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3話──レジスタンス2──

「ちょっとこっからはお嬢さんにはキツイかもしれんが」と、手村が持ってきたのは新聞だった。

「その新聞が何かあるのか?」
「見れば分かる…。見れば大体な……」

いまいち煮え切らない答えに俺とクレアが顔を見合わせているなか、
ティアナがいち早く新聞を受け取ると、声に出して記事を読み始めた。

「なになに……。発覚!美人歌手、笹山菜摘の美声の秘訣は8歳少年のおちんぽミルクだった!
ふんふん、こっちは、ザーメンパック新発売。激選されたイェーガーの特濃ザーメン配合、これであなたも素肌美人にっ!……」


「………………………」

「………………………」


「……って! 女の子に何読ませるんだよっ!」

「ぐはっ!」

顔を赤らめたティアナに有無を言わさず殴られ、手村が吹っ飛んでいく。
確かにティアナの言う通りだ。なんなんだこの新聞は。

俺は、読み手のいなくなった新聞を引き寄せ、慌てて目を通す。

発覚!美人歌手、笹山菜摘の美声の秘訣は8歳少年のおちんぽミルクだった!
一瞬、見た感じだと下劣な芸能紙かと思わせる。しかし、それを読んでいくうちにそれは違うと感じ始める。なにせ内容そのものが真剣だったからだ。
おちゃらけた雰囲気はどこにもなく、信じられないことに歌手本人がインタビューに答え、それを認めている。
8歳の少年の精液を搾り取っていると言いながら、少年を巻き込んでることに対する謝罪などしていない。むしろバレちゃったか、仕方ないわねという空気が記事の横に載せられている写真から感じ取れる。
他の記事もそうだ。
俺の知ってる大手の新聞のように記事が真面目に書かれており、ふざけた論調は一切ない。社説にいたっては、もっとフリーセックスして子作りをするよう推奨している。頭がおかしくなりそうだ。

床に蹲った手村がゲシゲシとティアナに蹴られているなか、クレアが不快そうに目をそむけた。

「新聞というのは、瓦版のことでしょうか。まったく不愉快です。幸太さまはいつもこんなのを読んでいらしたんですね」

ジト目でクレアは俺を見る。

「いや、違うぞクレア。俺がこの世界にいたときはこんな新聞、見たことがなかった。
島内で発行されている新聞を見たことはあるけど、こんな内容じゃなかったはずだ」

「本当ですか?」

なおも疑わしそうに俺を見るクレア。
この手の話題では信用ないのか俺は。
異世界ではちゃんとしてたつもりだったんだけどなぁ。
やっぱり手村という存在が俺に疑念を起こさせているのだろうか。

「まぁとにかく、そろそろアレをやめさせないと手村が死んでしまうな」

丸まったまま蹴られ続ける手村を横目に見ながら、俺はため息をついてティアナを止めるのだった。






「えーそれで何を言いたかったということはですね。副作用というのは、男なら1日20回以上射精して死ななかったら乗り越えれて、女の子なら妊娠しても発狂死ししなきゃ新人類になれるってことが言いたかったんです。はい」

ボロボロになった手村が、若干怯えたようにティアナを見ながら丁寧に答えた。

始めからそう言っときゃ、そんな目に合わずに済んだのに馬鹿な奴だ。
30年前にあんなモン読ませたらセクハラで訴えられるぞ。
呆れながら手村を見ると、手村は頭の後ろに右手をまわし、ハハハ…と力なく笑った。

とはいえ、タイプαとはなんなんだろうな。
射精を20回とか妊娠して発狂とか意味が分からない。
手村が俺たちをからかってる感じもないし、新聞を見れば、手村の言ってることが本当っぽいから困る。

意味ありげな視線を手村に送ると、俺の言いたいことが分かったのか手村は静かに頷いた。

「ああ、なぜそんな条件で新人類になれるってことなんだが、それは元々タイプαが、性欲増強剤だったらしいんだ。
それが何かの間違いで人類を越える力を手に入れる薬になっちゃって、こういうことになってるってことなんだな……。俺もよく分かってないんだけど、まあこういうことらしい」

