「陽菜、それは本当?」
「うん、間違いないよ」
あれから3日後。話があると陽菜の呼び出しを受けた私は、陽菜の部屋で耳を疑うような話を聞いていた。
それは悪名高い宇宙海賊『エリアハール』のクリスタルリングへの襲撃計画。
辺境の片隅で忘れ去られたように浮かぶこのクリスタルリングに、海賊エリアハールが奇襲をかけ略奪に及ぼうとする計画だ。
陽菜の部屋の窓に浮かぶ星の海を背景に、ベッドに腰かけた私は、陽菜の話を聞いて疑問に思ったことを口にした。
「どこでその情報を手に入れたの?」
「昨日ここに来た小型商船あったでしょ。その船長が私の学生時代の友人なんだ」
「信用できるの、その情報?」
昨日到着した商船を思い出しながら私は疑わし気に、窓際に座る陽菜に視線を送った。
「うん、信用できると思う。学生時代は常に一緒にいたし、友達思いの性格もよく知っている。例え卒業しても1年やそこらで友達を騙すような性格になってないと思うよ。昨日話した時にもすぐに逃げた方がいいって真剣な顔で忠告されたし」
「その襲撃情報をなぜ友達が知っていたのかは置いておきましょう。だけど、そんな情報、なぜその友達は軍に通報しなかったのよ」
「蛇の道はヘビってね。友達も色々訳アリなの。商船装ってるけどアレがアレだから、宇宙軍に教えるのも癪だったんだって。だけど私が友達だからこっそり教えてくれたの」
悪びれもなく肝心なことをボカして話す陽菜に眩暈がしそうになりながら、なぜ通信手段で陽菜に教えなかったのか考えて、すぐに合点がいく。
検問を恐れてわざわざ口頭で教えに来てくれたのだ。
そうでもなければ海賊エリアハールが襲おうとしているこの時期に、クリスタルリングになど来ない。恐らく友達が陽菜にとってはいい人なのには違いない。我々宇宙軍にとっては取り締まりの対象だろうけど。
「いいの、こんな情報。私に話して?」
「うん、陽菜がこのクリスタルリングを気に入ってるなら通報しても問題ないって」
「そうなの……」
脱力したように私は肩の力を抜くと、膝に置いていた手をベッドのシーツの上に置く。
「軍に報告は?」
「ううん、まだしてない」
「それが賢明ね。治安課のあなたが報告すれば、情報の出所を探られとき、あなたの友達が困ったことになるわ」
自分のサイドポニーの髪をなでると、陽菜をじっと見つめた。
「その友達に会える? 色々話を聞きたいの。襲撃日時とかもっと詳しい情報をね」
30分後・・・。
人目を避けるようほぼ使われてない通路の待ち合わせの場所に来たのは、茶髪で軽薄そうな自分と同じくらいの歳の男だった。
身長は170に届くかというところ。体格はガッシリしており目つきが鋭い。
年齢と言い身体的特徴といい、陽菜の情報通りの男だった。
「あなたが霧崎翔一郎?」
「ああ。陽菜の友人、宇宙船プレグナンシー号の船長、霧崎翔一郎だ」
手を差し出してきたので、こちらも手を差し出して握手する。
「陽菜の同僚。栗本葵よ」
簡単な自己紹介を済ます。
「さっそくだけど、情報提供をなぜしてくれたのかしら?」
「陽菜に聞かなかったのか? 陽菜が俺の友達だからさ。俺みたいな日の当たる場所を歩けない連中は本当の友達が少ない。本来なら天敵であるあんたらがどうなろうと知ったこっちゃないんだが、そこに友人がいるなら教えるのもやぶさかではない。そういうことさ」
