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モブの植木鉢小説館

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1話──生まれ変わった島──

──聖地苺山島。

こここそが新人類誕生の生誕の地であり、新人類たちの楽園であり、世界から隔離された島である。
島の人口はおよそ約2万名。住んでいるのは勿論、新人類たちである。

緑豊かな苺山を中心に、新人類が島のあちこちで生活しており、かつて旧人類の学生で賑わっていた苺山学園は、新人類の生徒たちが学ぶ学び舎となり、旧人類が住んでいた市街地は新人類の生活圏となっている。

そしてここを治めるのは女王に即位した藤乃宮遥であることは言うまでもないだろう。
彼女は摂政に桐沢真由美を指名し、30年に及ぶ王制を敷いている。
政治的には大した反乱もなく安定しており、当初懸念された食料などの物資不足という問題も一部を除いて上手くいっている。

無論これは旧人類たちと定期的に貿易をしているというのではなく、新人類の食事事情が特殊だからというのが大きい。
というのも、彼らは異性と体液を交換することで体に必要な栄養に変えることができるため、最悪食事を摂らなくても生きていけるのだ。
なので、当初旧人類勢力がとった兵糧攻めはなんの意味も持たなかった。しかもいつの間にか新人類が世界各地に送り込まれており、逆にテロを起こすと警告され、見せしめのためにダムが破壊されて包囲網は崩壊した。
そこで旧人類は彼らとの共存策をとり、新人類が望んだとおりの物資を不定期に供給することになったのだ。

こうして世界は一応の安定を保つことになり形の上では平和になった。




──西暦2382年、5月。苺山中腹。


柔らかい日差しが気分よくさせる真昼間。
深い森が続く苺山中腹で、ある奇妙な出来事が起こった。

ゴウゴウゴウ……。

無風であった場所で突如強風が吹き荒れ、空間が捻じれるようにグニャリと歪み、白く眩しい光が円形大に現れたのだ。
そしてそれはボンヤリと点滅を繰り返しながらゆっくりと形を変えて大きさを増していき、やがてその大きさが人が通れるくらいの長方形になると、そこで初めて光の点滅が終わり、急速に光を増していく。そしてそれが頂点に達したとき、中から悲鳴をあげて4人の男女が地面に投げ出された。

「いたぁ!」
「きゃあ」

地面に尻もちをつき、お尻や足をさすりながら立ち上がったのは3人の少女と1人の少年。
彼らは、辺りを見渡すと、ぶつぶつ文句を言い始めた。

「まったく、ウチの魔術師は、こんなにいい加減な儀式魔法しかできないの? ここが水の上とかだったら大変なことになってたよ」
「そうですわね。ですがお姉さま。やはり時空魔法はめったに使われるものではありませんから、魔術師たちをあまり責めないであげてください。彼等も時空魔法に関しては不慣れなところがあるでしょうから……」
「甘い! 甘いよクレア! きっとあの嫌味な宮廷魔術師たちがわざとやったんだよ! 前にボクに嫌味を言ってたしね!」

ぷんぷんと怒りながらクレアと呼ばれる少女にそう力説したのは、見るからに活発そうな女の子。
『オリシアンスト・フォン・ティアナ』と呼ばれる少女だ。
彼女は、言葉から分かる通りボクっ娘で、目の前で困った顔をしている『オリシアンスト・フォン・クレア』の姉である。
容姿に関しては、やや灰色がかったセミロングの髪にぱっちりした大きな目が特徴的な可愛らしい美少女で、性格も明るくお転婆なため、彼女を知る者たちから大層な人気を誇っていた。

「そうでしょうか。でもここには幸太さまもいらっしゃいますし、いくらお姉さまと仲がよろしくないといっても幸太さまを巻き込むとは思えませんし……」

そして困った顔で反論したのはティアナの妹『オリシアンスト・フォン・クレア』である。
彼女は姉と同じ灰色がかった髪の長いサイドポニーを整えながら、見るもの全てを惹きつけてやまない優雅な仕草で姉をなだめすかす。
姉のティアナとは違ったグラマーな美人で、おしとやかな雰囲気もさることながら、その完璧ともいえるパーツの揃った顔とエロイ身体つきは同性にすら嫉妬を起こさせない。ちなみに歳はティアナが16でクレアが15である。