「なんだそりゃ」
結局、薬のことはほとんど何もわかってないんじゃないか。

「手村さん、そのタイプαというのはここで手に入れることが出来ますか?」
「いや、それは無理だ。タイプαは新人類たちしか持っていない。手に入れたきゃ新人類の街に行くしかないな」
「そうなんですか。一度どのような物か実物を見てみたかったのですが……」

クレアが少し残念そうに肩を落とした。
薬の知識もあるクレアにとっては興味の対象なんだろうな。
そう考えていると、気を取り直したようにクレアは本来の役目に戻った。

「それではタイプαを飲んで新人類になろうとするものは、レジスタンスの敵ということでいいでしょうか?」
「それは、はっきりとは言えないな。彼らは俺たちレジスタンスに明確に敵意を示してるわけじゃないからな。ただ、さっきも言った通り、考え方は新人類よりだ。場合によっては俺たちの敵になるだろう」

「なるほど。ではワークヒューマンという階級の人たちはどういう存在なんですか?」

クレアが紙にペンを走らせながら質問を続ける。

「そのまんまの意味さ。働き蜂や働きアリの人間版って言った方がいいかな。彼らは新人類が旧人類やナイトの女性に産ませた人間で、俺たちボーンと同じ虐げられる側だ。この街には住んでないが、果樹園や農場で一緒に働いたことがある。
俺たちよりほんの少し待遇がいいだけの存在だな。新人類の召使いとして同じ街に住んでいる奴らもいると聞いている」

「その中にはレジスタンスはいないんですか?」
「いるよ。少ないが、新人類の街に住んでいる。さっきの新聞も彼らから提供されたもんなんだ」

手村が新聞を掴んでポンと手で叩いた。

「ワークヒューマンは基本的に大人しい。あまり期待するのは酷だろう。新人類と接する機会も多いので新人類の怖さをよく知っている。
……これでよく分かったかな?」
「ええ、よく分かりました。基本的にはボーンが中心になって戦うのですね」
「そういうことだ」

クレアの問いに手村が頷いた。

「じゃあ、後は明日から何をするかだな」

俺は首を鳴らしながら、軽く伸びをした。
久しぶりにこっちの世界に帰ってきたせいか疲れた。元の世界はこんなことになってるし。
30年後ってことは両親も生きてるだろうから連絡を取りたいが、今連絡を取ると相当びっくりするだろう。もう死んだと諦めていた俺が生きてたんだしな。
それに今は迂闊に連絡を取らない方がいい。俺は若い姿のままだから新人類になったと間違えられて、面倒なことになりそうだ。


「それなんですけど、やはり新人類と戦って自分たちの力を確かめる事と、女王藤乃宮遥の居場所を特定することを最優先にしないといけませんね」

「じゃあ明日適当に戦ってみるか」
クレアの提案に俺は欠伸を噛み殺しながら頷いた。

「お、おい。戦うってどこで戦うつもりだよ。失敗したら死ぬだけじゃなく……、その……」
言いづらそうに手村は言葉を濁す。だが、だてに俺たちは魔竜を倒していない。その点の心配は無用だ。
「大丈夫、やばくなったら逃げるよ。とりあえず今日は寝よう。リアラもベッドで寝かさないといけないしな」

寝てしまったリアラを起こし、俺は手村に案内された寝室へと向かった。



次の日の昼。
新人類の街に殴り込みをかけようと意気込むリアラをクレアがなだめすかし、俺たちは手村の案内で港近くの食料庫にやってきた。

「本当に大丈夫なんだろうな幸太。おまえの言葉を疑ってるわけじゃないが、5人で食料庫を襲うんだぞ……」
「ああ、それなら大丈夫だ。俺たちは戦いに慣れている」

倉庫の前に2人の新人類らしき男が見張りに立っているのを視界に入れながら、隣で一緒に隠れている手村に返事をする。

実際負けるつもりなどない。
武器は異世界より持ち帰ってきた。強力な聖剣などは持ってこれなかったが、それでも一級の魔法剣を持って来ている。

「アブドエビラシュバルオ……」
静かに呪文を唱える。
ぼんやりと輪郭が現れ、俺やクレアたちの武器がその姿を現す。
隠していた魔法武器を目に見えるようにするための解呪の呪文だ。

