぐっ!」
蹴って蹴って蹴りまくる。亀のように丸まった隼人を蹴りまくる。
一方的な暴力。隼人は反撃できずに、うめき声をあげて必死に防御するだけ。
あれ? なんだか頭がクラクラしてきたぞ。
さっきから鼻血が止まらないし。異常に興奮するし。
最後に隼人の頭を腕ごと蹴り上げると、疲れたので攻撃を止める。
まいったか。もう二度と千夏先輩にひどいことするなよ。
「へっ、それだけか」
「えっ?」
ムクリと起き上がる隼人。
あんなに痛い目に合わせたのにあんまり効いてないみたいだ。
「おまえらみたいなへなちょこコンビが俺に勝てるわけないだろ」
ぎらついた目で僕らを見下す隼人は、すごい威圧感だ。
圧倒されちゃう。
「負けない……」
「えっ」
背後から声が聞こえて僕は思わず後ろを向く。
「健太は負けたりしないんだからっ!」
美奈が再び石を投げた。
隼人は慌てて顔を腕でガードする。
「美奈っ!アソコだ。隼人のおちんちんをねらえっ!」
「えっ! わかった!」
僕は知っている。おちんちんがどれだけデリケートなのかを。
強くぶつけて痛い思いをしたことだってあるんだから。
「そこを狙うのは反則だろうがああああああああああ!!」
隼人が突進してきた。
狙いは僕だ。僕さえぶちのめせばなんとでもなる。
隼人の目がそう語っている。
身構えた僕は、歯を食いしばる。
美奈は僕に石が当たるかもしれないので投げれないようだ。悲鳴をあげている。
拳を振りかぶった隼人。
僕は腰を低くすると、ほぼ同じタイミングで拳をひねりだす。
ガッ!!
「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
鈍い音。そして響き渡る絶叫。
全て終わった。転げまわってるのは僕らを散々苦しませてきた隼人。僕は隼人の拳を奇跡的にかいくぐり、渾身の力を込めたストレートを隼人のおちんちんにぶち込んだのだ。
その一撃はあまりに強力で、隼人を惨めに這いつくばらせて転げまわらせている。
「勝った。勝ったよ……」
戦意を喪失して激痛に耐えている隼人を見てそう思う。
美奈がすごい勢いで後ろから抱き着いてきた。
その目に涙が浮かんでいる。
「すごい、すごいよ、健太」
興奮状態の美奈が、背中に顔を埋めて泣いた。
「ありがとう美奈。美奈がいなかったら僕、勝てなかったよ」
美奈に向きなおるり、ポンポンと頭をたたくと僕の胸で一際大きな声で泣いた。
僕は泣かせたいだけ泣かせると、股間を押さえて声にならない声をあげている隼人の顔をつま先で軽く蹴る。
「も、もう、やめてくれ。俺が悪かった。なっ、もうこれ以上はやめてくれ。今ので玉が潰れたかもしれねぇ。もう俺はお前に逆らわねぇよ」
「いまさらっ!」
怒りをあらわにした美奈が一歩前に出る。
「ひ、ひいいいいいいいいいいいいいっっ!!」
隼人は逃げようとするが、痛みで動けず恐怖の表情を浮かべている。
「いいんだ、美奈」
「健太っ!でも!」
美奈の肩に手を置いて、微笑む。
そして美奈を後ろに下がらせると、芋虫みたいにうずくまってる隼人の前に立った。
「おまえはやりたい放題して僕らを苦しめた」
「あ、ああ。その事については謝る。本当に悪かった!」
「そうか」
僕は大きく息を吐くと、冷たい目で見下ろす。
「なら最後に美奈に一発蹴らせろ。それで許してやる」
「ほ、ほんとうか!」
真意を確かめるように僕を見上げた隼人は、次に美奈をみる。
どうやら僕にこのまま何かされるより美奈にやられるほうがマシかどうか考えているようだ。
「わ、わかった。一発だけだな」
覚悟を決めたように隼人は目を瞑った。
「隼人そんなに亀のようになったら美奈は気が済まない。仰向けになれ」
「あ、ああ」
隼人は素直に応じて股間に手を押さえたまま仰向けになった。
「……手もどけるんだ」
「う、嘘だろ!そんなことしたら……!」
「どけろって!」
僕は隼人の顔を蹴り飛ばして隼人の意識を揺らした。
「さぁ、美奈」
「うん!」
意識をもうろうとさせ股間から手を離した隼人。
美奈の足が隼人の股間の上で思いっきりあがった。
「こんなもの潰れちゃえ!!」
グシャッ!!!
この世のものとは思えないほどの絶叫が森に響き渡り、鳥が一斉に飛び立っていった。
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- 2018/07/07(土) 20:45:47|
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