「う~ん。そう言われてみればそうか。じゃあワザとじゃないのかな」
「そうですよ。お姉さまの考えすぎです」

ようやく納得したのか、ティアナが怒りをおさめる。

そこで物珍しそうに周囲を見渡していた3人目の少女が大きく背伸びをした。

「ここが幸太の世界かニャ? なんだか見たことのないような草しかないけど」

茶髪にネコミミを生やした最後の少女が、まだ言葉を発せず、立ち尽くす少年の背中を見た。
この少女は『リアラ・ネコミミ』16歳である。
茶のショートカットにネコミミがついている猫耳族の少女で、種族特有の好奇心旺盛な行動からトラブルメーカー的な扱いをされている。
容姿的には、可愛い系の美少女で、くりくりした瞳とお尻から尻尾が生えているのが特徴だが、いつもティアナと口げんかをしているので仲裁役のクレアの頭痛の種である。

「ああ、間違いない。ここが俺の世界。そして俺のいた場所だ……」

そして最後に紹介するのが、この少年『近藤幸太』だ。
彼は、かつて苺山学園に通う生徒だったのだが、幼馴染の藤乃宮遥を寝取られ絶望の淵を彷徨っていたところを異世界に勇者として召喚されたのだ。
全てを失い、意気消沈していた少年。彼は言われるがままに剣を振るい魔物を倒し、そして最後には異世界を覆っていた闇、魔龍アイキスを倒し異世界を救った。

数々の冒険、ピンチを乗り越え再び自信を取り戻した近藤幸太。
彼は、異世界よりの帰還を願い、1年ぶりにこの世界に帰ってきた。
3人の美少女たちは、幸太を慕い一緒にアイキスを倒す旅をしてきた仲間たちであり、
帰還の際、押しかけるような形で無理やりついてきた可愛い少女たちだ。
無論、彼女たちが幸太に恋心を持っているということは改めて言う事ではないだろう。そうでなければ、異世界である地球にわざわざついてこない。

何はともあれ、こうして再び物語は幕を開けた。

これから何が待つのかは、神ですら予想はついていない。






・・・・・・・・

「へーここが幸太くんの故郷なんだ」
「変な家だニャ」
などと同行のティアナとネコミミのリアラが、口々に感想を述べているなか、幸太は戸惑っていた。

(あれっ? こんな街だったかな……)

あれから4人で山を下り、自分の記憶にある苺山商店街を歩いているのだが、記憶のあった時より街並みが明らかに変わっている。

あの場所にあった本屋。
向こうにあったゲーセン。
よく通っていた雑貨屋。
その何もかもが消え、別の店となっている。
自分が消えてから1年くらいしか経ってないはずだが、知ってる店は全て潰れたのだろうか。
懐かしいはずの街並みに戸惑いを隠せず、街を注意深く観察すると、異常なのはそれだけではないことが分かり愕然とする。

───荒廃した街。
道路のアスファルトのところどころ剥がれおち、建物は長年風雨に晒されたように汚れて年季を感じる。
街行く人の服装もどこからしら古くさく、疲れた表情をしている。
そして何より違和感を感じるのは自分を見る目だ。
まるで俺を恐れているように遠巻きにしてこちらの様子を窺い、近づいてくることもない。

「昼時にしては活気がない。
俺を見る目もおかしい。俺の服がどこかおかしいのか? 異世界に旅立つ前の制服のままなんだが……」

避けるように道をあける街の住人に俺は不安の色を隠せない。
変わらないことといえば、海から届く潮の匂いだけだ。

後ろからついてくる3人の少女の格好も少しおかしいが、ここに戻ることを考えて、出来るだけこっちの世界に近いものを用意させた。なので特別おかしいとは感じない。それに住人の視線は恐れを含んでいる。意味合いが違う。
(リアラのネコミミとしっぽは服に隠して出してないはずだし……)
「ここが幸太くんの生まれ故郷」と、物珍しそうに街をキョロキョロ見ている3人の少女に視線をやって、顎に手を当てる。

