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3──大人2──

8月8日 午後20時11分 所長室  村山麗子


2日後の夜。
以前に命じた桐沢真由美についての、詳しい調査結果があがったとの報告を受け、私は研究室からに所長室に戻った。
所長室に着くと、すでに白衣を着た私の部下「細川」が待っており、私を見ると目礼する。

「待たせたな、報告を聞こうか」

私は細川の横を通り抜け、この部屋の主たるオフィス机の椅子に深々と腰をかけると、部下の言葉を待った。

「桐沢真由美について調べたのですが、彼女は映画研究部という部活の部長というくらいで、特に怪しい点は見当たりませんでした。
ですが先日、島で死亡した春山啓介という男子生徒と、彼女の間には接点があります。2人は同じクラス、そして同じ部活に所属していた友人とのことです」


「ほぅ、それで?」

「はい。それで春山啓介の方から何か分からないかと色々調べてみたのですが、やはり死亡原因がはっきりせず、医者の方でもお手上げだったようです。
ですが、調べていくうちに面白いことがわかりました。実は彼が死亡する数日前、彼と恋愛トラブルで行方不明になった近藤幸太という男子生徒がいます」

「行方不明だと? そんな話聞いたことないが……」

私は、机の上で手を組むと、さらに話を続けるよう促す。

「それでそちらの方も当ってみたのですが、彼は島から出た記録もなく、完全に消息を絶っております。学生の間では、彼が想い人を春山に奪われ、絶望のあまり自殺したのではないかという噂が流れているようですね。この件が発覚しなかったのは、学園側が責任追及されるのを恐れて故意に伏せていたようです。まぁ事情が事情ですから、ほとぼりが冷めて戻ってくるという可能性も考慮してたのかもしれませんが」

そういうと、細川はヤレヤレといった風に手で宙を仰いだ。

「……ではおまえはこの男子生徒が、タイプαになんらかの関わりがあったとでも言いたいのか?」

「いえ、そういうわけではないのですが、どうやら彼も桐沢真由美と接点があったようで、
彼女とは恋愛トラブル絡みで仲が良くなかったという話は有名らしいですね」

「ほぅ、つまり、行方不明になったこの男子生徒も桐沢真由美と大きな接点があった。そう言いたいわけだな?」

「おっしゃる通りです。なにせ行方不明者と死亡者を連続して出したこの件は、島にとっても前代未聞の出来事です。例えタイプαに関わりがなかったとしても興味がつきないところです」



「……貴様は、まだこの件の重要さが認識できてないようだな」

私は、薄ら笑いを浮かべた細川の気を引き締めるように睨みつけると、さらに言葉を続けた。


「では、タイプαの流出経路はどうなってる?」

「……残念ながら未だ特定できておりません」

「怠慢だな」
「申し訳ありません」

細川が頭を下げると、私は軽く舌打ちをし、椅子に深く腰掛け思考に入った。

タイプαがなくなったことに気づいて数日、その数が合わなくなって発覚するまでに2ヶ月もかかっている。
これは明らかに何者かの手による、隠ぺい工作がなされたと言っていいだろう。
その管理体制のずさんさに頭を抱えたくなるが、タイプαについては一際厳しく管理を命じてきたので、正直言って驚いているといったところだ。

それよりも消えたタイプαの行方だが、すでに島外に持ち出されたと考えるのが普通だ。
それだけの猶予があったわけだし、持ち出すのもさぞ楽だったことだろう。

だが、それだけの日数が経っているのにも関わらず、未だ島外からなんらかのリアクションがないのが気になる。

医薬品メーカーが知れば、必ずこの島へアプローチがあってもおかしくないはずだ。
いくらこの島は大人の立ち入りが厳しく制限されていると言っても、これほどの薬を手に入れれば必ずこの島になんらかのアクションがあってもおかしくないはずなのにだ。

するとやはりタイプαは、まだこの島にあるということなのだろうか。

私は机の引き出しからタバコを取り出すと、火をつけ口につける。


「……この研究所で、桐沢真由美と親しかったものはいるか?」
「いえ、彼女は人を寄せ付けない性格だったようで、研究者はおろか他のバイトの受付嬢とも特に仲が良かったということはなかったようです」

「そうか、なら引き続き調査を続けろ。調査対象は桐沢真由美とその周辺の人物だ。タイプαが消えてからおかしくなった人物がいないか徹底的に調べるんだ。それから春山啓介の遺体があれば調査できるよう手配しろ」

「はい、わかりました。では」

細川は、短く返事をすると踵を返し部屋から出て行った。


軽薄さが目立つ気に入らない男だが、奴ならなんらかの情報を掴んでくるだろう。

私は奴が出て行ったドアを睨みながら、タバコをゆっくとふかすのだった。









8月10日 午前9時5分 所長室  村山麗子


「所長、桐沢真由美の件で報告があります。よろしいでしょうか?」
「ああ、かまわない。何か分かったのか?」

朝一番。すぐに所長室にやってきた細川の顔を見て、私はなんらかの成果があったことを確信した。

「はい、実はタイプαがなくなってから桐沢周辺でおかしくなった生徒が3人います。1人は行方不明になった近藤幸太。彼はまぁ恋愛の件でおかしくなったといえるので除外してもいいかもしれません。ですがあとの2名は、明らかにタイプαを摂取した状態に酷似しております」

「ほう、誰だ?」
目を細め声を低く発する。

「それは先日死亡した春山啓介、そしてその彼女、藤乃宮遥という女生徒です。彼らは以前から考えられないほど注意力が散漫し、急激に成績が落ちて行ったそうです」

そう言って細川は、私に2人の資料を渡す。
そこには2人の顔写真と詳細な行動記録が記載されていた。

私はその資料に目を通しながら口を開く。

「春山啓介の遺体のほうはどうなってる?」
「その件ですが、残念ながらすでに葬式を済ませ、遺体は火葬されております。遺灰についても家族の手によって島外にあります。

連絡を取りますか?」

「いや、いい。離れていた家族は恐らくなんの事情もしらんだろう。
それに遺灰を調べて何もわからんのは、こちらの実験施設で確認済みだ」

「…では?」
「桐沢真由美と、この藤乃宮遥を確保する。島の住人に気づかれぬよう細心の注意を払って確保しろ。分かったな」

「いいのですか? まだ彼女が犯人だと決まったわけではないですが?」

「かまわん。桐沢真由美に聞けば、はっきりするだろう。抵抗するようなら多少痛めつけても構わん。分かったなら早く行け!」


「……はい。すぐに手配します」



奴が慌ただしく出ていくと、

私はタバコを消し、

ふとあることに思い至った。


「そういえば、雅彦も学園の生徒だったな。久しぶりに挨拶に行くか……」









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  1. 2012/09/20(木) 22:57:04|
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