ティアナの愛剣『双剣 アクアブレード』
クレアの『魔弓 エル・ブレイカー』
リアラの『銀槍 オリオンスピア』
そして俺の片手剣『風剣 エア・リレミレント』がそれぞれの手に握られる。

「お、おい。な、なんだ。今の! ひょっとして魔法か?魔法なのか!?」

手村が目を剥いて俺の剣を凝視するが、俺はそれに答えず、準備万端のクレアたちに指示を出した。

「いくぞ。一気に距離を詰めて倉庫の前の2人をやる。時間をかけるな」
「はい」「うん」「わかったニャ」

元気よく3人娘が返事して、まだ「魔法が魔法がー」と言ってる手村を残し物陰から飛び出す。

距離にして50メートル。
普通の人間には一気に距離を詰めることなど不可能だが、俺たちには魔法というチートがある。

「エアリアルアクセル!!」

俺の叫びと共に、4人の身体が薄緑色の光に包まれ、宙に浮くように軽くなる。
風魔法により重力という鎖から解き放たれた俺たちは、スピードを一気に増し、見張りの新人類との距離をつめる。

「だ、だれだっ!?」
すごいスピードで突っ込んでくる俺たちをあっけにとられて見ていた見張りが、ハッと気づいたように剣を抜く。

「知る必要ないニャーー!!」

リアラが槍を構えて突撃する。
彼女はドラグーン(重騎兵)の異名を持ち、異世界では馬に乗って戦場を駆け巡っていた。
この島では馬などいないので、得意な馬上攻撃が出来ないが、それでも1番槍は渡さないと真っ先に槍を突き出す。

「ぐはっ!」
胸を突かれて、警備兵はあっさり膝から崩れ落ちる。
身体能力がすごいと聞いていたのに躱すそぶりも見せなかったことで、一瞬弱いのかと判断しかけた俺だったが、もう一人の警備兵がなんの動揺も見せずに剣を振り上げて無防備なリアラに斬りかかったことで慌ててその考えを訂正する。


キンッ!!

軽い金属音を立ててティアナが警備兵の斬撃を華麗に弾く。
双剣使いのティアナ。別名、水の巫女と呼ばれた彼女は、水色に輝く刀身を自在に操り敵を翻弄する。

一合、二合、三合!

ティアナの連続攻撃を捌く新人類に軽い驚きを示す。
確かにこいつらの身体能力はすごい。スピード重視の攻撃を得意とするティアナの攻撃をギリギリとはいえ、捌いているのだから。
とはいえ、この警備兵は俺たち4人を1人で相手にせねばならない。たちまち追い詰められ傷だらけになった。

「まだやるか?」

俺が、血まみれになった警備兵に問いかける。
もう勝負はついている。立っているのもやっとのことだろう。顔色も悪い。

「くっ、劣等種ごときが、なぜこんな力を……」

額から血を流し、歯ぎしりしながら、警備兵が俺たちを睨みつける。

「それを言ったところで理解できないだろう。俺が訊きたいのはただ一つ。はるかちゃ……いや、女王はどこにいる?」

「ハッ! 何を言い出すかと思えば、女王陛下の居場所だと? 聞いてどうする。聞いたところでどうにもなるまい。お前たちが女王に近づけることなど出来ないのだからな」

「それを判断するのは私たちです。さあ素直に喋りなさい。出ないとそこの男のように殺しますよ?」

クレアが冷たい目で警備兵を見つめ、ティアナが警備兵の首筋に剣先を当てる。
警備兵は、俺たちの殺意を本気だと受け取ったのか身震いすると、悔しそうに口を開いた。

「俺は知らん。見れば分かる通り、俺はここで警備兵をやるほどの下っ端だからな。だが、苺山学園にいけば何か分かるかもしれんな。あそこはエリートを養成する学園だからな」
「苺山学園……」