だが、それを街の住人に訊くのもなんなので、とりあえずこれからどこに行こうかと考える。
学園に戻るということは出来ない。1年間行方不明になっていたのだし、後ろの3人のことを聞かれたら困る。それに遥ちゃんに会ったらなんと言えばいいのだ。心の傷は克服したつもりだが、再び会ってしまえば自分がどうなるか分からない。ましてや春山とイチャイチャしているところを見せつけられてでもしたら……。
頭を振ると、呼吸を整え単純にこの島から出ることにする。
1年間行方不明だったから寮に置いてある自分の荷物は親に引き取られてるだろうし、今更この学園に復学するのも嫌なのだ。

それに今は自分を慕って3人の美少女がついて来てくれている。
これからの生活は困難が伴うだろうが、俺や彼女たちは傷や病すら治せる回復魔法を使える。
異世界から持ってきた金貨などを売ってどこか人のいない過疎地域に家を建て、余生をキャッキャウフフして過ごそう。そう思ったのだ。

「幸太さま、どうしました……?」

道の真ん中で足を止めていた俺に、クレアが不思議そうに訊いた。

「いや、なんでもない。そろそろ行こうか。リアラ、ちゃんとついてこいよ」

食べ物の匂いに誘われて店に行こうとしていたリアラに釘を刺して、再び前を向いて歩き出す。
リアラが不満そうに「ちょっとくらいいいだニャ!」と言っていたが無視をする。ネコのしつけは厳しくしないといけないのだ。

そして寂れた商店街を抜けようとしたところで、道の向こう側から見知らぬおっさんに声をかけられた。

「幸太? おまえ幸太じゃないのか?」
「んっ?」

誰だと思いつつ目を凝らす。俺はこんな茶ロン毛をしたおっさんの知り合いなどいない。

「俺だよ、俺。手村亮だよ。ほらサッカー部の」
「……手村?」

自分の記憶にある部活仲間の手村と姿を重ねあわせる。
だが、手村なら自分と同じ17歳だし、こんなおじさんなわけない。声は似ているが、年齢がかけ離れているので、あり得ないと溜息をつく。

「あのさ、どうして俺を知っているのか知らないけど、嘘をつくならもう少しマシな嘘をつきなよ。手村があんたのようなおじさんなわけないだろ」
「いや、ホントに俺だって! 俺は新人類になれなかったんだよ! だからこんな歳くっておっさんになっちまったんだけどよ……」

ガリガリと気まずそうにボサボサ頭を掻いた手村と名乗る男。
格好もなんだか浮浪者みたいで、ところどころ服が汚れている。

「幸太くん、知り合い?」

今まで黙って見ていたティアナが、クレアを押しのけるように前に出てきて興味津々な表情を見せる。

「いや、知り合いじゃない。もう行こう」

新人類とか訳の分からないこと言うし、ちょっと頭がおかしいのだろうと、スルーして歩きだそうとすると、慌てたように手村という男が俺の肩を掴んだ。

「待てって! おまえいつのまにこんな可愛い子と……いや違う!! 俺はホントに手村なんだよ。おまえ、サッカー部のFWだった幸太だよな。藤乃宮の幼馴染の……」

最後の方は周りを気にしているのか小声になったが、遥ちゃんの名を出したことで再び顔を向ける。

「……あんた、遥ちゃんのこと知ってるのか?」
「おうともよ。だから言ってるだろ。俺はサッカー部の手村だって!」

話についていけてない3人娘が、遥の名前を出したところでムッ!とした表情をしたが、俺は構わず手村だと確かめる質問をした。

「手村なら俺がいつレギュラーになったか知ってるよな?」
「ああ、もちろんって……いやさすがに学生時代のことだからなぁって…うそうそ!確か高2だよな」
「……なら、サッカー部で俺はなんてあだ名で呼ばれていたか覚えているか?」
「それは忘れようがないな。宇宙開発だよ。おまえよくシュートふかしてたもんなぁ」

