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3話 日曜日

次の日、約束通り僕らと坂城家の主たる正臣さんを入れ、川にやってきた。
丁度お昼時で、水に入るには早い季節だが、釣りやキャンプをして遊ぶにはもってこいである。
僕と達也は風香の命令で、焚火をする小枝集めをさせられているが、達也は何か不満そうだ。
カレーの方は料理を作るのがうまい結衣と日奈ちゃんがいるから大丈夫そうだが、何がそんなに不満なのだろうか。

「おい、何を拗ねてるんだよ」

僕がさっきからブツブツ言いながら地面に落ちてる小枝を拾う達也に声をかける。

「別に拗ねてないしー、日奈ちゃんと楽しく野菜を切りたかったとか思ってねぇしー」

思いっきり拗ねてるじゃねぇかと内心で突っ込みを入れながら、僕は嘆息する。

「……こういうのって男の役目だろ?」
「なら、正臣さんはなんでしないんだよ。不公平だろ!」

憤懣やるかたないとばかりに小枝を振り回す達也に、僕は頭が痛くなるのを感じ首を横に振る。
こいつは黙ってたら結構二枚目なのに、なぜこうなのだろうか。やっぱ頭のせいだろうな。

「仕方ないだろ。正臣さんにこんなことさせるわけにはいかないし」
「それが差別だって言ってんだよー!」

駄々をこねるように手足をバタつかさせる達也に、こいつウゼーとしか感想が出ない。
というか、やめてくれる。小枝がこっちに飛んできそうだから。
ホント日奈ちゃんと出会ってからこいつのウザさが増している。

「おまえの気持ちも分かるけどさ。ここで小枝集めをやめたら日奈ちゃんガッカリするぞ。おまえ日奈ちゃんをガッカリさせていいのか?」
「うっ、それは!」

言葉に詰まり身悶える達也。様々な感情が渦巻いているようだ。

「もう面倒だからいうけど、さっさと集めて戻ろうぜ。おまえもそれでいいだろ?」
「あ、ああ……」

自分の感情にケリをつけたのか、達也が素直に枝を拾い出す。
やっとその気になったかと、僕も黙々と枝を拾って腕いっぱいの枝と一緒に戻った。

「遅いわよ、どこまで行ってたのよ」
「なんだと、こっちの気も知らないで!」

売り言葉に買い言葉。苦労して集め終えて戻ってきた僕たちに、風香が噛みついて達也が言い返す。
ああ、もうやめてくれる。彼ちょっと気が立ってるから。

僕はふたりを無視すると、自分一人で焚火をするために石を集め、持ってきた新聞紙と枝を敷き詰める。

「手慣れてるんですね」
「向こうでは何回か経験あるから」

感心したように寄ってきた日奈ちゃんに、僕は笑顔を返す。
日奈ちゃんも短いながら、僕らの関係がわかってきたようだ。風香と達也の言い合いを止めるわけでもなく華麗にスルーしている。

「野菜とか肉の準備はできた?」
「はい。お鍋に水入れてきますね」
「ならお肉を先に持ってきてよ。そっちのほうも僕がするから」
「はい、わかりました」

僕は薪に火をつけながら、お肉をもってきた結衣と、鍋を持ってきた日奈ちゃんと一緒に楽しく料理を作り始める。
ちなみに正臣さんは川に釣り糸を垂らして、自分の趣味に没頭していた。





「おいしい、家で作るもいいけど、外で作って食べるのはまた格別よね」
「うん、いくらでも腹にはいるぜ!」

結局言い合いだけして、ろくに料理を手伝わなかった風香と達也だったが、飯が出来た時はちゃっかり席について待っていた。
僕はそんな二人に呆れた表情を見せたが、結衣や日奈ちゃんは苦笑いしただけで、僕も最終的に苦笑いするしかない。