思いがけない言葉を聞かされ、俺は唇を噛む。
またしてもあの学園が俺に関わってくるというのか。
2度と関わりたくないと思ったあの学園が。

「幸太さま、残念ながらここまでのようです。敵に気づかれました」

クレアの声に振り向くと、5人の警備兵がこちらに向かって走ってくる。そのうちの1人がトランシーバーでどこかと会話してるので、さらなる増援を要請しているのかもしれない。

「ちっ、撤退するぞ」
俺たちは警備兵の足を刈って転がすと、そのまま手村のいた場所まで逃げ出す。
追手の走るスピードは思ったより早いが、風魔法で強化された俺たちには敵わず、手村にも魔法をかけて奴らを撒くことに成功した。





「おまえら、いきなり行くなら先に言っとけよ。いきなり戻ってきたと思ったら、新人類に追いかけられるし、寿命が縮まったぞ」

5分後。街角の一角で、手村が膝に手を付いてゼーゼーと呼吸を整えながら、俺たちに抗議した。
確かにこれは悪かった。自分たちの力を試すとはいえ、いきなりはなかったな。

「すまん。これは俺たちだけでやりたかったからな。でも、大体相手の力が分かったよ。おまえのおかげだ」

「うん。そうそう手村のおじさんの案内のおかげで相手の力量が把握できたし。さすがおじさんだね!」

ティアナも俺に合わせて手村を持ち上げる。
すると現金なもので手村はニカッと笑って親指を立てた。美少女のおだてだと扱いやすい。

「で、みんな、新人類と戦った感想はどうだった?」

俺が、周りを見渡すと、それぞれが感想を述べた。

「うん。下級魔族くらいの力はあったよ。これはびっくりしたかな」
「そうだニャー。スピードとパワーは油断ならないにゃ」
「私もスピードとパワーには驚きました。普通の人間とはやはり違うようです」

「確かに普通の人間とは違うところが気になったな……。だが、俺がもっと気になったのは魔法を使った時、いつもよりかなり魔力を消費したことだ。
この世界に魔法がないためかもしれないが、これはかなりまずい」

「そうなのですか。それは問題ですね」

クレアも深刻そうに俺に同意する。魔法を自由に使えなかった場合、かなり行動が制限される。

「そんなに考えなくてもいいニャ。別に問題なく倒せるんニャし」
「そういう問題じゃないんだよバカリアラ。上級魔法を使えなかったら、いざピンチになったとき困るんだよ」

「にゃっ!? にゃによー! やるにゃか!!」

ティアナに突っかかっていくリアラ。
街中で喧嘩しないでくれ……。恥ずかしい。
クレアが慌てて仲裁に入る中、今度は手村が口を開く。

「な、なぁ。俺は遠くにいたからあんまりはっきりわかんなかっただけどよ。新人類を倒せそうというのは間違いないってことなんだな……?」
「そうだな。少なくともそこらの新人類には負けないと思う」

手村が顔を明るくする。
だが、俺は敢えて厳しい言葉を使い、手村に期待を持たせないようにする。

「だけど上位のピアー(貴族)クラスは、まだ分からない。魔法も使いにくいし、戦ったらやばいかもな」
「そ、そうか」

今度は肩をガックリ落とす手村。
すまない。でも情報が少なすぎるんだ。どこに遥ちゃんがいるかも分からないし。

と、そこで見張りが苺山学園に行けばいいと言ってたことが頭に浮かぶ。
あそこに行けば情報を得られるかもしれない。しかし学園といえば新人類たちの集まる場所だ。
ノコノコ行くにはあまりに危険すぎる。

リアラに爪で引っ掻かれてキャーキャー騒いでいるティアナの声を耳に入れながら、
俺はこれからどうしようかと思案に暮れるのだった。









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  1. 2013/02/19(火) 00:01:14|
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ntr属性なのに超純愛ゲーをやって自己嫌悪になった男。リハビリのために小説を書いてます。
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