「おまえホントに手村だったのか……」

あまりに変わり果てた友人に呆然とする。

「というか、おまえ行方不明になってたはずだよな。やっぱ……実家に帰ってたのか?」

俺と遥ちゃんの関係を知っている手村が恐る恐るといった感じで俺を見る。
気を遣ってるのが分かって胸が苦しい。あの当時、俺はキツイ立場だったからな。

「す、すまん! 変なこと訊いた。それよりお前変わったなぁ、やっぱ男は成長しないとな!」

慌てて話題を変えようと、手村が明るい声でバシバシ俺の肩を叩いた。
確かに俺は、1人称が僕から俺になり、幼かった顔は精悍となり肩幅も広く体つきも無駄な脂肪などなくなった。
だけどそれを言うならこっちのセリフだ。俺と同じ17歳のはずなのに、なんでそんなにふけた顔になってんだ。恰好も薄汚れた白いTシャツに破れたジーパンになってるし。
俺の知らない1年で、とんでもない苦労をしたのかと察し、それには触れないように俺も愛想笑いした。

「幸太さま。そろそろ私たちにも紹介していただけないでしょうか?」

蚊帳の外に置かれていた3人娘のうち、今度はクレアが代表して前に出た。

「そうだな…、紹介するよ。こいつは俺の友人の手村亮。そしてこっちが……あっと。外国人のティアナ、クレア、リアラだ」

こっちの世界の設定を考えときゃよかったなと思いつつ、適当に外国人だと言って誤魔化す。まさか本当のことを言えるはずもない。

「うひょお!!なんて美人さんなんだ!! 俺、手村! よろしくねっ!」

ズイっ!と前に出て、鼻息を荒くしながら、手村が馴れ馴れしくクレアの手を取って握手するように握りしめる。
相変わらず、女に飢えてるんだな。

「それで、サッカー部のみんなは元気でやってるのか?」

無類のサッカー好きだった手村の気を惹くため、サッカーの話にする。
ついでに困り顔のクレアの目を察し、いつまでも握りしめる手村の手を離させるのを忘れない。

「ああ、それは……」

途端に暗い顔になった手村。
言いだそうとしては口を閉じてためらっている。

「いいから話してくれ。何かあったのか?」

別に俺がいなくなってサッカー部が謹慎させられたわけじゃないだろう。心配や迷惑はかけたかもしれないが。

「おまえ、制服を着てるから知ってると思ったが、なんにも知らないのか? サッカー部の、いやこの島の事」
「すまん、今制服着ているのは、ちょっとした訳があるんだ。よかったら俺が消えた1年間のことを教えてくれないか?」
「はぁ!? 何言ってるんだ? そんなこと小学生でも知ってるだろ」
「たのむ……」

怪訝そうな顔をした手村に、俺は真剣に頼み込む。
なんだかすごく嫌な予感がする。

「まぁいいけどよ……」

そう言って手村は俺に、この島で何があったのかを教えてくれた。


・・・・・・
・・・・
・・・


「……信じられないな。おまえの話」
「信じられないも何も、これ、本当の話だから。これが夢だったら俺もどんなによかったか」

時折、休憩を取りながら話を聞き終わると、俺は大きく息を吐いてとても信じられないように首を振った。
てっきり学園で何か問題があったんだろう的な気分で聞いていたのだが、それが学園どころの話ではなく、世界規模の話だと分かったからだ。
しかも自分が消えた1年後に帰ってきたつもりだったのに、実際はそれから30年も経っていたなんて……。
それにサッカー部の皆は手村以外全員死んで、遥ちゃんが新人類で女王?冗談も休み休み言ってくれという話だ。

とはいえ、冗談ではなく、本当の話かもしれないと思ってる自分がいる。1年ぶりに会った俺にこんな嘘を言う理由がないし、手村と俺はサッカー部でも仲が良かったからだ。それにこいつは世話焼きのいい奴だと知っている。