「ほんと美味しいよ。よくここまで美味しくできたね」
「ありがとうございます」

カレーを口に運んだ正臣さんが感心したように僕らを褒め、結衣が照れた様子で礼を返す。料理を褒められて嬉しいようだ。そういえば結衣の趣味は料理だったな。

「釣りの方はどうだったんですか?」
「うん、何匹か釣れたよ。イワナだけどね」
「すごいですね」

僕は素直な感想を漏らす。

「今度、釣りをやってみるかい?」
「いいんですか?」
「いいとも。釣り道具を貸してあげよう。釣り仲間が増えるのはいいことだからね」

僕は礼を言うと、今度一緒に釣りに行くことを約束する。
これは楽しみだ。

「そういえば聞きたかったんですけど、正臣さんは日奈ちゃんと二人暮らしだったんすか?」

馬鹿、と僕はデリカシーのない質問をした達也の身体を肘で突っつく。

「構わないよ。家内は随分前に家を出てね。今は日奈と二人暮らしなんだ」
「そうだったんですか」

結衣が微妙に声を抑えてスプーンを皿に置く。

「でも今は君たちが増えて6人暮らしかな」
「正確には5人と馬鹿一人ですけどね」
「なんだと!」

茶々を入れた風香に、達也が思いっきり反応する。
そういう反応すると、風香の思い通りになるぞ。自覚あるんだとか返されそうだし。

「ははは、なんにせよ娘と同じ年くらいの家族ができてうれしいよ。家が明るくなりそうだしね」
「そうですよ!正臣さんもまだまだ若いんだし、いい人見つかりますって!イケメンだしな。なっ、おまえらもそう思うだろ?」

達也が、風香と結衣に同意を求める。

「ええ、正臣さんは見た目も20代にしか見えませんし、女の子がほっときませんって」
「はい、私もそう思います」
「そうかい、ありがとう。君たちみたいな可愛い子に言われると自信がつくよ」

風香と結衣に褒められ、正臣さんが微笑む。
悔しいがその笑みもイケメンだ。出なきゃ日奈ちゃんみたいな可愛い子が生まれるわけないしな。
それにしても家庭の事情だから踏み込まなかったが、正臣さんには現在奥さんがいないとはね。どういう事情で出て行ったのかはわからないが、それを訊くのはさすがに失礼すぎるだろうな。

「カレーを食べ終わったら、みんなで遊びに行くといい。荷物は私が見てるからね」
「はい。ありがとうございます」

食事を終えると、僕らは後かたずけして川辺に行く。
手を浸してみると冷たくて気持ちいい。そして何よりも川のせせらぎが心をとても落ち着かせてくれた。
都会にいた時は、こんなとこなかなか来れなかったなぁ。

日奈ちゃんのいいところがあるとの案内で、少し上流にある小さな滝まで連れて行ってもらう。

「くそっ、もうちょっと暑かったら、日奈ちゃんの水着姿がお目にかかれたのに」

僕の身長より高い、2メートルくらいの滝を見ながら、達也が悔しがるように言う。

「日奈ちゃん、こっちの子って夏には川で泳いだりするの?」

風香が達也を無視して、日奈ちゃんに訊く。

「泳ぎますよ。男の子も女の子もみんな川で泳ぐの楽しみにしてます」
「へー、私も水着持ってきたらよかったなぁ」

ガッカリしたように風香は、嘆息する。一応こっちにも学校指定のスクール水着があるが、さすがにプライベートでスクール水着は嫌らしい。剣道やってる活発な風香だから気にしないと思ってたが、これは意外だ。そういえば去年一緒にみんなで海に行ったときはビキニ来てたな。
いや、そもそも海でスクール水着なのも珍しいか。

「裸で泳げばいいんじゃね?」
例によって達也がチャチャを入れてくる。

「あんたが裸で泳いだら考えてあげるわ」
「本当か!? 本当だな!」

風香の失言を真に受け、興奮しだす達也。
馬鹿、何回引っかかるつもりだ。おまえが川で全裸で踊っても、風香は考えるだけ考えて、やめるだけだぞ。

「日奈ちゃん、水着を売ってるお店はどこにあるの?」

結衣も興味あるのか、滝を眺めていた日奈ちゃんに訊く。

「村にありますよ。学校から近いので、学校帰りに案内しますね」
「うん、ありがと」
「俺も行く行く!」
「あんたは駄目よ。行けるのは女の子だけ。全裸で泳ぐんでしょ?」
「い、行くくらいいいだろ……」

急に下出に出る達也。

楽しい。来る前の不安はどこかに飛んで消えたようだ。
僕や結衣の懸念なんて考えすぎだったんだ。

「どうかしました、浩太さん」
「ん、なんでもないよ。来てよかったなって」
「本当ですか、そういってもらえると私もうれしいです。ここは都会と違って何もない田舎なので」