「そう」
これまた陽菜に教えられてた通りだったので、相槌を打つ。
「陽菜を連れてこなかったんだな」
「ええ、あの子にこれ以上危ない橋を渡らせるわけにはいかない。万が一情報が流出したとき、あなたと会っていたのを見られたら共犯者とみられる可能性があるもの」
「もう、一回会ってるぜ?」
挑発してくるように軽薄な笑みを浮かべたので、私は相手のペースに乗らないよう静かに答える。
「だからもう会わないでほしいのよ。あの子の為にもね」
「おいおい、そいつはひでぇ言い草だな」
はっきり言うと、翔一郎という男は少し面食らったようだった。
大げさに首を横に振って、はっきり言うやつだなと呟かれる。
「そういう仕事についているのだから仕方ないでしょう? 堂々と会いたければ今の仕事をやめることね」
「はっ、そいつぁ、難しいな」
翔一郎は髪をボリボリ掻くと、こっちを見据えてきた。
「それで本題なんだけど、宇宙海賊『エリアハール』襲撃は間違いなのよね?」
「ああ、間違いない。今頃奴らの船が数隻、この海王星に向けて航行しているはずだぜ」
この事実に改めて衝撃を受ける。
辺境とはいえ宇宙ステーションを襲うなど尋常ではない。宇宙軍の歴史でも初めてかもしれない。
しかも襲うとなるとどれほどの規模で来るのか想像もつかない。
「びびったかい?」
「いいえ、燃えて来たわ」
決意を込めた私の眼差しに翔一郎は目を丸くしたようだった。
だがすぐに翔一郎は面白いとばかりに口元を吊り上げる。
「エリアハールの正確な戦力とここに到着する時刻を教えてくれる?」
「日時の情報を教えてやってもいいが、あんたは陽菜じゃない。タダってわけにはいかないな」
この手の輩はタダで教えてくれないのが相場。
むしろあっさり教えてくれると罠かと疑ってしまいそうだ。
私は胸の前で両手を組むと、笑みを見せる。
「あら、私は陽菜の友人なんだけど?」
「最初に情報の日時を聞いてきたのはあんただ。しかも陽菜を介して俺に情報を得ようと接触にきている」
「それが何か?」
その意味を知りながら、敢えて訊く。
「ちっ、だからこの情報を得ようとしたのが、陽菜じゃなきゃタダで教える義理はねえんだよ。同じことを言わせるな」
「陽菜を連れてくればいいのね?」
「食えねぇ女だな。さっき陽菜をこの件に巻き込まないとか言ってなかったか?」
感情を乱してこちら側に有利にもってきたかったのだけど、交渉は慣れてそうね。
船長だけあってこういう交渉はお手の物なのかしら。
私と同じくらいの歳に見えるけど、経験は豊富そうね。
「何が望みなの? 非合法なことならすぐにあなたを拘束するけど」
牽制の意味を込めて、少し脅すように言う。
「そいつは困ったな。だが、安心しな。陽菜の友達ならそんな無茶な願いはしねぇよ。そうだな……」
そこでこの男は顎に手を当てると何やら考え込み、そして唐突に私の身体をジロジロ見始めた。
「セックスさせてくれないか? それで手を打とう」
「セックス?」
思ってもみなかった要求に私は眉を顰める。
男性クルーが私たちに定期的にしている種付けを自分もしてみたいというの?