嘘かどうか確かめるにしても、
そこらへんにいる通行人や店の人に、今西暦何年と訊けばいい。

俺は溜息をつくと、訳が分からなさそうに首を傾げて指を順番に折って日数を数えているリアラを視界に入れながら、さらに質問を投げかける。

「じゃあ、この島は新人類に支配されていて、女王は遥ちゃんってことか?」
「そういうことだ」
「……そっか。まだ信じられないよ」

こっからひっそりと家に帰るつもりだったんだが当てが外れたな、と頭の後ろを軽く掻く。

「とりあえず俺の家に来ないか。この島の状況や新人類、そして学園の話をもっと詳しく教えてやるよ」

顔を見合わせる俺たち。
行くあてもないし、とりあえずは情報収集でもしようかとその申し出を受けるのだった。



俺たちが連れてこられたのは、なんというか異世界で見た貧民街のような一角にある、小さな2階建ての家だった。
俺たちは、そのまま家の客間に通され、紅茶を出される。

「まぁ楽にしてくれ。ここなら落ち着いて話ができるからな」

ボロっちい黒のソファに腰掛け、なんだか偉そうにふんぞりかえる手村。
自分たちの事情を一切喋ってないので、なぜか罪悪感を感じる。

俺たちは紅茶に口をつけると、こちらを黙って見つめている手村に話を訊くことにした。

「あのさ、新人類ってなんなんだ? 昔と姿が変わってない俺にも驚いていなかったみたいだし」
「おまえ、それは……。いや、新人類ってのはな。タイプαって薬を飲んでその副作用を乗り越えた連中のことだよ。具体的には身体能力と寿命が大幅に伸びた人間と言った方がいいか、おまえみたいな、な」
「俺みたいって……そうか、だからお前は、俺の姿にも驚かなかったんだな」
「そういうことだ。俺はてっきりお前が新人類になって、まだ学園に通っているのかと思ったよ」
「じゃあ、手村さんが歳をとっているのは、新人類になっていないということなんですね?」

うちのPTの頭脳担当のクレアが、紅茶をテーブルに置いて納得したようにいう。

「そうだ。だから俺はこの島だと最下層に位置するボーンだよ」
「ボーン?」
「タイプαを飲んで新人類になってない奴のことを言うのさ」

そう言って手村は一瞬憎々しげに宙を見た。

「……………」
「この島は女王を頂点とするピラミッド社会だ。最下層に位置する俺たちみたいなのは奴隷みたいなもんさ。人権なんてないし、働いても楽になんてならねぇ。いきなり理由もなく殺されても文句なんて言えやしないクソみたいな存在なのさ」
「でも、遥ちゃんがそんなことすると思えない。何かの間違いじゃないのか?」
「間違いなもんか。俺だって藤乃宮さんを知ってるから何かの間違いであってほしいと思ってる。だけどな。幸太。これは本当のことなんだ」

手村の真剣な眼差しに押されて俺はこれ以上反論できなくなる。ここに来るまでの街並み、人々の顔が、これは真実だと俺に告げていたからだ。

「じゃあさ。ここに来るまで、幸太くんを見て、街の人が逃げたり避けたりしたのは、どういうことなの?」

紅茶を飲み終わり、セミロングの髪を少しいじりながらティアナが口を開く。
リアラは難しい話は苦手なので、早くも船を漕いでいる。

「制服さ。幸太、おまえが着ている制服が原因だよ。この島で学校に通えるのは、新人類だけだ。今の苺山学園の制服とはちょっと違うが、遠目だと見分けがつかないからな。だから街の連中はおまえを新人類だと思って避けたんだよ。気まぐれで何かされたらたまんないからな」
俺だってお前の制服に気づかなかったら声をかけてないだろうしな、と手村は続けて笑った。

「ふーん、じゃあ、ボクたちが新人類の可能性だと考えなかったの? こう見えてもいい服着てるけど?」
「お姉さまっ、失礼ですよ!」

ティアナが胸を張ると、クレアが窘めるようにティアナの袖を引っ張った。

「ああ、それなら大丈夫さ。仮に新人類でも問題ない。なぜなら……」

そこで手村は立ち上がり窓まで行くと、客間のカーテンをシャー!と閉めた。

バンッ!!

その途端、何人もの人間が、木刀や鉄の棒など武器を持ってドカドカと入ってくる。


「確実に殺せるからな……」

見上げた手村の目は、今までにないほど冷たかった。









                                             >>
  1. 2013/02/12(火) 00:02:41|
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Author:モブGR
ntr属性なのに超純愛ゲーをやって自己嫌悪になった男。リハビリのために小説を書いてます。
ほぼ賢者モードで書いてるので期待しないでください。

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