そんなことないよ、と僕は言葉を返す。

「こっちには自然も多いし、何よりものんびりできる。僕はどっちかというと都会よりこっちの方が好きだな」

うんうん、と都会組のみんなが同意するように頷く。

「お父様も聞いたら喜んでくれると思います」
「そうか、なら、機会があったら言っておくよ」
「ぜひお願いします」

ふふっと顔を見合わせて笑いあう。
そうこうしていると、上流から誰かが歩いてきてみんなは言葉を止めた。

「あら、渚さん」
「日奈じゃないか。どうしたんだ、こんなところで?」

現れたのは、黒髪のポニテを背中まで伸ばした凛とした赤いジャージを着た美少女。
この子も僕らと同じ年くらいで、雰囲気からして年上かもしれない。

「名切渚さん!」
「うおっ!」

突如叫んだ風香に、隣にいた達也がびびって腰を引かす。

「知り合いなの?」
「知り合いも何も、名切渚さんは中木島高校剣道部の部長で、全国大会優勝の経験もあるすごい先輩よ。それくらい覚えておきなさいよ!」
「いや、初めて聞いたし……」

僕の問いに風香は吠えるように言い放つ。
そういえば、憧れの人がいるとか昔聞いたことがあるが、もしかしてこの人か?

「おや、どっかで見たことあると思ったが、確か若宮風香さんだったよね」
「は、はい。覚えていてくれて光栄です」

会ったことあるのか?
そういや、風香も剣道で全国大会出場したことあったな。
その繋がりだろうか。

蚊帳の外となった僕らが様子を窺っていると、風香が続けてマシンガンのように喋り出す。

「実は、私たちこっちに交換留学で来たんです。それで昨日、剣道部にお邪魔したんですがやってなくて……」
「ああ、昨日は休みだったからね」

身を乗り出すようにして言った風香に、名切先輩が苦笑いしながら、落ち着かせるようにゆったりと答える。

「土曜日は休みだったんですか。わたし、月曜から剣道部に入部したくて」
「そうだったのか。それは悪いことしたね。でも交換留学生が来るなんて知らなかったな。ウチの学校では初めてじゃないか?」

日奈ちゃんに問うように名切先輩が視線を移す。

「はい。ウチでは初めてです。都会から半年の予定でみなさん来てくださったんですよ」

そういうと、彼女は僕らを紹介するように脇にどく。

「剣道部部長、3年の名切渚だ。よろしく頼む」
「えっとクラスはわかんないですけど、2年の秋島浩太です」

僕らはそれぞれ挨拶をしていく。

「じゃあ、君たちの邪魔をしたら悪いし私は行くよ。私もランニングの途中だし」
「は、はい。先輩頑張ってください!」

軽く手を振って僕たちと別れた名切先輩は走り去っていく。
なんか武士みたいな人だったな。口調もなんか凛としてかっこよかったし。
風香なんかアイドルを前にした一般市民みたいな反応して、今でも後姿をじっと見てるよ。
よっぽど憧れてたんだな。

「まさか渚さんと風香さんが、お知り合いだとは思いませんでした」

驚いたといった風に日奈ちゃんが風香を見る。

「全国大会で何回か立ち話をしたことある程度なんだけどね。とにかく名切先輩の太刀筋はとても綺麗で、すごくかっこいいの」

ほぉ、と僕らも風香を見る。

「なら、俺たちはあの先輩の為にこの学校に来させられたようなもんだな」
「来させられた?」
「いや、こっちのこと。日奈ちゃん気にしないで」

達也の軽率な発言に、僕は内心顔を顰めながら、日奈ちゃんに笑顔で誤魔化す。
変なこといったら日奈ちゃんがガッカリするだろ。後で怒っておかないと。

「とりあえずそろそろ正臣さんのところに戻りましょ。あんまりひとりで荷物番を任せてたら可哀想ですよ」
「そうだな」

空気を読んだのか、結衣が話題を切り替えるように提案したので僕も乗る。

「ならこっちの道から戻りましょう。こっちからの方が早く着きますので」
「うん」

こうして僕らは正臣さんのところに戻った。



















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  1. 2017/05/10(水) 00:00:53|
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ntr属性なのに超純愛ゲーをやって自己嫌悪になった男。リハビリのために小説を書いてます。
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