そんな願いなら容易いけど。
「そんな簡単なことでいいの?」
本当にそれでいいのか重ねて訊く。
「あ、ああ……」
今度は向こうが驚く番だった。真意を確かめるようにマジマジと私の顔を覗き込んでくる。
「……なに?」
「い、いや、いい。そうだな、そうと決まったらさっさと始めよう。時間もあんまりないしな!」
途中からカラ元気を出すように目の前の彼はテンションを上げ、このひとけのない廊下でズボンとパンツを慌てて足首まで下ろした。
ステーションでは軍関係者同士の自由意志での交尾をなぜか禁止されているが、相手が民間人なら問題ないだろう。こんなところを見つかれば勿論いい顔はされないだろうが、この情報があればクリスタルリングは間違いなく救われる。
本心では場所を変えたいところだったが、こんな好条件で相手の気が変わられたら面倒になる。だから私は彼の気が変わらないうちに急いでタイトスカートとパンツを脱いだ。
「ああ、締まるぜ。この肉壺~」
人気のない薄暗い廊下の奥で、私は背もたれのある青い革張りのベンチに腰掛けてる翔一郎に向かい合うように跨って、お尻を振っていた。
このような格好で交尾をするのは初めてで、跨って挿入してるせいか、膣には男性器が深く差し込まれて、ぐりぐりと子宮口を押し上げられるような未知の感触を味わっていた。
「どうだ。気持ちいいか?」
「………」
わたしの剥き出しの白くて丸いお尻を両手でしっかり抱えた翔一郎は、ひたすら膣奥を小気味よく突き上げながらニヤニヤする。
正直目の前でニヤつくこの顔は不快だ。
ジーンとする甘い疼きがお腹の奥に感じるが、素直にうんと言ってやりたくない。しかも私の膣を肉壺ってどういうことなの。むかつく。
サイドポニーの髪を軽く振り、快楽を感じ始めた顔を隠すため彼の肩に顔をうずめる。
「ちゃんと答えろよ。こんなにキュー!っておまんこを締め付けてきて気持ちよくないってことはないだろ」
にちゅにちゅと亀頭で子宮口をぐ~と押し付けられ、背中に回した手に力が自然と強くなる。
「気持ちよすぎて答えられないってことか。じゃあキスしようぜ」
いったん私のお尻から手を離した彼は、私の顔を両手で挟んで唇を強引に奪う。
「んっ」
はじめての経験。
口と口をつけるなんて。しかも舌が口内に入ってきた。
口を離そうにも後頭部に回した彼の手の力が強くて逃れられない。
ぺちゃぺちゃと舌が絡んできて、私も仕方なしに彼の舌を受け入れてなすがままに絡みつかせる。
そうすると翔一郎は満足したように、いったん口を離した。
「こんな経験初めてか?」
「ええ、舌と舌を絡ませるなんて不思議な感じね」
はじめての経験で、素直に頷く。
「次は口をあーんとして舌を外に出してみろ、もっと不思議なことを教えてやる」
「ええ」
私と彼の口が同時に開いて、まるでおしべとめしべを出すようにお互いの舌を口から蛇のように揺らしながら出した。
そしてそれは宙で舌先とぬるぬる触れあい、やがて舌がツタのように絡みあっては離れ、絡み合っては離れを繰り返す。
奇妙な行為だがなぜかそれが嫌じゃない。
「なかなか上手いじゃないか」
「あなたこそ」
お互い目を閉じながら、再び舌先を絡めあうと、私と彼の腰が示し合わせたように自然と動き出した。
「そろそろ出していいか?」
「ええ、お願い。なんだか変な気分なの」
「わかった。思いっきり濃いのを奥に出してやる」
キシキシと揺れ始めるソファーの上の10代の男女の身体。
積極的に腰を前後に振り、翔一郎が私のくびれた腰を掴んで、真下から何度も腰をくねらせる。
「出すぞ、出すぞ。精子があがってきた」
「早く早く!変な気持ちを我慢できない!」
「くあっ!!」
根元までしっかり入った男性器がブルリと脈動すると、そのまま腰を震わせて翔一郎は約束の種付けを開始した。
「本当にこの情報でいいのね?」
「ああ、報告する前にステーションの索敵範囲を広げて裏をとってからな」
霧崎翔一郎にたっぷり種付けされた私は、今だ男性器を出したままぼんやりとソファーの背もたれに背を預ける彼を尻目に、脱ぎ捨てたパンツとタイトスカートを履いて身支度を整えていた。
最後に妙な焦られる切羽詰まった気持ちをあの男性器によって味わされたが、終わった後はまたいつもの調子に戻って思考がはっきりしている。
今は、一刻も早くこの手に入れた情報を持ち帰り、管制室で裏を取らねばならない。
時間がないのだ。
「じゃあ、わたし行くから」
「ああ……」
気だるげにひらひらと手を振った彼に一瞥をくれると、私は颯爽と歩き出す。
その表情はまるで穢れを知らない乙女の決意した表情だった。
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- 2018/05/04(金) 00:56:00|
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